恋人は聖母様 人間も吸血鬼もついでにニホンオッサンアシダチョウもヨナグニサンも渾然一体となって生きる街、新横浜。そんな魔都にも平等に梅雨は来る。湿度が高く不快で雨の多いこの季節は吸血鬼もなかなか積極的に活動しない。つまりこんな中で出没する輩は大体が厄介な吸血鬼である。
「で、今日のポンチは?」
「吸血鬼抱卵大好きだって」
雨の降りそうな夜だからとパトロールに同行せず、またこうも暑いとジョンのお散歩もお預けだと涼しい事務所でゲームに勤しんでいたドラルクは、普段より慎重な足音に「何か」が起きたことをすぐに察した。血の匂いがしないので怪我の恐れは無いか、いや捻挫や打ち身の可能性も無くはないと先んじて扉を開けたところで、子犬を抱く様にして大きな卵を抱えたロナルドが現れたという次第である。
2374