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    utusetu4545

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    utusetu4545

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    モンハンライズ。ヒバサとうちハン♂(セツ)。セツの過去話あり。

    #マイハン
    playerToOnesLeft
    #ヒバサ

    朝、お粥「おはようございます、ヒバサさん」
    どこからともなく声が聞こえた。いつの間にか寝ていたらしい。夜通し作業したせいか、温かい朝餉の匂いが空きっ腹に響く。ヒバサは集会所の2階、鍛冶屋の隣で寝泊まりしている。コジリとナカゴは既に家に帰っていた。
    朝餉を持ってきたのは、見知った里のハンター、セツだった。
    「おお?なんだ、お前が作ってくれたのか?」
    「はい、オテマエさん手が離せなかったそうなので、代わりに」
    粥に漬物。小鉢に昆布の佃煮と生卵が乗っていた。
    「ほー、ありがとな。ん、今日は粥か?いつも握り飯なんだが」
    焼き鮭に味噌汁、漬物にでかい握り飯が3つ。それがいつもの朝食だった。それとなく希望を込めて尋ねると、ちらりと横目で見られた。
    「夜通し作業されてたそうなので、消化のいいものを」
    やべ、バレてら。この里じゃ某教官のおかげで食事と睡眠にはうるさい。夜更かししたなんてバレるとちょっと面倒なのだ。
    「なんで知ってんだよ」
    「オテマエさんから聞きました。ハンターとして武具の手入れは大事ですけど、お身体も大切にしてください」
    そらきた。里の人間なら誰しもこうやってお小言が飛んでくる。
    「へいへい、分かってるよ。しかし久々だなァ、お前の粥」
    年下のお小言など御免だ。次の手が来る前に先手必勝、こういう時は話題をそらすにかぎる。
    「あの時は俺が風邪引いたんだっけか」
    昔話をするとセツがバツが悪そうにみじろぎした。
    「それは…あの…はい」
    「もう何年前だったか、俺が旅に出る前だったから…」
    「11年前です」
    「ほー、もうそんなに経ったかァ」



    11年前。セツの親父さんが亡くなった。
    葬式のなかゴコクさまのそばで終始黙っていたちびっ子がセツだった。この時代、人死には特に珍しい話では無い。病、事故、モンスターの襲撃など、ありふれた話だ。セツの父親は病でこの世を去ったらしい。モンスターに食われなかっただけ、幸運かもしれない。元ハンターギルドの研究者だったらしい。そのよしみで、一人息子のセツをゴコク様が預かることになったそうなのだが、火葬を終えた晩のこと。
    セツがいなくなった。
    外はひどい土砂降りで、里の連中が急いで探し回ったがなかなか見つからず、ヒバサも捜索に駆り出された。里中を駆けずり回り、ぬかるみを歩き続け疲れてきたところ、墓の近くで小さなすすり声が聞こえた。
    「誰かいるのか?」
    近寄ってみると小さな白いかたまりが墓の前で丸まっていた。セツだった。
    「お前こんなとこで何やってんだ!」
    一体いつからいたのか。着物はぐっしょり濡れていて、身体はだいぶ冷たかった。
    「里のみんなが心配してるぞ、ほら、帰るぜ」
    抱えあげようとしたら手を弾かれた。
    「やだ」
    おいおいこんなときにガキのわがままかよ…。
    「やだじゃねえ、こんなとこにずっと居たら風邪引いちまうだろ」
    疲れもあり、セツの身体が心配なこともあり、少々苛立った声を出したが、この子どもは動じなかった。
    「やだもん、ぼくここにいる」
    「あのなあ…ここにいてどうすんだよ。墓しかねえだろ」
    「おとうさんがいるもん」
    セツは墓をまっすぐ見ていた。
    「お父さんって…」
    「おとうさんやくそくしたもん。おはなし、つづきしてくれるって、やくそくしたんだもん」
    話?と思いよく見てみると、セツがぎゅうと本を抱えていた。
    「やくそく、したのに。つづきしてくれるって、いったのに。うそつき、うそつき」
    声が段々と涙ぐんでいた。よほど親父さんが好きだったんだろう。
    「お前、お袋さんは」
    尋ねると、子どもはふるふると首を振った。
    「いない、しんじゃった」
    「そうか…」
    幼くして唯一の肉親を失ってしまった、こいつの喪失感は察するにあまりある。
    「辛かったな」
    びしょ濡れになった頭をぽん、と撫でた。
    頭が熱い。まさか。
    急いでセツの額に触れた。熱がある。まずい、本格的に風邪を引いてしまったらしい。
    「おい、早く帰るぞ!」
    拒まれようが構うものか。軽い身体をひょいと抱えた。
    「やだ、やだ、おろして」
    じたばたとしているが、身体に力がない。ヒバサは叱りつけた。
    「生きてるお前の身体が第一だ!こんなになるまで濡れネズミになりやがって、ゼンチ先生に叱ってもらえ」
    「おとうさんと…けほ、いっしょに、いる」
    「親父さんは逃げやしねえよ、キッチリ元気になってからまた会いに行きな」
    「…」
    「あー、くそっ」
    とうとう応える気力も無くなったらしい。ぬかるみの中急いでヒバサは里に向かって歩き出した。



