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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    高校生荒新でキスの日
    どうしても新開さんからキスしてほしい荒北さん

     キスが好きだ。
     唇を触れ合わせるだけの軽いキス。深く繋がって、どろどろに溶けてしまうような濃厚なキス。どっちのキスも好きだし、気持ちいい。
     厳密に言うとただキスが好きなわけじゃなく、新開とのキスが好きなんだ。ふわふわで柔らかいあいつの唇は、どれだけ重ねても飽きることなんかない。少しだけ甘く感じる咥内は、いつまでも味わっていたくなる。軽く触れ合わせた後の微笑む顔も、深く合わせた後の蕩けた瞳も、全部が好きすぎてどうにかなってしまいそうだ。
     だから新開とのキスに不満なんてない。ねだってくるのも可愛いくて、すぐに応えてしまう。いや、マジで可愛いんだって! ふにゃりと笑って、名前を呼ばれたら抵抗なんて出来やしない。オレが新開に甘いことは、自分でも充分に理解している。でも可愛いもんは可愛いし、甘やかすなって言われても、それが無理なのもわかっていた。
     だから、問題はそこじゃない。そうオレは気づいたんだ、新開からのキスが少ないってことに。ここ最近交わしたキスを思い返しても、全てオレから仕掛けていた。あいつからのキスが、遥か遠い記憶になるってどういうことだよ。

     ちなみに昨日はこんな感じだ。
     二人で並んでテレビを見ていたら、チョコレートのCMが流れ新開が口を開いた。
    「靖友、チョコ食いたくねぇ」
    「アァ?」
    「だから、チョコ。食いたいよな」
    「それ、おめーが食いたいんだろ。オレは別に食いたかねェよ」
     素っ気なく返すと、新開は眉を下げ人の服の裾を握ってくる。
    「やすともぉ」
     甘えた声を出し、上目遣いでこちらを見つめる顔が可愛い。ひとつ息を吐いてから立ち上がり、机の引き出しを漁る。
    「……ほら」
     振り向き新開の目の前へ一枚の板チョコを差し出す。目を丸くした新開が一瞬動きを止めてから、こちらへと向き直った。
    「え、靖友これ」
    「食いてーんだろ。やるヨ」
     こういう時のため、オレは何かしらのお菓子を常備してある。チョコがあったのはたまたまだけど、これじゃ甘いって言われても言い返せやしない。
    「ありがと」
     へにゃりと嬉しそうに笑った新開に、オレの心の中もほっこりする。いそいそとパッケージを開ける手を握って止めると、不思議そうな瞳がこちらへと向いた。そっと頬へ唇を寄せてキスすると、新開は擽ったそうにしながらも口許を緩める。ゆるく上がった唇に、自分のそれを重ねて啄むようなキスをひとつ。もう一度、今度は少し長めに唇を合わせてから、ゆっくり顔を離すとふんわりと微笑む新開がいた。

     そして一昨日はこんな感じだ。
     ベッドにうつ伏せて雑誌を眺めていたら、パタリと本の閉じる音が響く。新開が持ってきた小説は残りページが少なかった。きっと最後まで読み終わったのだろう、次は構って攻撃が始まりそうだ。今回はどういう手でくるのか、この間はいきなり背中にのし掛かってきたんだよな。気持ちはもう完全に新開へ向いているけれど、素知らぬ顔で雑誌を読むふりをする。ごそりと動く気配がして、新開がこちらへ体を向けたのがわかった。すぐにでも視線を新開へ送りたくなるのを必死でこらえる。
    「なぁ、靖友」
    「んー」
     素っ気なく返事すると、ベッドの端に何かが乗っかる。
    「やすとも」
     ふわりと耳を擽る柔らかな声に、思わずそちらを見てしまう。そこには、ベッドに顎を乗せわずかに首を傾げた新開がいた。
    「へへっ、こっち見た」
     オレの視線が自分に向いたことに、満足げに頬を緩める顔が可愛くてつい頭を撫でてしまう。気持ち良さそうに目を細める姿がまた可愛くて、撫でていた指で前髪を上げ額にキスを落とす。視線を合わせようと新開の顔が上を向き、柔らかな唇にもキスする。ちゅっと可愛い音を立て離すと、新開の手がオレの首に回ってきた。
    「靖友」
    「なァに?」
    「もっと、いっぱいしてよ」
     すぐ近くに見える瞳は熱を孕んでいる。誘われるまま合わせた唇を、今度は深く繋げ互いの舌を絡めた。この後ことに及ぶのはあたりまえだけど、それはまた別の話だからやめとく。



