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    momone3636

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    momone3636

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    最後まで書ききれるか分からないためここに供養。鈴の頬の傷を恵くんに撫でてもらいたくて書き始めた話の導入です。ワンドロで書いた『秘密』の長いバージョン…。

    光る傷痕に指を這う最初に恵くんを意識してしまったのはいつだっけ。

    ふとそんなことを考え、化粧をしていた手が止まる。
    もうすぐ大学生なんだし化粧しようよ、と言うヒロちゃんと、私も一緒に選びたいと言うルカちゃんと地元で買った化粧品たち。当時からカバー力が高いと話題になっていたファンデーションの蓋を開けたまま、私は鏡を見つめた。
    見慣れた自分の顔。その左頬には数年前についた傷跡がうっすらと残っている。

    (まだ完全には消えてないな…)

    あの時、アンベイルされたあの日。
    恵くんと知くんに会いに行ったときにつけられた傷。
    大人の男性が本気の力で抉った頬の傷は、完治はしたものの未だに跡が残っていた。ファンデーションを塗れば隠れる程度なので全く気にしていなかったのだが、困ったこともある。

    恵くんを初めて異性として意識してしまったあの日。確か上京して2年目の夏だった。
    いやでも鮮明に思い出せてしまう。細長い指先が頬の傷を撫でた気がして、ぐうっと喉の奥で声にならない悲鳴を上げた。
    真っ赤になっていく顔をブンブン横に振り、止まっていた手をなんとか動かして化粧を終わらせる。高校生の時より髪も伸びて、ほんの少しだけ大人っぽくなった自分の顔が鏡に映っていた。

    「もう、忘れなきゃ」

    私の心境を映し出すように、その声は静かで悲しげに響く。大学に向かうために一人暮らしの部屋を出た。外は晴れていて、初夏だというのにすごい暑さだ。

    (あの日もこんな暑い日だったな)

    忘れようと思ったばかりなのに、思い出すのをやめられない。はぁと吐いた鈴のため息は、蝉の声によってかき消された。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    上京して2年目の夏、都会の暮らしにも慣れてきた頃。
    恵くんを初めて異性として見てしまったあの日。


    その日は恵くんと会う約束をしていた。

    「鈴さん。久しぶり」

    駅での待ち合わせにやってきた恵くんは、また背が伸びたように思う。おかしいな、出会った時は私よりも低かったのになと思いながら、久しぶりと手を振り返した。

    東京の大学に進学してから、再び恵くんと知くんと再会できた。2人は父親の虐待動画が広まったことでようやく児童相談所が動き、その後事情を知らされた祖父母の家に引き取られ穏やかに暮らしていると〈U〉で話してくれていた。簡単に会いにいける距離でないことと、アンベイルされ顔が全世界に知れ渡ってしまったこともあり、私が上京するまではネットのやりとりしかできていなかったけど、上京して久しぶりに会った恵くんと知くんは弾けんばかりの笑顔で出迎えてくれた。会いたかったという言葉とともに3人でしたハグは暖かく、涙が出るほど嬉しかったのを覚えてる。

    それから定期的に恵くんと知くんとは会うようになって、今日は珍しく恵くんと2人だけでの待ち合わせだった。

    「会いたかった、鈴さん」

    再会したあの時と同じように、恵くんが長い両腕を開いて近寄ってくる。本当に大人になったなぁと感慨深く、私も両腕を広げてそれに応えた。再会を喜ぶハグは“当たり前”となり、それは何年も続いた。変わったのは恵くんの体の大きさくらいだろうか。

    「あ、ごめん。僕汗かいてて」

    「私もだから気にしないで。本当毎日暑いよね」

    ぎゅうっと密着する手前で離れてしまった恵くん。心なしか顔もほんのり赤い気がする。もう見上げるほどの身長になっているから、影でそう見えるだけなのかもしれない。汗をかいてると言っていた恵くんからは柔軟剤のいい匂いがした。

