すえながくおしあわせに その日から、平凡なわたしの世界は華やかになった。関わってはいけないと、本当はしっていたのに。
閑散とした喫茶店。祖父が残した場所が、会社を辞めたばかりのわたしの居場所だった。営業はしていない。祖父の死と共に、店は閉めてしまっている。空気を入れ替えるのを口実に、わたしはすっかり喫茶店に入り浸っていた。
古いビルの二階。ネイルサロンと、タトゥスタジオ、カイロプラクティック店、あとは弁護士事務所や会計事務所などがはいっている。人の出入りはほとんどなく、事務所はともかく、お店の方ははっきり言って大丈夫なのかと心配してしまうほどだ。まぁ、完全予約制の隠れ家的ショップというのなら、その目的はじゅうぶんはたしているだろうけれども。
6943