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    saku2442

    pdl 荒新の字書き
    幸せな推しの妄想をするのが日課です

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    saku2442

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    社会人荒新
    荒北さんと同じ会社で働くモブ子ちゃんから見た荒新。カプ推ししてるモブ子ちゃんが二人の関係にただただ萌えているだけのお話です。
    以前書いた物の続きとなります。

     朝起きて一番にすることは、洗顔と歯磨き。それから適当に朝食の用意をする。今日のメニューは昨夜コンビニで買ったパンとインスタントコーヒー。貧しい朝食だと思うけど、朝から料理なんてしたくないしこれで丁度いい。
     ローテーブルにパンとコーヒーを乗せ、ソファーに座りテレビを点ける。そうしてパンの袋を開け、そのまま齧りつく。誰かの目を気にすることなく、大口開けて食べられのは一人暮らしの利点だと思う。口の中いっぱいに頬張っても、文句言う人もいないしね。そうして二口目を口に入れながら、朝一でソファーに放おっておいたスマホをたぐり寄せた。
     すぐに明るくなった画面を覗き、素早くロックを解除する。そしてお目当てのアイコンをタップして、タイムラインをスクロールしていく。流すように動かしていた画面に、見慣れた名前を見つけ慌てて止めた。
     そこに写っていたのは、焼き鮭に切干大根の煮物、ほうれん草の白和えにお味噌汁とご飯。『今日の朝飯』の一言が添えられたその投稿に、私の視線は釘付けになる。朝食として完璧なメニューは、とてもじゃないけど私には真似できない。でもその見た目も栄養バランスもいいだろう朝食より、気になったのは画面の上ふたつあるお弁当箱。拡大してギリギリわかるくらいの見切れ方だけど、水色のランチクロスで包まれた物とピンク色の物とふたつ。
     ――はいはい、荒北さんと自分のお弁当ですね。
     発見した瞬間、自分の口許がだらしなく緩むのがわかった。なぜなら荒北さんと新開さん、この二人は私がいま一番に推しているカップルだから。最初二人の関係に気づいた時は、まさかという思いの方が強かった。でもそのまさかが確信に変わった頃、私の中でカプ推し最高じゃない! とかなってたんだ。
     同じ会社で働く荒北さんと、プロのロードレーサーの新開さん。この二人が付き合っていることを、知っている人はどのくらいいるんだろう。私だって気づけたのは本当に偶然だった。不用意にSNSで匂わせる新開さん(多分天然)が、写真に収めた荒北さんの私物たち。一度気づいてしまったら、そりゃ注意して見るようになっちゃうよね。それに調べた荒北さんの恋人の特徴は、全部新開と一致していた。
     そりゃあ戸惑いがなかったと言えば嘘になる。だって彼らは……そう、彼ら。男同士での恋愛はやはり一般的じゃない。でも私が彼らを応援し推していこうと思えたのは、二人が互いを何より想い合っているとわかったから。
     部署の違う荒北さんと私が遭遇することは、そう多くない。一番会える場所はやっぱり社員食堂だろう。その食堂でも近くに座ることはかなり難しい。彼が先に来ている時が一番のチャンスで、そういう時はさりげに後ろの席を取ったり出来る。荒北さんは自分から恋人の話をすることはないけど、聞かれたことにはちゃんと答えてる。昨日の晩飯なんだったとか、休みどっか行ったとか。そんな何気ない会話の中で、荒北さんはいつも一瞬だけ間をとる。そうしてすぐ、いつもの調子に戻り答えを返す。その間がなんで開くのか、最初はわからなかった。でも何度めかの時にふと気づいた。その一瞬に瞳がふわりと優しくなっていることに。
     ――あれは、一緒に過ごした人のことを思い出してるんだ。
     恋人のことを思い出してあんな顔が出来る人、世の中にどのくらいいるんだろう。少なくとも私は彼しか知らない。あの表情だけで、どれだけ相手を想っているかが伝わってくる。
     そんなこと知っちゃったら、もう推すしかないじゃない! だって新開さんの幸せは私の幸せ。そしてその新開さんを一番幸せにしているのは、他の誰でもなく荒北さんなんだもん。カプ推しになるのは必然でした。というわけで今日も朝から情報収集して、こうして幸せのおすそ分けをいただいているのです。



     午前の仕事を無難にこなし、お昼に行こうかと席を立つ。いつもお一緒に食事する同僚と、食堂へ向かいながらも心の中で小さくため息をついた。だって今日は荒北さんはお弁当だから、食堂には来ないでしょ。食堂でお弁当を食べる人もたくさんいるけれど、荒北さんはお弁当の時は絶対に現れない。新開さんが作ったお弁当を人に見せたくないっぽい。でも、きっと恥ずかしいとかじゃないと思う。どっちかと言うと独り占めしたい……って感じかな。荒北さんは独占欲強そうだし。
     恋人が作ったお弁当開けて、ふわりと頬を緩める彼氏ってめちゃくちゃ萌えるのに! 出来れば間近で見たいけど、その願いが叶うことはないんだろうな。前みたいに課長がお使い頼んでくれたらいいのに。推しカプが、互いへの愛情を表に出す時ほど尊いものなんてないんだから。私はそれを目撃して、ハートを撃ち抜かれるモブになりたいのですよ。あー、せめて荒北さんと同じ部署だったらな〜。いまからでも移動の申請しようか。
     本気でそんなことを考える私は、もちろん同僚の話なんてほぼ右から左へ流してる。だって彼女達の仕事の愚痴や彼氏の話より、推しカプのこと考えてる方が幸せだし。だから、お昼休みにもSNSのチェックはかかしません。けど今日は完璧な朝ご飯の後、新開さんの投稿はなくてがっくりと肩を落としてしまう。
     まあ元々マメに更新する人ではないし、これは普通のことなんだけど。でもな〜、せめてお弁当の中身知りたかったな。だって二人が何を食べているのかわかった方が、解像度が上がるでしょ。
     前に荒北さんが「あいつが作るモンはなんでもうめェし」って話してるのを聞いたことがある。しかも、その時は向かい側に座ってて、顔までバッチリ見えたんだから。なんでもない感じであっさり言ったくせに、顔は少しはにかんでて……そのギャップにめちゃくちゃ萌えました。この場にもし新開さんがいたらどんな反応なのか妄想して、もう悶え死ぬかと思ったんだから。
     ――はぁ、一度でいいから二人が並んでるところが見たいな。
     スマホ片手にため息をつくと、同僚達に心配され慌てて誤魔化したのは言うまでもないことですね。



