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    ○⚪︎○(ワッカ)

    2次作品保存箱。

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    POIPOI 58

    煉獄兄弟の鬼ごっこシリーズ3作目の再掲です。
    前編後編に分かれているので同時にアップします。
    最近寒くなっているせいか思考まで低下していて兄メイトの足組み🔥さんアクスタの入金も忘れてしまうという失態を犯す始末…。店舗へ出向いて無事再予約出来ました。ホッ。
    先に進まない🔥i🧹の続き(支部に載せてた記憶のない🔥さんの話)も書かねばとずっと気になってるのでなる早で再掲していきたいと思います。

    犬と煉獄兄弟の隙間(前編)過日、朝餉を済まし後片付けをして俺が毎朝の日課にしている表の掃き掃除をしようと庭の片隅で目立たずに鎮座している納屋に竹箒を取りに行き、それを持って穂先の部分を刀に見立てて上下に振り回しながら門の外に出て行くと門の片隅に一匹の仔犬が蹲っていました。はて?と近づいて行くと柔らかな毛に覆われてふくふくとした赤毛のその仔犬は俺の存在に気付くと頼りない目で俺を見上げ、立ち上がって舌を出しながらくるんと上巻きになった尻尾を振り始めました。
    「わあ、なんて可愛らしい。柴かな、君は。」
    俺は仔犬に駆け寄り前屈みになるとそっと右手を伸ばして頭を撫でました。眼を細めて素直に俺に撫でられている仔犬の愛くるしさに、思わず顔が綻びました。
    「野良だろうか、君、家はあるのかい?」
    仔犬に聞いた所で答える訳は無いのですがつい聞いてしまいました。当然仔犬は何かを言う訳でも無く、俺に撫でられている事に夢中になってクンクンと鼻を鳴らすだけで仕方なく此方で勝手に野良犬だと判断を下すのですが大方何処かの野良犬が仔を産み落として成長したその一匹が冒険心から家までやってきたのだろうと思います。仔犬の喉を擽る様に撫でてあげると舌を出して俺の掌を舐めてきて、俺の顔をつぶらな目でじっと見てくると、その何かを期待する様な顔につい食べる物を与えたくなりました。
    「お腹空いているのかな。少し待って、何か持ってきてあげよう。」
    俺は竹箒を門の戸に立て掛けると仔犬に与えるものを探しに厨に向かいました。丁度朝餉の残りの御飯と味噌汁があった為、使っていない古い碗に御飯をよそい、上から味噌汁をかけて仔犬の元へ小走りで戻りました。仔犬は地べたに尻をつけて門の所で待っていて、俺の姿を見るとまた立ち上がり尻尾を振りました。
    「よしよし、大人しく待っていたね。お前は利口な仔だ。さあ、お食べ。」
    仔犬の前に茶碗を差し出すと、仔犬は鼻をひくひくさせて匂いを嗅いでから御飯にかぶりつきました。夢中になって食べている姿がまた可愛らしく、仔犬の前に屈んで頬杖をつくと俺は、ふふ、と笑いました。仔犬はその身体の大きさに見合わず与えた御飯をあっという間に平げ、もっと欲しそうな目で俺を見上げると、ワン、と鳴きました。
    「お前は良く食べるねぇ、誰かさんにそっくりだ。」
    にんまりと笑い仔犬を抱き上げると、俺の頬を小さな舌でぺろぺろと舐めてきました。
    「わ、くすぐったい。ははっ。」
    掃除をすることも忘れて暫く仔犬と戯れていると、玄関の戸を開ける音が聞こえてきました。
    「千寿郎!」
    突然背後から名前を呼ばれて俺はびくりとしました。
    「何だ、その犬は。」
    父上が玄関の戸に手を掛けて俺の方を見ていました。
    「あ…、父上、この仔は今朝方ここにいたので…、お腹を空かせている様だったので食べるものを与えただけです。」
    仔犬を抱えたまま父上に向き合うと父上は気に入らなそうな眼で仔犬と俺を交互に見て、チッ、と舌打ちしました。
    「餌など与えて懐かれたらどうするこの莫迦者!何処か遠くへ捨てて来い!」
    「そんな…、私が面倒を見ますので家で飼ってはいけませんか?」
    俺は仔犬を父上から隠す様に抱き締めました。
    「俺は犬が嫌いだ!早く捨てに行け。家に勝手に入れるなよ?」