    「で、その後お前を連れて帰ったけど2人して風邪引いたんだよな」
    お前の方が治り早かったのはおどろいたぞ、とヒバサはけらけら笑った。
    「ヒバサさんの方がひどい熱が出て、しばらく寝込んでるって聞いて、いても立ってもいられなくて…」
    「それで粥作って持ってきたのか?」
    はい、とセツが頷いた。


    墓の前で頑として動かなかった子どもが、後日しょぼくれた顔して粥を持ってきた時には思わず笑ってしまった。
    「ぼくのせいで、ごめんなさい」
    ゴコク様やゼンチ先生を始め大人たちから叱られたのだろう。あまりにしょんぼりとしていたから、可哀想になってしまった。
    「まァ、お前が元気になったんなら何よりだ」
    あんま里のみんなに心配かけんなよ?みんなお前が大事なんだからな。と言い聞かせた。
    これからは里のみんなが文字通り家族となってこいつを育てていくのだろう。その事をはやくこいつが受け入れてくれるといいのだが。
    「でも、ヒバサさんが…」
    「俺か?俺はまァ、ほら。ハンターだからな。これくらい寝てりゃ今に治るさァ」
    お前の持ってきた粥もある事だし、すぐ元気になる。と頭を撫でた。
    「なぁ、セツ。よく聞いてくれ」
    「?」
    見上げてくる小さな子どもに、精一杯のエールを送る。
    「お前のことは、里のみんな見守ってるからな。俺もだぞ」
    「うん」
    「里のみんなと、ずっと一緒だ」
    「うん」
    「もしかしたら、里から出ることもあるかもしれねえ。が、どこにいたって、里のみんなはお前の味方だからな」
    「うん」
    「お前はひとりじゃない」
    「…うん」
    「分かったか?」
    「…うん」
    よし!と髪をわしゃわしゃと撫でた。もう!とぷりぷり怒るセツに大笑いした。
    「それと、前髪は分けた方がいいぞ、邪魔で前見えないだろ」
    前髪を垂らしていたので、真ん中から左右に分けてやった。すると、セツが俯いた。
    「どうした」
    「まぶしいの」
    おひさま、まぶしいの。だからぼく、かみでかくしてるの。とセツは前髪を垂らしてしまった。
    「なるほどなァ…よし、笠か何か作ってやるよ」
    ヒバサは寝床そばの作業台を引っ張り出した。
    「え?でも…」
    「いいんだいいんだ、寝てばっかで暇なんだよ。それに、せっかくの男前なんだ。見せないと損だぜ?」
    俺みたいにな!とウインクをすると、セツははじめて笑った。


    「いやーあの時は可愛かったなァ」
    しみじみと昔を思い出すとセツは苦笑いした。
    「昔のことはいいですから、朝ごはん、冷めちゃいますよ」
    ホカホカとあげていた湯気が、大人しくなっていた。
    「おお、マジか」
    いただきます、と手を合わせ粥に手をつけた。出汁を入れているらしい。空きっ腹に心地よい。刻んだ生姜がピリリとして、身体をぽかぽかと温めてくる。とろりとした粥を啜ったあと、漬物に箸を進めた。塩味がふやけた口内にちょうどいい。ぽりぽりとした食感も好みだ。
    生卵を入れて粥をかきこむ。
    「ん、美味い!ご馳走さん」
    「お粗末さまでした」
    器下げますね、とセツが膳を持って降りようとした時、ヒバサが声をかけた。
    「おお、そうだセツ」
    なんでしょう、と振り返ると、頭をポリポリとかいてヒバサが続けた。
    「一緒に狩りに行かねぇか。獲物持って親父さんとこに報告に行こう」
    少し目を見開いてから、嬉しそうにセツが頷いた。
    「はい」
    「よし!そうと決まったら早速準備するかァ」
    コイツの調子も見たいしな、と整備した武器を手に取るとセツが止めた。
    「あ、今日はダメですよ。ヒバサさん寝てないから」
    「平気だよ、おかげさんでもう目が覚めた」
    「いえ、ウツシ教官が止めると思います」
    そうだった。この里、噂回るの早いんだった。
    「また今度、お願いします」
    それじゃ、おやすみなさい。と一礼してのれんの奥に消えていった。
    予定が消えてしまい、やることがなくなってしまった。おやすみと言われてもこんなに朝日が差してちゃ寝れやしねえよ。
    そう思いながらごろんと横になったのだが、朝餉が効いたのだろう、とろとろと瞼がおちて、すとんと夢の中へ落ちていった。

    おしまい
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