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    葵そら

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    葵そら

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    ❄️🌸ブラネロ♀
    設定捏造。なんでも許せる人向けです。

    #ブラネロ
    branello

    「ぜっっったい、嫌だからな!!!!」

    麗かな春の澄んだ青空に大きな声が響き渡る。
    ここは一年中穏やかな気候に恵まれ、豊穣の国として名高い春の国、それを治める一族の住む王宮である。

    「ネロ、私だってあなたを冬の国に1人で行かせるなんて心配でしょうがないのですよ。でもこれも春の国のため。どうか受け入れてくれませんか?」
    春の国を治める現女王であるシャイロックは、困ったように眉を下げ、実の妹であるネロに優しく語りかける。

    「断る!冬の国なんて、絶対に行きたくない。」
    「どうしてもですか?」
    「だって、シャイロックも知ってるだろ?あの国がどんなに野蛮で恐ろしい国か。」
    「確かに危なっかしい国ではありますが、このまま放置しているわけにもいきません。」
    「それはわかるけど…だからってなんで俺が…」
    ネロはシュン、と肩を落として呟いた。ネロたちの住む春の国と隣国の冬の国は今深刻な外交問題に直面していた。



    冬の国は国土は広いが一年中雪に覆われた過酷な地である。
    厳しい気候のため農作物はあまり育たないないが、資源が豊富で製造業で発展した国である。北の国で作られる調度品は精巧で丈夫。そういった品物を輸出し、代わりに食物を輸入することで冬の国は生計を立てていた。
    春の国とも長らく友好な関係を築いてきたのだが、先代の双子の王が政権から退く際、3人の王子に向かって、「1番強い子にこの国あげるね☆」と宣言したことにより状況は一変した。

    3人の王子たちは『強さ』というものに貪欲で、国王というものにはそれほどの興味はなかったが、他の2人に負けるのは嫌、という理由で王位を争うことになった。後継者争いは熾烈を極め、冬の国中を巻き込む大騒動に発展した。

    まず、国民がそれぞれ支持する王子によって3つの派閥に分裂した。毎日のように仕事そっちのけで派閥同士の小競り合いが続き、親兄弟であっても支持する王子が違えば縁を切るというほどまで過熱していた。
    3人の王子たちもありとあらゆる方法で勝負をした。狩りで誰が一番大きな獲物を仕留められるかや、馬に乗って誰が一番目的地に早く到着するか、といった勝負を続けていたがなかなか勝敗はつかなかった。最後は拳と拳で殴り合い、自らの強さをぶつけ合った結果、三日三晩に及ぶ戦いの末、ついに決着が着いた。しかし3人の戦いはその時点で実に数年の時が経過していた。
    冬の国の人々は、元々血の気の多い国民性もあり、ここぞとばかりに闘争に明け暮れた結果、国の工業が衰退の危機に晒されてしまったのだった。

    そこまではまあ、冬の国の自業自得であるのだが、問題はここからだ。先述のように血の気の多い冬の国が、飢えを凌ぐためにもし万が一にでも他国に侵略し、肥沃な国土を奪われるようなことがあっては大変だ。春の国の女王であるシャイロックは、それを防ぐために冬の国と強固な関係を築くため、それぞれの王族同士で婚姻関係を結ぶことを提案したのだった。



    そうゆう経緯で、シャイロックはネロに冬の国の王子との縁談を提案したのだが、冒頭の通りきっぱりと断られてしまったのだった。

    「はぁ。しょうがないですね。ネロがどうしても嫌だというのなら、冬の国にはルチルに嫁いでもらいましょう。」
    シャイロックはやれやれという顔をしながらそう告げた。
    「え?」
    ネロは焦ったような顔でシャイロックを見つめる。
    「誰かが果たさなければならない務めなのですよ。あなたがそれほどまで拒むのならば致し方ありませんね。」
    「いやいやいや、ちょっと待ってくれ!」
    確かに、冬の国に嫁ぐなんて死んでもごめんだが、じゃあ代わりに末の妹のルチルが、となれば話は別だ。
    春の国は女王であるシャイロックが国を治めているが、妹であるネロとルチルも補佐としてシャイロックを支えている。
    特にルチルは最近やっと成人を迎え、これからもっと姉様のお役に立てます!とやる気十分である。そんな子を、冬の国に嫁がせるなんてネロの良心が痛まないわけがない。

    「…わかった。俺が行くよ。」
    はぁ、とため息をつきながらネロは告げた。
    「あなたならそう言ってくれると思っていましたよ。大丈夫。きっと快く迎え入れてくれるはずです。」
    シャイロックはニコリ、と笑みを浮かべる。
    なにか上手いこと乗せられてしまった感は拭えないが、もし本当に冬の国が攻めてきて、戦争にでもなればそれこそ大変なことになる。春の国には対抗できるような戦力はないから侵略されるがままだ。自分1人の犠牲でそれが未然に防げるならば安いものだ。ネロは意を決して冬の国に嫁ぐことを決意した。



