ココイヌ/東リ 化粧くさくて息が詰まる部屋には、女がひしめき合っている。薄暗い空気に混ぜるように。ソファにもたれた九井は紫煙を吐いた。
「もうこんなのやだよぉ」
中心で、女がしくしくと泣いている。濃い化粧と露出の高い服のせいで大人びて見えるが、顔を何度も擦るから、徐々に幼い素顔が露わになっていた。
周りを取り巻く女たちの表情はさまざまだ。同情を見せるもの、無関心を貫くもの、自分より不幸な者を見ているときの笑みを見せるもの。
女は大きく鼻を啜った。袖口から、幾筋もの傷跡がついた手首が見える。
「痛いし、臭いし、きもちわるい。もうやめたいのぉ」
「まあ、そう言うなって」
九井は手近にあった灰皿に煙草を押し付けた。立ち上がり、女の肩に手を置く。宥めるように剥き出しのそれをてのひらでまさぐりながら、猫撫で声で告げる。
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