     つまりオレが何を言いのかっていうと、あいつは自分からキスしたいと思わないのかってことだ。だっておかしいだろ。この一週間振り返ってみても、あいつからのキスはゼロだぞ。ここまでくるとキスすること自体、嫌なんじゃないかと思えてくる。
     ――こうなったら、あいつからしてくるまでオレからはぜってーしねェ。
     そう心に決めたはいいが、新開を前にすると無意識に手が出そうになる。いまも部屋に入った途端へらりと変わった表情に、頭を緩く撫で流れるようにキスしてしまいそうになった。不自然に動きを止めたオレを、新開が不思議そうな顔して見ている。その額をペシッと叩いてから向きを変え、ベッドまで歩き腰掛け誤魔化した。新開は叩かれた額に手を当て、面白くなさそうにしている。
    「オレなんで叩かれたの?」
     そばまで寄ってきて、オレを見下ろしながら新開は呟く。
    「……ヘラヘラしてっから」
    「へらへら?」
    「そ、ヘラヘラしてたろ」
     こんなんで納得するはずないのはわかっていても、他に上手い言い訳なんて浮かびやしない。
    「うーん。でもさぁ、靖友といるとオレどうしても笑っちゃうぜ」
     ポスッと音を立て隣へ座った新開は、腕組しながらそんなこと言ってきた。
    「…………んだそれ」
    「靖友と一緒にいんのオレすっげー好きだからな」
     ふわりと笑う新開の顔もセリフも可愛すぎて、いますぐ抱きしめてキスしたくなる。ぐっと拳を握り何とかこらえた、勢いよく視線を逸らした。
    「靖友、なんか今日へん」
    「ア?」
     ずいっと顔を近づけてきた新開は、オレの顔を覗き眉をつり上げる。あまりに近い距離に、のけ反りながら間合いをとった。
    「なんか隠しごと?」
    「んなんじゃねェし、つーか別にいつもと変わんねーだろ」
    「違うよ」
    「なにが?」
    「いま、キスしてくんなかった」
    「はぁ?」
    「あーいう顔した靖友はいつもキスしてくれんのに」
     むぅ、とむくれた新開を見ながら思う。ああいう顔ってなに? オレ、キスする前にそんなわかりやすいサイン出してんのかよ。だとしたらあまりに恥ずかしんですが。
    「や、す、と、も」
     羞恥に耐えるオレの手首を掴み新開は、せっかく開けた距離をまた詰めてくる。
    「ほら、またなんか他のこと考えてる」
    「いや、これは違ェって」
    「違うってなに?」
    「なんつーか、他って言ってもおまえのことだし……な!」
    「意味わかんない。……それって靖友がキスしてくれない理由にはなんないだろ」
     新開の口からもごもごと吐き出された言葉に、オレははたと気づく。
    「おまえ、オレとキスしたかったのォ?」
     少し間の抜けた声で尋ねたそれに、新開はふくれ面のまま頷く。
    「だったらすりゃいーんじゃね」
    「へ?」
    「だからァ、キスしてェと思ったら自分からしろつってんの! こっちだって拒まねーヨ」
     きょとんとして一瞬止まった新開が、次にははっと何かに気づいたような顔をする。
    「そっか!」
    「そっかって」
    「なんか、いっつもキスしたいなーって思うと靖友がしてくれっからさ。そっか、自分からすりゃいいのか」
     うんうんと感心した新開は今度はオレを見てニカッと笑った。
    「靖友、キスしてい?」
     色気もくそもない、直球ど真ん中のお伺いに思わずふき出してしまう。まあそうは言っても、こんな新開も可愛いと思えるオレのがどうかって話だけど。
    「どォぞ」
     好きにしろ、そんな意味を込めキスしやすいように瞼を閉じてやる。すると肩に手を置かれる気配がし、そこからたっぷり二十秒。薄く目を開けると、目の前には戸惑った顔の新開。漏れそうになる笑いをこらえ、そこからさらに十秒。ようやく唇にふにっと柔らかな感触がぶつかって、すぐに離れていく。
    「下手くそ」
    「しょうがねぇだろ! 慣れてないんだから」
     そう叫んだ新開は真っ赤になりながら、口許を手の甲で押さえている。どれだけ恥ずかしいのか、逸らすように下を向く顔を覗き込み視線を合わす。唇を隠す新開の手を掴んでどけて、現れたそこへキスをひとつ。離してまたすぐ、唇を押し付け離れる。
    「やすとも」
     声も表情も柔らかくなった新開の頬へ、そっと手を滑らせた。
    「しょーがねェから、これからもオレがしてやんヨ」
    「うん!」
     ぎゅうっと抱きついてきた新開の頭を撫で、またキスを贈る。

     キスが好きだ。
     唇を触れ合わせるだけの軽いキス。深く繋がって、どろどろに溶けてしまうような濃厚なキス。どんなキスだって新開とするキスは最高に気持ちよくて、好きだって想いが溢れてくる。だから、これからもオレはあいつにキスするんだ。
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    Replies from the creator

    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
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