再構築藍忘機は花生みだ。
花を生むという行為はいつも藍忘機に痛みを与えるので、彼は自分の体質を厄介だとしか思わなかった。
だがある時、その鬱陶しい花の痛みが軽減されていることに気付いた。
魏無羡への恋心を自覚してから花を生み出す頻度が増した上に、苦痛が減っていたのだ。
あの人にだけ食べて欲しい。
心からそう願ったが、しかし魏無羡は花食みであったのに藍忘機の花を必要としなかった。
射日の折りも体力の回復に役立つからとどうにかして食べさせたかったが、魏無羡は頑として受け取らない。
逆に、夷陵老祖が含光君にかぶりついたら大変だからと避けられた。
ついに食べて貰えないまま、不夜天を迎えた。
魏無羡を乱葬崗に送り届け離れる際に花を握らせたが、きっと食べてはもらえなかっただろう。
そうして魏無羡が死んだあと、藍忘機はまた花を生むたび痛みが生じるようになった。
今度は前以上に酷い。
理由は分かっている。
食べて欲しい人がいるのに、その人がいないからだ。
この痛みは魏無羡を守れなかった自分への罰だと思えば、藍忘機はその激痛すら受け入れられた。
苦痛は、魏無羡が間違いなく存在していた証だからだ。
しかし13年経って、魏無羡が戻ってきた。
想いが伝わらなくても構わない、ただ栄養として、今度こそ花を食べて欲しい。
けれど彼の新しい器となった莫玄羽が凡夫であった影響だろう、魏無羡も花食みでなくなっていた。
魏無羡は藍忘機の花に一切魅力を感じないようだった。
相変わらず花は食べて貰えない。
でも魏無羡がいてくれるならそれで良いと思うようになった。
しかも騒動が収まる頃には想いが通じ合った。
望外の幸せに藍忘機はこれ以上何も望まないと決めた。
魏無羡を想えば花は生まれるが、もう食べられなくても気にしない。
生まれた花を見た魏無羡がきれいだと喜んでくれるだけで充分だ。
藍忘機はひたすらに魏無羡に愛を注ぐ。
だからだろう。
ある日魏無羡が藍忘機から甘い香りがすると言い出した。
直後に花が生まれ、魏無羡はそれを食べたがった。
これまで観賞することはあっても、食べたいとは言わなかったのに。
愛しい夫に欲しいとねだられて、藍忘機に断る理由はない。
背中の傷から生まれた花に魏無羡が食いつく。
「甘い、美味い」と咀嚼する魏無羡の姿が嬉しくて思わず口付けると、彼の唾液はこれまでと違い、藍忘機に多大な多幸感と活力を与えてくれた。
藍忘機の愛情と共に与えられた体液が、魏無羡を再び花食みに変えていたのだった。