藪の中へ帰る距離にして約51M。
広いホールのほぼ端と端。沢山の人の壁も越えそれだけ離れた場所にいても尚、チェズレイが不躾な物言いをされているのはよく分かった。言い寄られているのともまた違う、美しい工芸品を値踏みし且つ価値を下げようと難癖をつける質の悪い批評家特有の、人を見下した笑みだ。後ろ暗いパーティーに潜入するたび何度となく見てきた醜悪さ。
チェズレイが知力のみならずその美貌をも餌にして情報を得る手練は、幾度かその場を潰したりしているうちに段々と減っていた。俺が面白く思っていないのを察したのかもしれないし、特にヴィンウェイで俺の執着を真正面に受け取って以降は俺の心情が作戦に反映されることがかなり増えていた。
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