小説の視点についてちょうど人とこういう話をする機会があったのでまとめてみた
なんか思い付いたら追加することもあるかもしれない
【一人称視点】
登場人物(Aとする)の頭に着けたアクションカメラで撮った映像+Aの思考や心理
Aの内面を深く掘り下げたい時、不明な点を多目に作りたい時、読者にAとの一体感や没入感を与えたい時などに有効
A以外の登場人物の心理は直接描写する事ができないので、客観的事実や他の人物の言動などからAや読者に推察させる描き方をする
A自身の表情やAの視界の外にある物・Aが居ない場所で起きた出来事なども直接は描けない
扱う範囲が狭いので書きやすいが、長くなってくるとダレがち
例:吾輩は猫である、ノルウェイの森など
例文:
別れを切り出されるなんて思ってもみなかった。僕は冷めたコーヒーとにらめっこしたまま、顔を上げることができない。つむじに無言の花子の視線がちくちくと突き刺さる。花子は今、情けなくうなだれるみじめな僕の姿を、どんな顔で眺めているのだろう。
【三人称一元視点】
登場人物(Bとする)の後ろ斜め上くらいから別のカメラマンが撮影した映像+B「だけ」の思考や心理
客観的な分かりやすさが欲しい時、不明な点を少し残しておきたい時などに有効
情景や動作の描写がカメラの引き具合次第である程度調整可能なので、物理的な位置関係や情景の説明などがしやすい
心理描写については一人称視点と同様だが、心理以外の部分で描ける範囲を一人称より広く取ることで、間接的な表現に使う材料を増やせる
色々書けるからってあんまり詰め込むとクドくなる
例:走れメロスなど 普通の小説は大体これ
例文:
突然別れ話を切り出された太郎は、冷めたコーヒーを見つめたまま顔を上げられずにいる。花子の視線につむじがちくちくと痛むような気がしたが、能面のような彼女の表情を直視することはできず、それゆえ、彼女の沈黙の裏にどんな感情が押し殺されているのかを窺い知ることもできない。
【三人称多元視点】
天から全てを俯瞰したもの 神の視点とも言う
複数人の動作や心理、より広い範囲の情景など、作者の頭の中にある物を同時に描写する
読者の視点や感情を移入させる先のコントロールが難しいため、こと小説においては高等技術
例:聖書 キノの旅もそうらしい
例文:
突然別れ話を切り出された太郎は、冷めたコーヒーを見つめたまま、「花子はどんな顔をしているだろう」と怯えながらも顔を上げられずにいる。花子は沈黙を保ちながら、能面のような表情で太郎のつむじを真っ直ぐに見つめている。うなだれることしかできないみじめな自分を情けなく思う太郎。花子も、そんな彼に心底惚れていた自分自身に情けなさを感じ、そしてまた呆れ果ててもいた。
視点を作品全体で統一する必要はないが、章ごとには統一しておいた方が読みやすい
章が存在しない短編なら最初から最後まで固定する方が無難
……と分かってはいても、作者は立ち位置が神なのでいつの間にか三人称多元視点になりがち
視点整理に最も重要なのは自制心
見えててもすぐに書かない、分かってても無理に書かない