生ぬるい風が流れている。頬を掠め、髪を揺らしたそれが、審神者の意識をふっと引き上げた。瞼はまだ、重い。
低く、唸る音がした。それから、キ、キと規則的になにかが軋んでいる。風に紛れるようで、かき消されてしまいそうなそれは、目を閉じているから聞こえるのだろう。薄っすらと目を開くと、天井の板目が飛び込んできた。
誰かがやってきたのだろう、審神者の記憶が途切れるまでにはなかったタオルケットがかけられていた。審神者の目覚めを誘ったのは、審神者よりも前からこの本丸にいた扇風機だ。首を降る以外には、色違いの大振りなボタンで三通りに風の勢いを変えることと、ツマミを回してスイッチを切るタイマー機能しか持たないが、羽根が回ると網の中に薄青い膜のように見えるのが、涼し気でいい。
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