「あっ」
と、思った時にはもう遅かった。
楕円の形ですべすべで真っ白で、プラスチック製の頼りないベッドに行儀よく並んだ、十個の卵。が、冷蔵庫の定位置におさまろうとしたその時、つるりとモクマの手を滑り落ちて、
「ッ! ッだ~~~っ!!」
ご自慢の瞬発力でキャッチしようとするも、ごっちん。前方不注意のせいで冷蔵室の出っ張りに額をぶつけて、叫びと共に目の前に星が散った。
そうして常ならなんでも掴める守り手の指先はむなしく宙を掻き、結果……、
「うっ、そ、でしょ……」
額を押さえながら呆然としゃがみ込む。
未開封の透明なパックの中で、真っ白だった卵には、どれもこれもヒビが入ってしまっていた。しかも見たところ、ご丁寧に十個全部に。これではすぐにでも使わないとだめになってしまう。
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