たん、たんと軽く何かを叩く音が聞こえて、パーシヴァルは窓を見上げる。水飛沫が散っていた。いつの間にか雨が降り出していたらしい。窓を開けて辺りを見渡し、脇に生えた樫の木が音の出どころだと検討をつける。葉に溜まった雫が溢れて、葉や幹を叩き音を立てているのだった。
明るい。空の高いところに、欠けた月が嵩を被っている。雨の一粒一粒が、光を受けて影を作り、空の中できらめいていた。
季節の上では春と呼んでも差し支えないだろうに、ひどく冷える夜だ。眠る前に少し読書をするつもりが、いつの間にやら日が変わろうとしていた。葡萄酒でも飲んで暖まるか、それとももう休むか。逡巡していると、控えめに扉がノックされた。
こんな夜更けにおとなう者を、パーシヴァルは一人しか知らない。
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