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    momone3636

    @momone3636

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    momone3636

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    無表情に見えるけど実は感情豊かな恵くんの話。恵鈴夫婦の日常。鈴目線。完全に誰おま状態です。

    恵くんはとっても分かりやすい恵くんは『何を考えてるか分かりづらい人』らしい。前に家に遊びに来たヒロちゃんにそう言われた。無表情だし、口数も少ないし、ちゃんと旦那と意思疎通できてる?と。
    隣に座っている恵くんをチラリと盗み見た。恵くんはスマホで何かを見ているようで、その横顔はいつも通りの無表情だ。籍を入れたときにもらったお揃いの指輪が恵くんの左手の薬指に輝いていて、その大きな手でスイスイとスマホを操ってる。褐色の肌に端正な容姿、鋭い目は左側だけ前髪で隠れているため、私の位置からは表情がさらに読みづらくなっていた。
    天気のいい休日の朝、いつも通り2人で朝ごはんを作って食べて、今はソファーでまったりテレビを見ていた。恵くんは朝の番組にはあまり興味がないようでスマホをいじっており、その横顔をこっそり盗み見てる私、という構図だ。

    (横顔だけで、かっこいいのが分かってしまう・・・)

    目が隠れていようと、無表情であろうと、かっこいいものはかっこいい。毎日恵くんを見るたびに綺麗だなあと感心している。出会った頃と比べると身長もカミシンを超えるくらいに伸びているし、感情の出し方も昔と比べると随分変わったように思う。

    (えい)

    こっちを向いてほしという思いが、無意識に自分の手を動かしていた。人差し指をピンとたててそっと恵くんの頬をつつく。一切曇りのない肌がぷに、と弾力をもって指を受け止めてくれた。恵くんはピタリと動きをとめて、ゆっくりとこちらに顔を向ける。

    「あはは」

    恵くんがこっちを向いてくれた嬉しさと、私が人差し指をほっぺに刺したままだったため、少しだけ面白い顔になっていて思わず笑ってしまった。
    恵くんは相変わらず無表情で、チラリと頬をつついたままの私の指と、目の前で笑っている私を見ている。

    「やっとこっち向いてくれた」

    嬉しくてぷにぷにと頬をつつく私。恵くんは何も言わずに私を見ている。無表情だけど、彼は分かりにくいだけなのだ。だって今、彼は少しだけ嬉しそうに目を細めてる。ヒロちゃんや他の人には分からないらしい恵くんの機微は、私にはなぜか最初から丸わかりだった。他に分かる人といえば知くんくらいだろうか。
    目を細めて、頬をつつく指を享受してくれている恵くん。まるで猫みたいだなあと思いながら、かつて〈U〉で恐れられていた野獣が可愛くて仕方なくなり、気がすむまで存分に撫で回してしまった。わしゃわしゃと柔らかい髪が指をすり抜けていく。恵くんは何も言わずに私がやることを受け入れてくれてて、いつも通りのやりとりだった。撫ですぎてボサボサになってしまった恵くんの髪の毛は、鋭い両目を覆い隠してしまう。

    「髪のびたねえ」

    ひょいと前髪を上げると、恵くんの綺麗な目が顔を出した。恵くんの目が自分の前髪を見ようと上を向く。そうかな?と思っているのかもしれない。恵くんはあまり自分の髪型に興味がないみたいで、前は楽だからと伸ばしていたこともあった。シンプルな一つ結びもとても似合っていたけど、乾かすのが面倒になってしまったらしく、その後すごく短く切ってたなと懐かしい記憶が蘇る。短髪でも長髪でも、恵くんはなんでも似合ってしまうんだけど。
    柔らかい髪の毛が気持ちよくて触っていたら、恵くんが急に立ち上がった。どうしたんだろうと思って見ていると、寝室に入ってしまう。行っちゃった、と思ってぼんやりと寝室のドアを見てたら、すぐにガチャリとドアが空いた。

    「鈴さん」

    なんだか久しぶりに聞いた気がする恵くんの声。恵くんは私服に着替えていた。今日は2人で映画でも見に行こうと朝ごはんの時に話していたけど、もう外に出るの?と私は首をかしげてしまう。

    「映画、待ち合わせでもいいかな」

    彼の表情は全く変わらないため、きっと他の人なら真意を測りかねていただろう。でも私には見えてしまう。彼が何だかウキウキしていることを。

    「うん、分かった。いつもの映画館にお昼くらいに集合にする?」

    私の言葉に恵くんはコクコクと頷く。無表情だけど、なんとなく周りに花が飛んでるような気がする。分かりやすくてかわいいなあと思いつつ、何かを企んでいるらしい彼を見送った。

    「私も準備しよ」

    今日は何を着ようかな。飲みかけの紅茶を飲み干して寝室のクローゼットへ向かう。恵くんは何を企んであんなにワクワクしていたんだろうと考えて思わず笑ってしまった。彼は分かりにくいようで、とっても分かりやすい人なのだ。