    冬の国の3人の王子たちの争いは、1番年上のミスラが、残りの2人を負かしたことで決着がついた。しかし、国政については全く興味がないミスラは、「めんどくさいので、適当にやってください」、と言って、政治にはほとんど携わらず、名ばかりの王であった。
    もう1人のオーエンは、決着が着いたことで完全に興味を失ったようで、「後は勝手にしてよ。」と、どこかに姿を眩ませてしまった。
    その為、今、冬の国を実質的に治めているのは先代の双子の王と、最後の1人であるブラッドリーという男だった。
    ネロは、このブラッドリーのもとに嫁ぐことになった。



    輿入れの日、ネロは春の国の王宮から丸一日かけて冬の国との国境付近にある城に到着した。
    この城は、代々ブランシェット家が治める領地に立つ城で、国境付近ということもあり交易の拠点となる重要な場所である。今回はこのブランシェット城でネロの引き渡しが行われることとなった。
    ブランシェット城に、冬の国の使者が迎えに来て、ここから冬の国の王宮へ行く予定である。

    ブランシェット城の応接室で冬の国の使者を待つ間、ネロは不安な表情を浮かべていた。一人、縁もゆかりもない土地に嫁ぎ、この先の人生をそこで過ごすのかと思うと、ずっと堪えていた涙が溢れそうだった。もう、シャイロックやルチルには会えないのだろうか。不安と絶望に押し潰されそうになったその時、ドン、と扉を開けて一人の男が入ってきた。

    「よお。ネロって言うのはお前か?」
    そこに現れたのはどう見ても従者とは思えない出で立ちの男であった。冬の国の住人らしく肌の色は白く、黒と銀が混じりあった髪色の頭には王冠を被っているので王族の人間なのであろう。身長はネロより10センチ以上は高いだろうか。顔立ちは整っていて、ニヤリと笑う表情はどこか幼さも感じさせる。
    「ブラッドリー様!どうしてこのような場所に…!」
    ブラッドリーと呼ばれた男の後から老齢の男が慌てた声をあげながら入ってきた。
    ブラッドリー。それはネロと結婚する男の名前である。王宮で初対面だと聞いていたが、想定外でこちらまで来てしまったようだった。

    さっきまで溢れ落ちそうだった涙をぐっとこらえ、ネロはつん、とした声で返事をした。
    「ネロは俺だよ。あんたがブラッドリー?」
    「そうさ。今日からてめえの旦那になる男だ。」
    「ふーん」
    「なんだよ。こんなに格好いい男に不満でもあるのか?」
    ネロの興味の無さそうな態度が気に障ったのか、ブラッドリーが不機嫌そうな声で問いかける。

    「別に。誰が来ても一緒だよ。この縁談に期待なんかしてないんだから」
    あからさまに不機嫌そうな声でこちらも答えた。ネロからしたらどんな男が来ようと、この結婚に気が進まないのは変わらなかった。
    「ちっ。可愛くねえな。」

    思わずネロはムッ、としてブラッドリーを睨み付けた。
    それに全く動じることなくブラッドリーが続ける。
    「まあいい。今日からお前は俺様の言うことだけ聞いとけばいいんだよ。ほら、行くぞ」
    ブラッドリーの乱暴な物言いにイライラが収まらない。ただでさえ気の乗らない縁談なのになぜこんなにも理不尽な扱いをされなければいけないのか。
    悲しみと不安と怒りが綯交ぜになり、つい声を荒げてしまった。

    「俺はなあ!お前たちが春の国に余計なことしないように見張るために来たんだからな!ちょっとでも俺の国に手を出してみろ!ただじゃおかねえからな!」

    勢いに任せて叫んだ後にはっ、と我に返った。なんてことを口走ってしまったのか。
    さっ、と顔から血の気を引かせたネロを見て、一瞬呆けていたブラッドリーは、次の瞬間には可笑しそうにケラケラ、と笑いだした。
    「ははっ!おっかねぇな」

    あ、笑った顔はちょっと可愛いかも。
    笑うことを止めないブラッドリーを見て、そんなことを思ってしまったネロはぶんぶん、と頭を振りそんな思考を振り払った。
    いやいや、こんな奴が可愛いとか、あり得ないから。

    ネロが一人でいろいろ考えているところに、ブラッドリーが声をかける。

    「あ、俺様のことはブラッドって呼べよ。」
    「……嫌だ」
    「なんだと?!」
    少しだけ考えた後に拒絶を示すと、さっきまで笑ってた顔がまた怒り出した。表情がコロコロ変わる奴だ。
    変な奴、と思いながらもさっきまでの不安はいつの間にかネロの中から消えていた。
    冬の国に行くのはやっぱり嫌だけど、少し気分は晴れやかだった。


    こうやって、ネロの冬の国での日々が幕を開けたのだった。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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