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    somakusanao

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    somakusanao

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    頭を悪くしてお読みください。IQ0なお話です。

    #ココイヌ
    cocoInu

    ドキワク!梵天幹部デー! 本日はお日柄もよく、反社日和のドキドキワクワク梵天幹部デーである。マイキーが戦争すっぞと言えばマフィアに喧嘩を売り、三途がラりって喧嘩を売ればヤクザの本拠地に殴り込み、明司がなにかしでかせば警察だって脅迫する。だって日本最大の巨悪組織・梵天だもの。梵天とはメンヘラとヤク中とクズとひとでなしと脳筋が集まってできた組織である。今日の幹部会は誰が戦争の口火を切るのか、ドキドキワクワクの瞬間であった。

    「えー、なにか報告がある奴いるか」
     
     明司が進行役を務めれば、すっと挙手した者がいる。梵天のクールビューティ担当・九井一だ。彼は沈痛な面持ちであったので、幹部は誰もが「ああ、またイヌピーに振られたんだな」と感知した。
     九井といえば5W2Hイヌピーの男である。 イヌピーの、When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、Why(なぜ)、What(何を)、How(どのように)、How much(いくら)を常に把握している。ちなみにWhoはイヌピーが誰といるかを示す言葉だ。
     梵天発足時はおとなしかった九井だが、唯我独尊のマイキーや自己中心的な幹部らと過ごしていくうちに、自分だけが取り繕っても意味がないと思い、イヌピーへの思いを爆発させた。ちなみに全員の答えは「知ってた」だ。あまりに九井がイヌピーイヌピーと泣くもので、面識のない望月ですら「イヌピー」と呼ぶようになっていた。
     
    「昨日夜二十二時三十八分に新宿の歌舞伎町から徒歩五分のイタリアンバールでイヌピーに告白したけど、「オレよりいい奴がいるだろ」と振られた。夜景も綺麗だし、イヌピーがうまいと言ってよろこんでくれていた店だし、イヌピーが好きそうな服もプレゼントした。うまく行くはずだったのに、なにが悪かったんだ」

     はい、と灰崎竜胆が挙手する。

    「いつも思ってたんだけど、なんで詳細なんだ? 昨日イヌピーに告白して振られただけでよくね?」
    「Excelにつけてるからだ」
    「ん? んん?」

     こいつ、いますごく面白いこと言わなかったか? 灰崎兄弟の目が光る。

    「オレはイヌピーとの記録をExcelにつけている。同じ過ちを犯したくないからな」

     そう言って九井は自身のパソコンをくるりと回し、幹部に見せた。その日の天気、店の住所から電話番号、給仕したスタッフの名前。頼んだ料理、金額。などなど詳細に記載されている。
     こいつ、頭はいいけど、イヌピーのことになるとポンコツだよな、と言うのが幹部の共通認識だった。

    「うわ、きもっ、ストーカーじゃん」
     
     三途がうぇっと舌を出すが、九井をバカにしているわけではない。ストーカーは反社日常会話である。拉致・監禁が高難易度、洗脳・下僕が超難易度会話にあたる。高難易度の会話もさらりと交わすのが、梵天幹部の嗜みである。
     なので三途に悪意はなく、九井もストーカーと言われて、なんの反応も示さなかった。だってみんな犯罪者だもの。

    「これ、いつからつけているんだ?」
    「小学校の時からだな」
    「まじか。すげぇな。オレもイザナとの思い出を、エ、Excel? につけとけばよかったな」
    「いまからでも遅くねぇぞ、鶴蝶。やり方なら教えてやる」

     反社なりに、幹部は平穏なときはなかよしなのである。抗争時はあっさりと見捨てるが、それはそれ、これはこれだ。
     梵天にしては一般常識のある、と自分では思っているが、ナチュラルボーン・キング・オブ・クズの明司が首をひねった。 
      
    「それのなにが幹部会でする報告なんだ?」
    「良く聞いてくれた。オレはこの二十年に及ぶイヌピーの記録からアプリゲームを開発した」
    「えっ、マジ最悪だな! 九井、最低!」

     反社的に「最悪」は「あなたのとても素敵ですね」の意味であり、「最低」は「あなたは最高ですね」である。
     よせよ照れるなとばかり九井も表情を緩める。

    「名付けて『イヌピー・メモリアル』だ。黒龍のイヌピー、東京卍會のイヌピー、堅気のイヌピー、諸々のイヌピーを取りそろえたぜ」
    「こいつ、気が狂ってやがるぜ! マジ社会のクズだな!」

