無題「もー……なんなのよー……」
誰もいない開発班オフィスでマリオンは独りごちる。ほんの数秒前まで目の前に綺麗に積み重ねられていた書類の山が、今はものの見事に雪崩を起こしていた。盛大に床に散らばったそれらをマリオンは思わず恨みがましく睨みつけてしまう。
ソールに催促されていた申請書をなんとか仕上げて、一息つこうと背中を伸ばそうとしたのがいけなかった。組んだ両手を胸元から前へ突き出した拍子に書類の山に手が当たってしまったのだ。
マリオンは肩を落としながら深々とため息をつくと、書類が散らばる机の前に向かおうと腰を上げた。そのタイミングを計ったかのようにコンコンとオフィスの扉が叩かれる。間髪入れずに入室してきたのは書類ケースを抱えたソールだった。
1464