スに交われば…12月になったのに、昼間はぽかぽかと暖かい日が続いてる。
今日は朝から兄さんたちは全員出かけてて、ボクはひとりニート部屋の窓際によっかかってうとうとしてた。
「……だいまぁ!」
誰かが返ってきた声がするけど、お日様が心地いいから気にしないことにした。
「……ティ~!おーい」
どかどかと遠慮のない足音が階段を登ってくる。
「トド松!おーい」
ゆさゆさと肩を揺さぶられて、仕方なくまだくっついていたがってる瞼をゴシコシ擦って無理やりあける。
「なあなあ!ふわっふわのタオルケット!いくらぐらいするかスマホで見て!」
「は?なんで」
「いるんだよ!ふわっふわのが!あと3日後ぐらいに!」
両手を広げたおそ松兄さんが「ふわっふわのやつ!」と謎のゼスチャーで何度も言うからつい笑っちゃった。
「で、サイズは?6人用とか売ってないよ?」
「ふつーのでいいんだよ、一人用のやつ!できれば赤いの!」
はー?赤いタオルケットなんてそう簡単にないでしょ。と思って検索したら意外とあるからびっくりだよ。落ち着かなくない?
そう思いつつ、ボクは突然おそ松兄さんがタオルケットを欲した理由に思い当たってしまって、うわぁ~ってなった。
「……赤より、この赤と青のストライプのとかいいんじゃない?」
なんとなく赤一色を使わせるのがイヤで、ボクは別の商品ページを開いたスマホ画面をおそ松兄さんに見せる。
「おっいいじゃん!それ、すぐ届くやつ?」
「いま注文すれば明日届くけど」
「じゃ、それよろしく~」
前にも同じようなことがあって、ボクのMatsuzonアカウントにはとあるクレジットカードが登録されている。
そう、なぜかαなことが判明してしまったおそ松兄さん名義のカードだ。
上の兄さんふたりが、とうとう番になってから最初のヒート。それが3ヶ月前のことだった。
おそ松兄さんが急に家中から自分の服やら使ったタオルやらを集めて、客間にこんもりと盛り上げ出したんだよね。
その後カラ松兄さんがボーっとし出したと思ったら、ふらふら客間に入って、ダイブした。おそ松兄さんの着古した服の山に。
それを確認したおそ松兄さんが、すごい勢いで客間のふすまを閉めて「誰も来んな!」って、怖い声で怒鳴ったので、僕たちは絶対に、ふたりが出てくるまで絶対に客間に近寄らず、何ならなるべく外出したり、家にいるときは物音すら立てないように気を使って過ごした。
「もっと全身にくるまれるものがいいって、あいつ言ってたからさ~」
あれは、地獄のような時間だった。
だからちょっとぐらいやり返したっていいと思うんだ。
「届いたら、俺がまずぐるぐる巻きにして匂いつけないとなっ」
ニヤニヤしながら伸びた鼻の下を擦るおそ松兄さんには、いつ言おうかな。そのタオルケット、赤と青じゃなくてトリコロールだよって。