(タイトル未定) 新米隊員が自身の警護対象であるマインドハッカー、『先生』の部屋に入った時、その人は眠そうな目を瞬かせながら窓際に並べられた鉢植えに水遣りをしていた。朝と呼ぶには遅い時間帯、もうすぐ中天に差し掛かる太陽が部屋を明るく照らしている。白い部屋とそこに飾られた色彩豊かな花たち。その中にいる先生は部屋や花と同じように光に照らされている筈なのに、清潔でカラフルな空間にぽつりと落とされた黒いシミのように見えた。仮にも自身より目上の立場にあたる人に「シミ」だなんて失礼なことを! 新米隊員はそう思い、頭を横に振って先程脳内に浮かび上がった思考を掻き消した。
「先生!」
彼が呼びかけて漸く先生は彼の存在に気付いて、花からそちらに顔を向けた。
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