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    三浦常春

    カクヨム在中の物書き。三度の飯より書くことと寝ることが好き。たまに絵も描くよ。
    Twitter→@tsune_yeah

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    三浦常春

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    過去に遊んだオリジナルCoCシナリオのリプレイ小説。
    今日のうちに書きなぐった部分だけ。

    『以下キリトリ』リプレイ小説 進捗1 目が覚めると、見知らぬ場所にいた。床も壁も天井も、見渡す限りが真っ白で、眩いほどの清潔感がある。

     なぜこんなところに。穂積颯斗ほづみはやとは重い頭を振って起き上がった。確か部活動に勤しんでいたはず。そこまで思い出して、はとする。眩暈が――立っていられないほど強力な眩暈が、己を襲ったのだと。

    「倒れちゃったのか……? てことは、病院?」

     病人を床に寝かせるだなんて、随分と雑な病院だ。床に寝かされたことで不具合が出るほどやわな身体はしていないが、思うところがなくはない。

    「穂積くん、起きたね。怪我はしてない?」

    「あれ、先生?」

     穂積の所属する空手部の顧問、橘花浩紀たちばなこうきであった。体育を専門とする教師でありながらその肉体は痩せ型で、どちらかと言えば文学を専攻していそうな面持ちである。

    「おれは平気でーす! 先生こそ、なんか疲れてそうだけど大丈夫?」

    「ああ……ウン……」

     橘花はゲッソリとした様子で腹をさすっている。どうやら穂積が目覚める前から活動をしていたらしい。

     何があったのかと問おうとすると、不意にどこからか呻き声が聞こえた。それは夢に出るほど聞き馴染んだ野郎の声とは違う、花弁が擦れるような、小さく可憐な声。軋む首を捻った先には、一人の少女が横たわっていた。

     声を聞いた橘花は少女に手を伸ばすが、何を思ったのかすぐに後退って声をかけるに留めた。

    「き、キミ、キミ! 大丈夫かい」

     緑襟のセーラーブラウスに赤のプリーツスカートを組み合わせた制服。穂積の属する白菊学園と兄弟校に位置する、桜学園の生徒だった。彼女もまた、己とは対称の位置にある詰め襟の学ランに気づいたのだろう、眠たそうな顔をサッと青ざめさせて身体を縮める。

    「ヒェ……白菊……」

    「驚かせてごめんね。俺は橘花浩紀。白菊学園で教員助手をしている。ほら、白菊の校章もついているだろう? 不審者じゃないし、決してキミに触れたりもしていないから!」

     慌てた様子の橘花を、柳は静かに見つめていた。やがて視線を床に落として、か細い声で言う。

    「や、柳ことはです」

     ひどく緊張しているようだ。無理もない。見知らぬ場所で、見知らぬ男二人に囲まれているのだ。まだ高校生の彼女が不安にならないはずがない。

     穂積は柳の前に膝を折る。

    「ことはちゃんか~! おれは穂積颯斗! 部活の副顧問なんだ、コーキ先生。コーキ先生の言ってることはホントだから、心配しなくていいよ。ことはちゃん、桜学園の人だよね。何年生?」

    「さ、三年生……」

    「そっか~、おれ二年! ん、てことは、ことはちゃん、先輩? やっべ、敬語忘れちゃった」

    「いいよ、敬語なんて……」

     ふるふると首を振ると、二本に結われたおさげが揺れる。寸分の間があって、柳がおずおずと問うてきた。

    「あの、ここは……」

    「おれも分かんないんだよな~。先生、知ってる?」

    「ごめん、俺もさっぱり」

     応じる橘花。少し迷ったような素振りを見せると、硬い声色を続けた。

    「……でも、扉を見つけたんだ。どこに通じているかは分からないけど、少なくともこの部屋からは出られそう」

    「とりあえず二人ともあめ食べる? 落ち着くかも」

    「おいおい」

     穂積は制服のポケットから缶を取り出した。つい昨日補充したばかりだから、中にはいっぱいの飴が入っている。蓋を開けて、柳と橘花それぞれの手に出してやる。オレンジ味とブドウ味だ。どうやら好きな味だったようで、強張っていた二人の表情がわずかに和らいだ気がした。

     最後に、自分も運試しと缶を振ってみれば、薄透明の飴玉――リンゴ味が転がり出る。

    「そういえば、柳さんは気を失う前に何をしていたか覚えてる? 俺と穂積くんは武道場で部活をしていたはずなんだけど……」

    「私は寮で……自分の部屋でゴロゴロしてました」

    「そうか。……共通点はないか。誰かにさらわれた、というわけではなさそう」

     穂積と橘花は部活動の真っただ中だった。人目が多いし、容易に誘拐できる環境ではない。

     柳に関しても同様だ。彼女の場合は自室にいたとのことだが、桜学園のセキュリティは白菊学園のそれとは比較にならないほど強固であると聞く。部外者の侵入が許されるはずがない。

     白菊学園、桜学園――両学園は、ともに『能力』と呼ばれる人智を超えた特殊能力を持つ子供たちの通う学び舎である。特殊な学校であるから、部外者の立ち入りは厳しく制限される。能力者自体に『拉致』の危険性はありこそすれ、環境がそれを許さない。いったい自分たちの身に何があったのだろうか。

    「扉があるなら出てみない? ずっとここにいてもしょーがないでしょ」

    「そうだけど……」

     気が進まないのか、橘花は口を曲げたまま黙り込んでしまう。柳はおろおろと二人の間を逡巡していた。
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    三浦常春

    PROGRESSぼそぼそ書いていた番外の一部(下書き)です。
    現在18000文字で全体の3分の1くらいしか書き終わっておらず、最後には何文字になるか……(震え)

    『竜の瞳の行く末は』、第1章に登場した老婆プランダ・ベッカーに焦点を当てた作品です。

    誤字脱字があったら、こっそりでも堂々とでも教えていただけると助かります( ;∀;)
    砂漠の魔女が生まれるまで(『竜の瞳の行く末は』外伝) ある晴れた日のこと、シュティーア王国王都の一角に怒声が響き渡った。
    「泥棒ー!」
     賑わいを切り裂く野太い怒号と、それから逃げるように人混みをかき分ける浪人が一人。腕にはひしゃげた皮の袋が握られていた。浪人の足取りはどことなく頼りない様子であったが、速さといえばさながらハヤブサのよう。怒号を引き離して中央街から離れようとした。
     ちょうどその時である。
     青みがかった髪を揺らし、女が群衆を追い抜く。膝丈の外套(コート)を翻し、皮帯(ベルト)に差していた杖を引き出して、素早く詠唱した。
    「……『水の精霊よ、我に力を――!』」
     杖の先に水が集まる。言葉に応え、形を変えた魔力が泥棒の足へと絡みついた。どしゃりと無様にも倒れ伏す泥棒は、はっとして足を振るが、魔術が解けることはなく。薄汚れた革靴を、貧相な下履きをずしりと重くしていた。
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