    父上はそう言うと家の中に戻って玄関の戸をぴしゃりと閉めてしまいました。
    (こんな可愛らしい仔を捨てるなんて…。)
    仔犬の顔を眺めると仔犬は何も知らない無垢な顔で俺の顔を一生懸命に舐めようとしてきました。
    「…ごめんな、家じゃ飼ってあげられないんだ。」
    俺は仔犬を地面に下ろして頭を撫でました。
    「…新しい主人を探すんだよ。」
    竹箒を持って家の中に入ろうとしたのですが、仔犬はワン、と鳴いて俺を引き止めようとしている様に見えました。
    「本当にごめん。」
    仔犬の鳴き声を背に俺は玄関の戸を閉めました。暫く仔犬は鳴いていましたが諦めた様に声が聞こえなくなり、そっと少しだけ戸を開けて覗いてみるともう先程の場所に仔犬の姿を認めることは出来ませんでした。
    「行ってしまったか…。良い人に出会うんだよ。」
    俺はもう一度外に出て、今日は掃き掃除をする気になれなかったので竹箒を納屋に片付けると玄関の上がり框に腰を下ろしました。はあ、と溜息をついて先程の仔犬の柔らかな感触を思い出していると玄関の戸越しに人の気配を感じました。誰だろう、と思ったらガラリと戸が開き快活な声が響きました。
    「只今帰ったぞ!」
    「お帰りなさい、兄上、…あ!」
    声の主は朝の鍛錬から帰宅した兄上でした。俺は立ち上がると兄上を出迎えたのですが何故か兄上の右腕には先程まで俺の腕の中にいた仔犬が抱えられていました。
    「ええっ⁉︎兄上どうしたのですかその仔は!」
    俺は眼を丸くして兄上を見上げました。
    「うむ、今し方そこの曲がり角で拾ってな。余りに人懐こいので連れて来た‼︎」
    「連れてきたって…、兄上駄目ですよ!父上に怒られます!」
    俺が慌てて家の奥の様子を伺いながら小声で言うと仔犬がワン!と鳴き、その声が廊下に響き渡りました。あっ、と思った時には既に家の奥の方で戸をパーンと響かせる音がしてどすどすと歩く足音が近づいてきました。
    「あわわわ…。」
    額に青筋が浮かびまるで赤鬼の様な顔をした父上が俺と兄上の方に向かってきました。
    「犬を家に入れるなと言っただろうが千寿郎‼︎」
    俺は急いで兄上の後ろに身を隠しました。俺の行動を見ていた兄上が俺を庇う様に前に立って父上を制しました。
    「父上、何も犬如きでそんなに怒らなくても良いではありませんか。」
    「俺は犬が嫌いだと言っとるんだ。早く家から追い出せ!」
    父上は追い払う様に左腕を大きく振りました。仔犬は父上の動作に驚いたのか唸り声を上げ始め、ワン!と吠えて兄上の腕から抜け出し父上に向かって飛び掛かると父上の股ぐらにがぶりと小さな牙を突き立ててぶら下がりました。
    「………‼︎‼︎‼︎」
    「!」
    「‼︎」
    そこにいた全員が固まりました。父上が急所を噛まれた痛みに耐えかねて身動ぐと仔犬は更に唸りながら父上に狼藉を働こうとして首を滅茶苦茶に振りました。父上はその仔犬の衝撃的な行動に白目を向いて泡を吹き、だ、か、ら、犬、は、き、ら、い、な、ん、だ、と声にならない声で口をはくはくさせていました。
    突然起きた予想外の光景に驚き、俺と兄上は慌てて仔犬を父上の股から引き剥がすと、内股で股間を押さえ前屈みになってふるふるしている父上の顔を二人でそーっと上目遣いで見ました。
    「この莫迦息子共がー‼︎」
    父上はくわっと眼を見開き、早く捨てろと言っただろうが!、と頭上に雷鳴が鳴り響く様な怒声と共に、その背後に地獄の劫火にも似た炎が轟々と立ち登るのが見えました。
    「ぎゃ‼︎」
    父上の姿に俺は青褪め兄上の方は身の危険を感じた様で、兄上は俺の腹回りに素早く手を回すと俺を引き上げて自分の脇腹に抱えてきました。
    「逃げるぞ!千寿郎‼︎」
    「あにうぇぇ⁉︎」
    兄上は右腕に仔犬を抱き、左腕に兄上の尻側に頭を向けうつ伏せで身体をくの字にして膝を曲げている俺を抱えて軽く跳ねると、ドン‼︎と低音を響かせながら三和土をへこませて走り出しました。兄上が踏み込んだ時に廊下側に土埃と細かく砕けた石が舞い上がって父上に降り掛かり、ごほごほと咳き込む音がして父上の頭から着物から全てが土埃まみれになり、父上が俺達の方をぎろりと睨むと赤かった顔色がみるみるどす黒く変化していくのがわかりました。
