素体に惚れ惚れ「ランガくん、ランガくん」
「その声は愛抱夢……あれ、いない?」
「こっちだよ」
「また聞こえた。そこそこ上の方からだったような……でも空には何も見えないし、人だってどこにも」
「にゃおん」
「壁の上に猫がいるけどそれだけって、わっ、……と、とと…………良かった受け止められて……でも危ないよ、気を付けてね」
「わかった。今度からは気をつけて飛び込もう」
「!?喋……っ」
「ふふ、ランガくんにたしなめられてしまった……君のそんな顔が見られるなら少しの間この姿もありかも……どうしたの?」
「ね、猫が喋ってる」
「猫じゃない。感じるだろう?僕は愛抱夢。君の愛抱夢だ」
「たしかに雰囲気は愛抱夢っぽいけど、どう見ても」
「猫に見えるのは今僕が君へそう見せようとしているからさ。他にも出来るよ、そら」
「猫が消えて……あっ愛抱夢、元に戻った、ん、だ…………」
「ふむ。猫耳は興味なし、と。ならこんなのはどう?豹耳。孔雀。角」
「角?」
「マントと衣装も忘れずに。これは君より反応の良い子が居そうだ。牙を生やして吸血鬼。セットの方がさまになるかな。ステッキを持ったら悪くて強い魔法使いだ。何にでもなれるよ。もちろん猫にも戻れる、にゃあ」
「上手だね」
「ありがとう。さて、どうする?」
「どうするって」
「どれが良いか教えて。君の一番好ましい僕になってあげる」
「俺が決めていいの?」
「構わない。決められたところで僕は僕だ。変わりたいと思ったら何も気にしないで変わるさ」
「だったら遠慮なく。まず足は二本」
「本数からか……人間の足?」
「うん。腿の太さはこれくらい。ここの筋肉が一番目立つけど下がったところもしっかりしてる、それで」
「へえ、結構ディテールにこだわりがあるんだ。しかしこれでは」
「身長は大体このくらいで……もう少し……?愛抱夢ちょっとここに立って……やっぱりもう少し上だ。愛抱夢、あっ、そうそう。良い感じ」
「……」
「あれ?腕はもう丁度良い。他も……服がちょっと気になるかな、さっきの猫っぽい。あれもふかふかで良かったけど、この服はもっとするっと滑るみたいで……」
「……いつもと同じ素材にしようか?」
「ありがとう、お願い……愛抱夢?まだ終わって……るな、これ……もしかして自分で全部戻した?」
「……うん……一生このままでいる……」
「そっか。嬉しい」