    待ち合わせの時間の少し前に映画館へと向かった。入り口近くには待ち合わせや映画を見終わった人たちがまばらにいる。恵くんいるかなと辺りを見回し、そして見つけた瞬間に私は驚愕した。

    「け、恵くん!」

    思わず大声を出してしまった。数名になんだ?と視線を向けられつつ、発見した恵くんへと駆け寄る。

    「髪切ったの?」

    恵くんの髪の毛が、朝よりも短くなっている。左目に覆い被さっていた前髪は眉毛よりも上まで切られていて、綺麗なおでこが見えている。後ろの襟足あたりは刈っているのか、触ったら気持ちよさそうなことになっていた。綺麗にセットされた髪はとても彼に似合っている。そして端正な顔が全面に出てくる仕様変更のためか、周囲からの目線がすごい。前髪で目が隠れていた時からすごかったのに、今は誰もが二度見してしまう輝きを抑えきれていなかった。
    急な恵くんのイメチェンに驚きつつ、久しぶりの短髪姿にテンションがあがってしまった私は、無言でスマホを取り出してパシャリと無表情のままの彼を激写した。
    恵くんは写真を撮られたことに照れつつも、私を驚かせれたことに満足しているようだ。すごく似合ってる!と伝えると、さらに満足そうな空気を出してる。表情はほぼ変わらないが。

    「朝に髪が伸びてるって話をしたから?」

    聞くと彼は頷いた。前髪も邪魔だったしね、といった感じでうっすらと笑っている。たとえ数ミリの表情筋の違いでも、私にはしっかりと彼が笑顔なことが分かるのだ。

    「すごく似合ってる。かっこいいよ」

    そう伝えると視線を逸らす恵くん。そっけないように見えるこの態度も、ただただ照れているだけなのだから愛おしい。照れ隠しのためか、そっと私の手を取って歩き出した。映画の前にお昼を食べるのだろう。いつも映画に来ると立ち寄るお店に行くのかなと思って、私も握られた手をギュッと握り返して恵くんの隣を歩く。お店に着く手前で信号に引っかかった時、恵くんが私の耳に顔を寄せてボソリと呟いた。

    「鈴さん、今日もすごく綺麗」

    低い恵くんの声がするりと耳に入り込んできて、私は一瞬で顔が熱くなる。きっと真っ赤になってしまっただろう。この間、一緒に出かけた時に買った服を着てることに気づいてくれたのか、それとも仕事ではつけることのない口紅を久々に付けていたからなのか。いや、彼のことだから全部に気づいてそう言ってくれているのかもしれない。無表情で口数が多くない彼だけど、たまに話す言葉は爆弾のような威力があった。

    「び、びっくりする…」

    そう伝えるのが精一杯の私を、無表情ながらも楽しそうに見ている彼。その口角が少しだけ上げっていることは、世界中で私しか知らない。

    その後、映画の上映中に恵くんのジョリジョリになった襟足をずっと触っていた私と、そのせいであまり映画に集中できなかったらしい恵くんは、手を繋いで家に帰った。家に帰ってからもジョリジョリを触っていたら、もう髪切らないと彼はボヤいていて、私達は顔を見合わせて笑い合った。
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    Replies from the creator

    momone3636

    MOURNINGモブおじさんが鈴ちゃんを見守ってるだけの話です。途中まで。恵くんは全く出てきません。
    頑張れモブおじさんモブおじさんは決意した。必ず、鈴ちゃんの純真な笑顔を取り戻すと心に決めた。モブおじさんに名前はない。もちろん自分のことを長々と語る気もない。ただ目指すは鈴ちゃんの幸せ、鈴ちゃんの笑顔を再び目に焼き付けることであった。
    目の前で母親を亡くし泣き崩れる子どもから目が離せなくなったあの時から、モブおじさんの運命は決まってしまった。その子が同級生であり悪友であった内藤の子どもだと葬式の連絡をもらった時に知った。同級生の子ども。それはこんな辺境のど田舎では自分の子どもと言っても過言ではないのではないと思った。モブおじさんの生きる道が決まった瞬間だった。
    毎日太陽よりも早起きをして車を走らせた。まるで近所の住人かのように鈴ちゃんが住んでる地区一帯を清掃し、そのついでと言わんばかりに通学路をとぼとぼ歩いて学校へ行く鈴ちゃんにおはようと声をかけた。毎日毎日挨拶をした。体に対して大きなランドセルを背負った鈴ちゃんは会釈を返してくれたり、ある時は挨拶が戻ってくることもなく静かに泣きながら通り過ぎてしまったりした。おじさんはモブおじさんなので、雨の日も風の日も川が氾濫したときも朝の挨拶のためだけに早起きし、自分の健康管理には何より気をつかい、鈴ちゃんが通り過ぎて行かないかをチェックし続けた。
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