     ブーイングが起こる。繰り返しになるが、ブーイングは反社的にはスタンディングオベーションである。

    「もちろんクリアはできたんだろうなぁ!」

     そこで九井は黙った。沈黙である。

    「え、まさか、クリアできなかったのか? 課金してんだろ?」
    「当然課金した。重課金だ」
    「マジか……イヌピーつえぇな……」
    「ちなみにゲームはオレが課金したから黒字だ」
    「そりゃそうだろうな」

     完璧主義の九井のすることである。九井が厳選した神絵師による美麗イラスト。金をかけたグラフィック。九井コレクションから厳選した盗聴フルボイス。吟味に吟味を重ねたストーリーも完璧である。
     だが、しかし、クリアができない。つまりイヌピーは応えてくれない。

    「このままいくと、このゲームはリリース開始から一か月で一億を稼ぐことになっちまう」
     
     言うまでもないが、一億は九井の課金だ。それまで黙っていた望月がすっと挙手をした。梵天は挙手発言制を採用しているのだ。

    「もしかしてそれが良くないんじゃないか」
    「ん? どういうことだ?」
    「つまり、課金が駄目なんじゃないのか? そいつが好きなのは佐野真一郎とか花垣武道なんだろ。つまり金を持っていないやつだ。イヌピーは金に興味がないじゃないのか」
    「な、なんだと……?」

     九井はイヌピーメモリアル専用スマートフォンを取り出した。ログイン。撲殺ポイント100ゲット。

    『ココ、おつかれ。おまえはよく頑張っているよ』

     ちなみにこのログイン盗撮ボイスは黒龍十代目時代の貴重な音源である。
     さっそくイヌピーとのデートコースを選ぶ。いつもはレストランだが、思い切ってカップラーメンを選んでみた。

    『ココがこんなの選ぶなんて珍しいな。悪くないぜ』

     ちなみにこの好感度アップ盗撮ボイスは小学校六年生の時のものだ。とてもとても貴重な音源である。

    「……イヌピーとの好感度が上がった!」
     
     つまりこれはいつもの九井は金をかけすぎているということか? ゲームではなく本物のイヌピー攻略にも一縷の望みが出てきたような気がする。ふぅ、と九井は溜息をつく。

    「といういわけで、これを流用してアプリゲームを作って、オタクどもから金をせしめる計画だ。データさえあればゲームはいくらでも作れる」
    「まじ九井えげつねぇ! 鬼畜!」
     
     ぎゃーと野太い悲鳴が上がる中、マイキーが挙手をした。

    「つまり、ケンチンのデータがあればケンチンを攻略できるってこと? タケミッチも?」
    「できる」

     ハッとした顔をした鶴蝶が九井を見る。

    「どのくらいデータがあればいいんだ? イザナのデータはあんまりないんだが」
    「S62の奴らからも集めれば何とかなるだろ」

     んん~~~~、と三途も立ち上がった。

    「それはオレだけのマイキーとデートできるってことか?」
    「ムーチョもいけるぜ」

     灰谷兄弟も「オレらも作ろうぜ」「おもしろそーじゃん!」と乗り気だし、明司は「金になりそうだな」と満更でもなさそうだ。望月も「イザナの写真を取っておいてよかった」と頷いたのを見届けて、九井は拳を突きあげた。
     

    「オレのイヌピーでマリオを越えるぜ!」 




     本日はお日柄もよく、反社日和のドキドキワクワク梵天幹部デーは盛況である。
     



     
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    somakusanao

    DONEココのすきなおにぎりを考えていたら、いつのまにか書いてました。
    ドラケンとイヌピーの話。
    おにぎりは作らないことになったので、タイトル詐欺です。
    そうだ、おにぎりをつくろう「ドラケン、おにぎりの具はなにが好きだ?」
    「うーん。鮭かな」
    「鮭か……。作るの面倒くせぇな」
    「待て待て。オマエがオレに作るのか?」 

     言葉が圧倒的に足りていない同僚をソファーに座らせて説明を求めてみたところ、「ココが忙しそうだから、おにぎりでも作ってやろうと思って」と言う。それはいい。全然いい。九井はきっと喜ぶだろう。

    「なんでオレに聞くんだよ……」

     乾は九井にサプライズをして喜ばせたいんだろう。それは安易に想像できる。
     だがしかし、イヌピー同担拒否過激派九井が面倒くさい。きっと今もこの会話をどこかで聞いているはずだ。最初の頃は盗聴器盗撮器の類を躍起になって探していた龍宮寺だったが、ある時期に諦めた。ようするに九井は乾の声が聞こえて、乾の姿が見られればいいのだ。盗聴器と盗撮器の場所を固定にしてもらった。盗聴盗撮される側が指定するっていうのもなんだかなと思いながらも、あらかじめ場所を知ったことで龍宮寺の心の安定は保たれる。ちなみに乾は中学時代から九井につねに居場所を知られている生活をしているので、慣れ切っている。
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