春の待ち人 吹奏楽部のファンファーレが、桜舞う校庭に鳴り響く。
四月一日。身の丈よりも少し大きな制服に身を包まれた学生たちが体育館から一斉に流れ出て、校門へ向かって列を成していた。その列を囲い込むようにして、様々なユニフォームを纏った生徒たちが大声で何やら呼びかけている。
「新入生体験入部十三時からでーす! マネージャー志望も大歓迎……」
「十三時から説明会を行います。ご興味がある方は……」
列に沿って歩くだけで問答無用でチラシを押し付けられる。中には手を引いて呼び止めてくる者もおり、学生たちの浮かれた熱気と勢いにタケルは辟易とし、人混みを抜けられる場所を探した。
入学式に相応しい晴天であったが、心中はあまり晴れやかとは言えなかった。
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