    「先に涼しいところに入っちゃおうか」

    目星をつけていた店へと向かう。今日は知くんの誕生日プレゼントを探すための待ち合わせだった。

    「恵くん、高校はどう?」
    「特に変わりはないけど…」

    珍しく歯切れが悪い。はっきりと受け答えをする恵くんにしてはとても珍しいことだった。言い淀む恵くんをじいっと見つめると、ふいと顔をそらされてしまう。

    「恵くん本当に大丈夫?何か悩んでることがあるんじゃ…」

    「ありがとう鈴さん。でも本当に大丈夫だから。バイトで少し疲れてるのかも」

    こちらを安心させるように笑顔を見せてくるが、恵くんは自分の悩みや困っていることを隠す癖があった。自分が我慢すればいいという考え方が根付いてしまっているようで、私はそこへの踏み込み方をまだ模索中だ。出会った当初より仲良くなれているのは間違いないのだが、しつこく聞きすぎると恵くんが自分から離れて行ってしまうのではとほんの少しだけ怖かった。

    「そっか…。何かあったらいつでも言ってね」
    「うん。ありがとう」

    年齢よりも大人びいている笑顔。身長も伸びて今では見上げて話すのが当たり前になってしまっていた。整った容姿に、一度聞いたら忘れられない低い声。大人になるにつれて彼がいかに目を引く存在なのかが分かってしまう。今も黒いTシャツにジーンズというシンプルなコーディネートなのに、高校生とは思えない大人の色気のようなものが出ている気がする。
    夏の暑い道を避けるために地下街へと入った。歩く先々で恵くんを見た同世代の女の子達が、すごいイケメンがいる!と恵くんを見てはザワついていて、いつもこんな風に騒がれてるのかぁと少しだけ同情した。数年経ったので今は落ち着いているが、アンベイルされたばかりの頃は学校や街中で『ベルだ』と囁かれ噂され、居心地いいものではなかった。
    恵くん自身は注目を浴びていることに慣れているのか、まったく動じない。

    「鈴さん、どうしたの」

    隣を歩く恵くんをいつの間にか見つめてしまってしたらしい。何でもないよと言って、早くお店に行こうと話題を切り替えた。
    少しだけ考えてしまった。私たちはきっと恋人同士には見えないんだろうな、と。
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    Replies from the creator

    momone3636

    MOURNINGモブおじさんが鈴ちゃんを見守ってるだけの話です。途中まで。恵くんは全く出てきません。
    頑張れモブおじさんモブおじさんは決意した。必ず、鈴ちゃんの純真な笑顔を取り戻すと心に決めた。モブおじさんに名前はない。もちろん自分のことを長々と語る気もない。ただ目指すは鈴ちゃんの幸せ、鈴ちゃんの笑顔を再び目に焼き付けることであった。
    目の前で母親を亡くし泣き崩れる子どもから目が離せなくなったあの時から、モブおじさんの運命は決まってしまった。その子が同級生であり悪友であった内藤の子どもだと葬式の連絡をもらった時に知った。同級生の子ども。それはこんな辺境のど田舎では自分の子どもと言っても過言ではないのではないと思った。モブおじさんの生きる道が決まった瞬間だった。
    毎日太陽よりも早起きをして車を走らせた。まるで近所の住人かのように鈴ちゃんが住んでる地区一帯を清掃し、そのついでと言わんばかりに通学路をとぼとぼ歩いて学校へ行く鈴ちゃんにおはようと声をかけた。毎日毎日挨拶をした。体に対して大きなランドセルを背負った鈴ちゃんは会釈を返してくれたり、ある時は挨拶が戻ってくることもなく静かに泣きながら通り過ぎてしまったりした。おじさんはモブおじさんなので、雨の日も風の日も川が氾濫したときも朝の挨拶のためだけに早起きし、自分の健康管理には何より気をつかい、鈴ちゃんが通り過ぎて行かないかをチェックし続けた。
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