    「待てい!杏寿郎‼︎」
    俺の視線の先に父上が跳ねる姿が見えました。またもやドン‼︎と音が響き今度は父上が三和土に大穴をあけて玄関中にひび割れた石や土の塊などを撒き散らすと恐ろしい速さで俺達に迫って来ました。
    「ひいぃ!」
    俺は余りの恐怖心から叫んでしまいそうになり、指を折り曲げて人差し指の横で口を押さえました。当の兄上は後方から迫り来る父上をちらりと振り返ると声を立てて笑い出しました。
    「はっはっはっ‼︎この歳になってよもや父上と追いかけっこをする事になろうとは!面白いことになったな、千!」
    「笑い事じゃありませんよ兄上!このままだと直ぐ追いつかれますよ⁉︎」
    半泣きで俺が叫ぶと兄上は体勢を低くして更に速度を上げました。
    「わ、あ、あ、あ、ぁ、ぁ、ぁ!」
    余りの速さに周囲の建物が次々に後ろへ吹き飛ばされていく様に見え、何処にも視線を合わせることが出来ず目を回してしまいそうになりました。
    街中で人混みの中を歩く人をぎりぎりの所でかわしつつ、兄上と父上は目にも止まらぬ速さで縦横無尽に駆け続けました。傍から見たら犬と少年を抱えた若い青年が仲睦まじく兄弟で犬の散歩をしていた所を土埃まみれの中年の酔っ払いに因縁をつけられて追い掛けられている様に見えなくも無いですが何しろ兄上と父上の速さは尋常では無いのでまず一般人の目に止まることはなく、何か得体の知れない物が疾風の様に自分の隣を通り過ぎて行った様に思うだけで昼間からこの通り家庭問題を起こしていてもあの人達あすこの煉獄の家のもんだよ、などと陰口を叩かれることも無いのです。
    「酒に呑まれても元柱の実力は健在とみた!よし‼︎」
    兄上は民家の角を曲がると高く飛び上がり、とある屋敷の中庭に着地して植え込みの中に身を隠しました。
    「兄上、此処は…!」
    「しっ、静かに。」
    兄上は口元に人差し指を立て耳を澄ませました。壁の向こうでビュンと風を切る音が聞こえたので多分父上が通り過ぎて行ったのでしょう。俺が兄上の腕を解いて顔を見上げると兄上も俺の顔を見てにこりと笑ったので、ようやく俺はほっと胸を撫で下ろしました。
    「うむ、行ったようだな。」
    兄上に抱かれたままの仔犬が兄上の顔をぺろ、と舐めました。
    「君も無事か、良かったな。ははっ、こら、そんなに顔を舐めるんじゃない。」
    兄上が仔犬の前足の両脇を手で持って後ろ足の方をぶらぶらさせた状態にすると茂みの中から立ち上がったので俺も後に続いて立ちました。
    「しかし、あんなに本気を出した父上を見たのは久々だったな。普段からあの位元気でいて欲しいものだが。」
    「はぁ…、まあ、怒っていなければ良いんですけどね。」
    俺は服に着いた葉っぱを払い落とすと兄上の髪に葉っぱが残っているのに気付きました。
    「兄上、髪に葉っぱが付いてます。」
    「ん?」
    俺が手を伸ばすと兄上は身体を折り曲げて顔を俺に近づけてきました。普段から見慣れている兄上の顔ではありますが間近で見せられるとつい心臓が跳ねそうになってしまうのは俺が兄上の心の内に感づいてる所為だと呼吸で心を落ち着かせながら手を伸ばし兄上の髪の葉っぱを取りました。兄上は俺の手の中の葉っぱを確認すると身体を起こしてありがとう、と言いました。
    「俺は父上がいつの日か絶対に立ち直ってくれると確信してるぞ、…君のおかげで元気な父上を見れた。」
    兄上は両手に持った仔犬を再度胸に抱くと頭を撫でました。仔犬を撫でる兄上を俺は微笑ましく思い眼を細めて見ていると兄上が何かを思い出した様に突然ぶはっと噴き出しました。仔犬を抱えながら顔を片手で覆うと、今度は兄上が前屈みでふるふるしながら笑いを堪えているのを見て俺もつい可笑しくなってしまったのですが後々聞いた所、犬に男の象徴を齧られた父上が土埃まみれで追いかけて来るのが、逃げながらも可笑しくて仕方なかった様です。
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