     本日は残業なし。帰ったら新開さんのレース動画でも観ようかな。うきうきしながら駅まで歩いていると、私のセンサーが推しを感知した。スマホを耳にあて、歩を進めるその後ろ姿は荒北さんだ。
    「ああ、今日は早く上がれた。ん? いまァ? 会社出て駅まで歩いてるとこだけどォ」
     普段より柔らかな話し方で、相手が誰かは訊かなくてもわかってしまう。会社でも何度か荒北さんが新開さん相手に話してるのを見かけたことがあるけど、表情も声も全部あまくて、やわらかい。初めてみた時は鼻血出るんじゃなかってほど興奮して、夜も寝られませんでした。
     いまも同じ顔で喋ってるんだろうな。さすがにこの状態で横に並んで歩くのは怪し過ぎて出来ないが、声だけで表情は想像出来てしまう。なるべく歩調を合わせ、会話を盗み聞きする。
    「んな遠くねェし、すぐ着くって。は? ちょ、おま、何言って……」
    「靖友!」
     急に慌て出した荒北さんの話を遮るように、誰かを呼ぶ声が聞こえた。その声につられ、私の視線もそちらへいく。そこにはこちらへ向かって大きく手を振る男の人が立っていた。ふわふわの赤毛に深く青い瞳、がっしりとした体型の彼はどう見ても私の推しだった。
    「おまえなァ、急に来てんじゃねーヨ」
    「たまたまこの辺に用ができたからさ」
     は、まって、これって現実? え、だって画面を通してしか見たことない推しがいま目の前に……。
    「オレが早く終わんなかったらどーするつもりだったんだっつの」
    「それはそれだろ。ちゃんと会えたんだからいいじゃねぇか」
    「……たく、しゃーねェな」
     くしゃりと新開の頭をひと撫でして、荒北さんはふっと口許を緩める。それに新開さんはふにゃりと嬉しそうに笑い返す。
     やだ、可愛い。想像してたよりずっと新開さん可愛いんですけど。ギリギリ変に思われないくらい、歩くスピードを緩め二人を窺う。表情筋にも全開で力を入れ、何食わぬ顔を必死で作る。
    「晩飯どーする? なんか食ってくかァ」
    「たまにはそれもいいかぁ」
    「なに食いてェの?」
    「うーん、なんだろ……靖友は?」
    「オレはおまえが食いてェのでいいヨ」
    「へへっ、んじゃイタリアンとか? パスタ食いてぇ」
    「りょーかァい」
     スマホを取り出した荒北さんは、きっとイタリアンのお店を探してる。めちゃくちゃ甘やかしてるよ! っていうかスパダリ過ぎませんか。
     あ〜〜〜〜っ! もうムリ〜! 死ぬ! 生の推しカプのイチャつきは人を殺す力持ってるよ。やだ、ほんとまって。もしかして私、一生分の運使い果たした? やっぱり今日死ぬの? いや、もうそれでもいい。だって推しカプが目の前で幸せそうに笑ってる。こんな幸せ他にないよ。
     今日も明日もその次も、いつだって私は叫びます! 推しカプよ永遠なれ! 私は一生君たちを推すっていま決めましたから!
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    saku2442

    DOODLE大学生荒新
    お昼時にメッセージのやり取りをする荒新のお話。待宮さんも登場します。
    だって、君は特別。
     うどんを一口すすったところで、テーブルの上のスマホが震えた。すぐに止まったそれは、通知を知らせるためにピカピカ光る。箸を置き、代わりにそいつを手に持った。素早くロックを解除し、送り主を確認すると想像していたヤツからのメッセージ。
    『うまそうだろ!』
     その一言と共に送られてきた写真。そこには分厚いカツの乗ったカレーが写っていた。昼食にしては中々のボリュームだが、こいつなら平気で平らげるだろう。口いっぱいに頬張り、幸せそうに食べる姿を思い浮かべ自然と口元が緩む。
    『うまいからって早食いすんなよ』
     そう文字を打ち込んでから、テーブルへスマホを置き食事を再開させた。
     新開はこうして、自分の食べる物を撮ってよこすことがある。それ以外にも澄んだ青空、季節の花や路地裏の野良猫。何気ない日常を切り取ったようなそれらに、オレはいつも癒やされている。本音は恋人の写った写真の方がいい。けど自撮りが下手なこいつは、まともな写真をよこしたことがなかった。たまに福ちゃんが送ってくれる写真の方が、よっぽど上手く撮れている。
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