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    ロトス

    @tsr_gnsn

    空ベドとベドベドの漫画、絵、小説を溜めていくところ。pixivに出さないやつもあります。

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    ロトス

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    余り連続で支部に出してもあれなので……。
    空ベド全年齢。

    ##空ベド

    再会今回もアルベドから手紙が届いた。

    彼はドラゴンスパインで研究を続けていて、俺は旅をしている。
    直接会う機会は全然ないけれど、文通なら続けられるねって定期的に手紙を送り合っている。

    アルベドは相変わらず真面目な文章で、自分が発見したことを喜々と教えてくれる。俺も旅先で見つけたものを手紙に書いて送っていた。
    手紙を通してアルベドが元気でいるってことが分かるのはとても嬉しいことだ。
    手紙は大切な思い出だから、文章を読み終わったとは捨てずに全部残している。古い手紙だってたまに読み返したくなることもあるから。
    これが旅する上での俺の日常になっている。


    しかし、とても気がかりな事件が起きた。アルベドから急に手紙が途絶えたんだ。

    同じくらいの周期で手紙を送り合っていたから、そろそろ来るかなと期待をしていたのだけど、何日と経っても来ない。研究が忙しいのかなと最初は思ったけれど彼は律義な人間だ。うまく時間を作って手紙を書いてくれるはずなんだ。

    「そこまで心配なら会いに行けば良いんじゃないか~?」
    俺が最後にもらった手紙を睨みつけていると、パイモンがそう提案をしてきた。

    「1日くらいモンドに戻る日があっても良いじゃないか。むしろずっと手紙を見て悩んでるお前の方が心配になってきたぞ。」

    「ごめん、パイモン。アルベドに会いに行ってみる。」

    俺は数か月ぶりにドラゴンスパインにあるアルベドの研究所を訪れることにした。


    「アルベドー!いるかー?」

    俺の横でパイモンが彼の名前を呼ぶ。

    彼の研究所では調合台が動いている。緑色の変わった液体が生成されている。恐らく何かの薬品なのかもしれないが……。正直これは頼まれてもあまり飲みたくはない見た目だ。
    この調合台だけでも彼が実際にここで研究を続けていたことは分かる。
    しかし、肝心の本人が見つからない。出かけているのだろうか。

    「前、アルベドを探すとき元素視覚を使ったよな。また使ってみたら居場所が分かるんじゃないか?」
    今日のパイモンはいつも以上に冴えてる気がする。

    元素視覚で見えた足跡を辿ると、研究所から遠く離れた寒天の釘前までたどり着いてしまった。
    そこで、彼を見つけた。

    かろうじて篝火がついている横で目を閉じて横たわっていた。近くにはスケッチブックが置かれている。

    「アルベド!」
    俺は彼に駆け寄って叩き起こす。

    「ん……。」
    アルベドは薄ら目を開けてこちらを見る。

    「旅人かい?どうしてここに?」
    「どうしてって、アルベドこそこんなところで何してるんだよ!手紙が来ないから心配で戻ってきたんだ。こんな寒いところで眠っていたら風邪ひいちゃうよ!」

    今すぐにでもモンドに連れて帰りたいけれど、こんな高いところから降りるのは時間がかかる。
    とりあえず暖かいところ、うん。
    まだ人を呼ぶには整っていないんだけど塵歌壺でいったん休んでもらうのが手っ取り早そうだ。

    俺は彼を連れて塵歌壺の暖炉の部屋で座らせる。
    余った毛布もあったので、彼の背中にかけてやる。

    見た感じ、そんな震えているわけではなかったがあんなところで眠っていて平気なはずはないし。

    「アルベドー、さっきのところにあったお前の荷物持ってきてやったぞ!」
    パイモンがスケッチブックを持ってきてくれる。

    彼にそれを渡そうとしたが、反応がない。
    どうやらまた眠ってしまったようだ。眠かったのだろうか。

    「まったく、しょうがないヤツだな!あいつスケッチでもしてたのかな?」
    パイモンは何描いてたか見てやろうぜ!とスケッチブックをこっそり開く。

    アルベドのことだから真面目にスケッチしていたと思うけど。

    その中にあったのは一枚の手紙。書きかけで完成されていないものだった。

    内容を見てみると、どうやら俺宛ての手紙のようだった。


    「親愛なる旅人へ

    キミは元気だろうか。ボクはいつもと変わらず実験を進めている。
    ただ今回はあまり収穫はなかったな。何か面白い話でもできればよかったのだけど。

    キミの旅はどうだろうか。何か面白い発見はあったかい?良かったら聞かせてほしいな。ところでボクらが出会ってそろそろ1年になるんだ。あっという間だったね。
    それで、キミに頼みがあるのだが……」

    ここで途切れている。
    そういえばアルベドと初めて会ってもう1年か!とここで気付く。正直、彼とはずっと前から一緒にいたかのような親近感があったから。

    この頼み事は本人に直接聞けばいっか!とスケッチブックに戻そうと開く。

    「おおっと!」
    今度は違う手紙が出てきた。何枚も書いていたのかな?

