愛玩動物旅人に招かれた摩訶不思議な居住空間、塵歌壺。璃月仙人の力で作られたこの場所には旅人と縁あるものが招かれている。仙人といえば伝説上の存在だが、実際に仙術で構築された空間を体験すればアルハイゼンとて疑う余地は無かった。
「ああ~、可愛い~」
そんな塵歌壺で、間抜けな顔と声を晒しながら猫と戯れる成人男性が一名。
「猫、いいなあ、癒される……なあ、アルハイゼン」
「本を汚されたくない。世話も躾も面倒だ。第一、俺の家には既に酒代のかさむペットがいる。これ以上は飼えない」
提案が言葉になる前に却下すると、子犬のようにきゃんきゃんと文句を言い始めた。やはり、小うるさいペットをこれ以上増やすわけにはいかない。
「君は猫と和解すべきだ。見なよ、このうつくしい毛並みにしなやかな尻尾。猫という生き物が生存競争に勝ったのは、人間に愛されたからだという説もある。僕は間違っていないと思うよ」
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