「な……」
「お、おかえりチェズレイ~♪」
玄関から遠いこの部屋でも、訪れたひとの纏った冷たい外気はモクマの肌をひやりとくすぐった。
対してチェズレイは、耳と指先を赤くしながら、驚いた猫みたいに目をまんまるにしている。
おおきな仕事を終えて、しばらくの休暇となり。二人で旅立ってから一番の長い休みを過ごすのに、相棒が招いてくれたのは、ずいぶん前から所有しているという雪国にあるお屋敷であった。クラシカルで豪奢な調度品で揃えられたその内装は古いながらも手入れがゆき届いており、気にせずくつろいでくださいと言われたが昨日は借りた猫状態で、しかしこのままじゃ向こうにも気を遣わせてしまうと、チェズレイが買い物に出掛けた隙に自分の荷物をがさがさ漁っていたのだけれど……、
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