    それを開いてみる。

    「親愛なる旅人へ」

    ってこれも俺宛て?
    そのまま続きを読んでみる。
    序盤は同じ文章だ。近況を知らせ合う内容。そして、

    「これはキミに伝えてはいけないことかもしれないのだけれど、我儘を言わせてもらっても良いだろうか。もし可能であればキミに会いたい。手紙で話をするのも楽しいし有意義だと思っている。だが、直接キミともっと話がしたいと思うようになったんだ。理由はやはり不明瞭だ。ボクの我儘を聞いてはもらえないだろうか」

    ここまで書いて、次の文字は乱雑に消した跡がある。

    別に消さなくても良いのに、と思いつつそれもスケッチブックに戻そうとすると。

    「うっわぁ……。」

    アルベドから俺に宛てた手紙の山が出てきた。
    どれも文章が途中で途切れていて完成していない。

    そしてそのどれもに近況の後、会いたいといった内容の文章が続いていた。

    「会いたい。今すぐキミに会いたい。キミの声が聞きたい。キミと会ってからボクは孤独ということにより敏感になってしまった気がするんだ。寂しいってこういう気持ちのことを言うのだろうか?こんな文章しか書くことができなくて済まない。」

    といった、寂しい思いを伝える内容ばかりだった。

    「アルベド……。」
    俺は暖炉の前で目を閉じる彼の顔を見た。

    ものすごくいたたまれない気持ちになった。俺に会えなくて寂しいだなんて考えもしなかったからだ。会って1年ってことも彼は覚えていたし、友人として高く買ってくれていたということだ。

    「俺も、アルベドともっと直接会って話がしたいよ。」
    俺は眠る彼の隣に座りこんで肩に頭をのせてみる。

    つねに気を張って旅をしていたものだから、こうして安心して誰かに甘えられる感覚になんだかホッとしてしまう。

    「ん……」
    アルベドが再び目を覚ます。

    「旅人、すまない。また眠ってしまっていたんだね。それでここは?」
    アルベドは肩にかかっていた毛布を畳むと立ち上がって部屋をきょろきょろと見渡す。

    「ええっと、ここは塵歌壺。俺の家みたいなところだよ。アルベド寒そうだったから連れてきたんだ。」

    そう言うと彼は驚いた表情を見せる。

    「こんなものが……。」

    そして彼は近くに置かれているスケッチブックを見つける。

    「旅人、これをその、見たかい?」
    アルベドは少し気まずそうに尋ねる。

    「あ、ごめん……。見ちゃった。」

    「………。」

    アルベドは少し悲しそうな表情を見せた。そりゃあ、ため込んでいたってことは俺に見られたくない内容だったわけだから。ううん、申し訳ないことをしちゃった。

    「実はキミに伝えるべきか迷っていたことがあって。それがまとまらなくて手紙を出せなかったんだ。これはボクのただの我儘になってしまうから。キミに余計な面倒はかけたくない。」

    俺は首を振った。

    「俺もアルベドにたくさん会いたいから面倒じゃない。アルベドと直接話せたら嬉しいもん。それに会って1年になるってアルベドが覚えててくれたのもすっごい嬉しいんだ。」

    その日はアルベドとたくさん話をした。
    旅先のことを話したり、拾った素材を見せると研究に使えるかとか調べ始めて面白いし。戦った敵や稲妻の兵器の話も興味津々だった。アルベドが挿絵を描いた本のサインを求めるとちょっと恥ずかしそうな顔をしていた。

    彼と話し込んでいたら遅い時間になってしまって、このまま壺で休んでもらうことにした。

    「ありがとう、旅人。キミと話ができて良かった。」

    アルベドは俺が用意したベッドに座って微笑む。

    「また、落ち着いたころで良いから会いに来てくれるかい?もちろん、キミの都合の良いタイミングで構わないから。」

    「もちろん。俺もアルベドともっと話がしたいから。」

    「ありがとう……。」
    彼はそう言うとベッドの中に潜り込んだ。

    俺ももうそろそろ寝ようかな。と部屋を出ていこうとすると、アルベドの方からスンスンとした声が聞こえる。

    彼は俺に背中を向けている状況だから、よく見えない。でも、これってもしかして泣いてる?

    「あーそういえば人を泊めたことなかったからベッド一つしかないや!ごめん、アルベド、俺もそこに入れて~!」

    とわざとらしく言って、俺は彼のいるベッドにもぐりこんだ。

    「旅人!?」
    とアルベドが動揺するのをよそ目に彼にぎゅーっと抱き着いてみる。

    「俺、アルベドと一緒に寝る!」

    有無を言わさず俺はそのまま部屋の明かりを消す。

    「旅人、その……ありがとう。」

    アルベドの安心しきったその声を聞いて俺は目を閉じた。

    その日、目が覚めたら俺はアルベドに抱き着いたままで彼も俺の方に手を添えて目を閉じていた。

    ちょっと恥ずかしいけど、温かくて嬉しくなった。

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