おやすみはまたあとで 背の高い男二人が並んで横になっても広すぎる程のベッドに、わざわざぴたりとくっついて寝る。それをもったいねぇの、と思ったのは最初だけで、くっついた枕にも一つしか使われない掛布団にも、もう慣れてしまった。
冬だからだろうか。左馬刻は背中にぴと、とくっついて寝ることが多い。抱き枕にしては硬いだろうに、ゆるりと腰に回された腕は起きるまで外されなかった。
年の瀬は何かと忙しい。それはヤクザにとっても同じようで、最近の左馬刻は深い眠りにつくことが多かった。職業柄かどちらかと言えば眠りの浅い印象があっただけに、ぐっすりと眠れているのはいいことだなぁと素直に思う。もぞもぞと身体を反転させて向かい合っても、ん、と小さく身動ぎするばかりで瞼は閉ざされたままだった。
穏やかな寝顔。皺の寄っていない眉間。ピンと伸びた睫毛。さらさらと零れる前髪。何もしていなくたって、この顔には弱い。
「さまときー……」
指の背でそっと頬に触れる。頬から唇へ、ゆっくりと。いつも左馬刻がしてくれるみたいに。
「……しねぇの……?」
おやすみ、と言いたかったのに、代わりに出てきた言葉はただの欲で。ぴくりと震えてゆるゆる開いた瞼に、微かに笑いが零れた。
「起きてた? 起こした?」
「……わかんね」
何度か瞬きを繰り返しながら、テメェが可愛くて起きたわ、などとふざけたことを言うものだから、まだ寝惚けてんだなぁと勝手に思うことにする。
「……なに。してぇの?」
「んー……」
眠たそうな瞳には、いつものギラつく欲は見えない。疲れていることは知っている。決して無理をさせたいわけではない。
「……」
腕を回してもぞもぞと顔を埋める。聞こえるか聞こえないかは賭けだったが、「よく出来ました」と上から掠れた声が聞こえたので、どうやら勝つことができたらしい。よっ、と上に乗せられ正面から顔を見れば、楽しそうに細められた瞳にはもう欲が見え隠れしていた。