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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    13話目です。

    13おじいちゃんの葬儀は規模が大きく、数日間行われると聞いた。
    ただ、葬儀は本家で行われる為、人の出入りが激しくなった。
    私は本当の孫ではなかったが、当主であるパパが私たち家族を遺族として参列させてくれた。

    「帳はあるけど紛れて変なの入ってくるかもしれないから、バリア普段より大きめに出しとけよ」

    そう悟に言われてバリアを体から10センチくらい離した。

    「あとメガネも」

    「おじいちゃんの形見になっちゃった……」

    縁側に座って弔問客を眺めながらしんみり二人で話していると、パパとママが通りすがった。

    「あなたたち」

    ママが真剣な顔で言う。

    「私と正さんが初めてキスをしたのもあのお社だったのよ」

    思考が停止した。

    「あ?実気付いてなかった?監視カメラ」

    悟にさらっと言われ言葉が出ない。

    「あれ~?いつの間に仲直りしたの~?」

    パパが嬉しそうに茶化す。

    「私が付けたカメラでバッチリよ!あとでスクショあげるわね☆」

    キャッキャうふふと二人は去って行った。

    「じいちゃんの葬式で祝宴始めそうだな」

    「カメラに気付いてたんならやめなさいよ!」

    私は自分の顔が真っ赤になっているのが分かって穴があったら入りたかった。

    「嫌だった?」

    悟があの碧い瞳で真剣に聞いてくる。
    私はこの瞳の強さに昔から勝てない。
    悟はそれを分かってやっている小悪魔だ。

    「嫌……じゃない……」

    ようやくそう言うと珍しく悟はふざけなかった。そのかわり私の手にそっと自分の手を重ねて言った。

    「ようやく実の手と同じくらいの大きさになった。」

    私は悟が何を言いたいのか図りかねた。

    「年は絶対に追い付けないけど、身長はもうすぐ追い抜けるし、力も強くなる。」

    泣きそうになった。

    「実は俺が守る」



    ______悟は私が守る_______



    あれからもうすぐ10年。
    赤ん坊だった悟が私を守ると言っている。
    やっぱり私は涙を堪える事ができなかった。


    「何か言えよぉ」

    言葉なんか出てこない。
    重ねられた手を握るのが精一杯だった。


    「ママ!いい加減にしなさい!」
    「いいじゃないですか!もうちょっとだけ…!」

    小声で話すパパとママ。


    振り向くとハンディカメラを私たちに向けてるママと止めさせようとしてるパパ。

    「本当に悪趣味な親だよなぁ~」
    「いつから気付いてたの?!」
    「あいつらずっといた」

    「悟!親に向かってあいつらとは何です!」
    「子供のイチャイチャをカメラにおさめるのが親ですか~」
    「だから止めなさいって言ったでしょ!忙しいんだから行くよ!」

    ママはパパに引きずられるようにして消えて行った。

    「悟……お願いだから誰かいると気付いてたら言って……」
    「逆になんで気付かねーのかわかんねぇよ」


    おじいちゃんの葬儀は火葬等も含めて7日間きっちり行われ、弔問客が途切れる事はなかった。呪術の世界にいる人間がこんなに多いとは思わなかった。テレビで見たことのある政治家もいたと思う。

    孫である悟には分家の人たちがよく挨拶に訪れた。六眼を見るのが初めてという人たちも多く、物珍しげに悟を観察したあと(悟は相当不機嫌だったが失礼な事は言わないように我慢していた)、私たちがずっと手を繋いでいるのを微笑ましそうに見ていた。
    「本当の姉弟みたいね」
    と言われた時の悟の殺気に場が凍りついたのには本当にひやひやした。

    私が本家の孫でないことは分家の人たちには周知の事実だったようだが、私たちが手を繋いでいても分家のお姉ちゃんがまだ小学生の当主の息子の面倒を見ている、という域に留まっており、私が悟の許嫁のような立ち位置だとは思っていなかったようだ。
    その為悟と近い年頃の娘がいる分家の人間は、やたらと自分の娘を悟に会わせたがり、ママに一蹴されていた。
    ママは、
    「葬儀が終わったら二人のお披露目会をする」
    と息巻いていた。
    「それはせめて悟が高校生になってからにしよう?」
    と、パパは必死で宥めていた。
    私もパパに賛成したが、悟は可とも不可とも言わなかった。
    ただ、悟は私の手を握って離さなかった。



    本家の心配をよそに葬儀は無事に終わり、私は受験の準備に戻った。




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