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    melt_b_rain

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    もはや、何を書こうとしてたのか覚えていないソルマリ

    ##ソルマリ

    無題「もー……なんなのよー……」
     誰もいない開発班オフィスでマリオンは独りごちる。ほんの数秒前まで目の前に綺麗に積み重ねられていた書類の山が、今はものの見事に雪崩を起こしていた。盛大に床に散らばったそれらをマリオンは思わず恨みがましく睨みつけてしまう。
     ソールに催促されていた申請書をなんとか仕上げて、一息つこうと背中を伸ばそうとしたのがいけなかった。組んだ両手を胸元から前へ突き出した拍子に書類の山に手が当たってしまったのだ。
     マリオンは肩を落としながら深々とため息をつくと、書類が散らばる机の前に向かおうと腰を上げた。そのタイミングを計ったかのようにコンコンとオフィスの扉が叩かれる。間髪入れずに入室してきたのは書類ケースを抱えたソールだった。
    「マリオンさん、書類を受け取りに……って何をなさっているんですか」
     忙しいのか口早に用件を済ませようとしていたソールも流石にこの光景は目に付いて、途切れさせた言葉のあとにそう言及してくる。
    「率先してこんなことしてると思うの?」
     思わずそんな嫌味を口にしてしまうのは、きっと連日の支部への泊まり込みで心身共に疲れているせいだろう。
    「そもそも崩れるほど書類を山積みにしなければ防げたことでは?」
     だがそんな渾身の嫌味も彼の正論の前では塵に等しく、ばっさりと切り捨てられてしまった。マリオンは思わず唇を尖らせる。そんな自分を尻目にソールはさっさと用件を済ませたいのか淡々と口を開いた。
    「それよりも提出をお願いしていた書類ですが……」
     こちらに目線を合わせてきたソールの言葉が途切れる。彼の視線の先―マリオンが指差した先は床に散らばった書類の海だった。
    「この中」
     端的にそう答えて満面の笑みを浮かべてやると、ソールは眉間に皺を寄せて肩を竦めた。
    「……なんとなくそんな気はしていました」
     あからさまに呆れた表情を浮かべているソールにマリオンは急かすように背中を叩いた。
    「小言はあとでゆっくり聞くから、探すの手伝ってよ」
     そう言って散らばる書類の傍にしゃがみ込むと、ソールは額に手を宛てながら深々とため息をついた。
    「……仕方がないですね」
     独り言のようにそう呟くと、ソールは書類ケースを手近の棚に置いてマリオンの傍らにしゃがみ込んできた。どうやら手伝ってくれる気はあるようだ。見つからなくて困るのはお互い様なので、利害が一致した結果ではあるが、それでも多忙な彼が手を貸してくれることは貴重でマリオンにとっては願ってもないことだった。
     自然と緩みそうになる表情を引き締めながら、マリオンは散らばった書類に向き直る。二人で探せばあっという間で、数分とかからずに目的の書類は見つかった。しかし、いざ拾い集めた書類を戻そうにも、マリオンの机の上は連日の激務で酷い有様になっていた。
     かき集めた書類の束の一部を手に、無言でこちらを見下ろしてくるソールの視線が痛かった。
    「……マリオンさん、ここまできたら机の上だけでも綺麗にしてしまいましょう」
    「別にいいわよ。そこまでしてくれなくて。ソールくんだって忙しいでしょう?」
     彼に対する遠慮の気持ちも多少はあったが、それ以前に彼にデスク整理を手伝わせることはマリオンの年上女性としてのプライドが許さなかった。
    「まだ多少は時間の融通は利きます。それに、今後もこのような机で非効率的な仕事をされるよりはマシです」
     ズボンのポケットに忍ばせていた懐中時計を取り出して時刻を確認しながら、ソールが平然とそう言ってのける。
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    melt_b_rain

    MAIKING狭いとこに閉じ込められたソールさんとマリオンさんの掌編
    熱伝導 あれからどのくらい経ったのだろう。
     色んなことが重なってソールはマリオンと共にロッカーの中に閉じこめられていた。ドアには鍵がかけられていて、蹴破ろうにも金属製のそれはびくともしなかった。それでもマリオンが背中から何度か体当たりしていたら、勢い余ってバランスを崩してしまい、ロッカー自体が横倒しになってしまった。
     咄嗟にソールがマリオンを抱き込んで庇ったため、ソールは彼女の下敷きになる形で折り重なってロッカーの中で倒れ込んでしまっていた。
     ロッカーの壁面に打ち付けた背中や腰が痛むが、ソールにはそれ以上に気にかかることがあった。
    「大丈夫? ソールくん、重くない?」
     それはロッカーの狭さゆえに自分の上で身動きが取れなくなっているマリオンの存在だ。見た目以上に細く華奢な体躯なのに触れ合っている部分は柔らかく温かい。彼女が身動ぎする度に艶やかな黒髪からは甘い匂いが鼻先を掠めて、ソールの内側を甘く刺激してくる。狭い空間に押し込まれたやむを得ない状況とはいえ、憎からず想っている相手とこんなに密着した状態では否が応でも意識せずにはいられなかった。
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