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    ゆりお

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    ゆりお

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    なこさん誕生日おめでと~~!! リクエストの「六弦から王城への今までの熱い言動、全部告白だろって他人に言われて自覚して真っ赤になっちゃう王城」です。

    ##灼カ

    六王/🔥🦛 お互い都内に実家がある身で家を出る選択肢はなく、大学時代は六弦が王城の家に泊まりにくることが多かった。王城としても賑やかだった寮暮らしから一転、静かな一人暮らしとなったから、人を迎えるのは楽しかった。
     卒業と共に、同じタイミングでインドに渡ると決まったときに、六弦から食事に誘われた。
     いつも外食をするなら定食屋とか居酒屋とかそんな飾らないところばかりだったのに、その時だけはちゃんとしたレストランで、六弦なんかスーツを着てくるものだからひどく驚いたのを覚えている。シャツの胸元がはち切れそうなのが可笑しくて、いつボタンが飛んでしまうかと気が気じゃなかった。
     食事が終わってデザートを待ってる時間、緊張した面持ちで切り出された。
    「向こうでは一緒に住まないか」
    「……なんで?」
     思えば、結構ひどいことを言ったと思う。
     さすがの六弦も信じられないものを見るような目でこっちを見つめていた。
     不意に、選抜の頃みんなでした会話を思い出した。中学生らしいバカみたいな話題だった。
     ——自分が女だったら、この中の誰と付き合いたい?
     言い出したのは多分山田あたりだ。大半が神畑か、もしくは外園と答えた気がする。将来性とか、性格とか、みんな口々に理由を言い合って笑った。
    「王城」
     その中で、六弦だけがそう答えた。なぜかと聞くと「料理が上手いから」と言ったので、みんなから理由が嫌だと猛反発を食らって狼狽えていた。
     ——将来性とそう変わらんだろう!
     ——うーん、なんか現実的すぎて嫌なんだよなぁ。
     ひどく懐かしくなった。あの頃から、自分たちはどう変わったのだろう。
     六弦は、真剣な顔で続けた。
    「お前と一緒にいたいからだが……駄目か?」
     嫌か、駄目か、と聞かれたらそうではない、と答えてきた。それが本心だったから。
     そしてそのままずるずると、ここまで来てしまった。そのことに自覚はある。

     店員に注文を告げてメニューを渡すと、王城は対面に座った高谷に問いかけた。
    「六弦は遅れてるの?」
    「え、今日は呼んでないっすけど」
     思わぬ返事に、王城はしばし言葉に詰まって瞬きを繰り返した。
    「……高谷くんと二人ってこと?」
    「そっすよ。嫌?」
    「嫌ってわけじゃないけど……なんで?」
     高谷のことはもちろん知っているし仲が悪いわけでもないが、それほど親しく付き合ってきたわけではない。今回久しぶりに彼から連絡が来たのも、六弦と会うついでに呼ばれたのだと思い込んでいた。
    「王城さんたちが帰ってきてるって聞いて、せっかくだったらあっちの話も聞きたいし!」
     高谷はまったく悪びれずににこにこと楽しそうに笑っている。
    「ほら、六弦さんがいたら聞けない話もあるデショ?」
     なんだか嫌な予感がするけれど、昼がまだだったから軽食も頼んでしまった。この店は珈琲がとても美味しいんですけど、食事もオススメですよ、とは高谷の談だ。
    「向こうで一緒に暮らしてるんすよね。どうですか? 六弦さん迷惑かけてない?」
    「別にそんな面白い話はないよ。六弦はあんまり家事をやったことがないから最初は大変だったけど。でも部屋は散らかさないから、それは助かってるかな。ああ、あと——すごい食べるからご飯作るの結構大変」
    「ふうん」
    「……何?」
     高谷が意味ありげに笑っているので、王城はくちびるを尖らせた。
    「王城さんてカバディしてないときはのほほんとしてて優しいってイメージだけど、六弦さんにはわりとそっけないですよね」
    「そうかな……?」
     あまり自覚はなかった。お冷に口をつけ、首を傾げる。
    「恋人にはわざと冷たくしちゃうタイプ?」
     危うく水が気管に入りそうになって、王城はむせ込んだ。口元をナプキンで拭いて、高谷のことをじろりと睨む。出会った頃から食えないタイプだったが、年月を重ねてより悪賢くなったと思う。
    「……そういう話をしにきたの?」
    「そりゃそうでしょ。六弦さんは何にも教えてくれないし。聞きたいな〜そういうの」
     確かに六弦は自分のことを言いふらさないタイプだ。けれども、余計なことを口にしないのと同じくらい、言わなくてもいいことを口にしそうなところはある。向こうに根掘り葉掘り聞かれるよりはマシかもしれない——そんなことを考えてしまう。
    「こういう話、あんまりしない?」
    「しないよ、もちろん」
    「井浦さんとも?」
    「しないよ!」
     強めに否定をする。距離が近いほど、そういう話は気恥ずかしい。ましてや、相手が相手だ。
    「ていうか別に、六弦とは付き合ってるわけじゃ……」
    「えっ!?」
     大きな目を見開いて、高谷は裏返った声を上げた。驚かされた猫のような表情のまま、こちらに乗り出し、声を潜めて囁く。
    「やることはやってるんですよね?」
     あけすけな物言いに、思わず顔が熱くなった。
    「だから、そういう話は……」
    「一緒に暮らしてて、そういう仲なのに、付き合ってないはないでしょ」
    「…………」
     王城は黙り込んだ。実際に、後ろめたいことがあったからだ。
     家に迎えたときも、キスをしたときも、初めてやることをやったときも。いつも、嫌ではないか、駄目ならそう言って欲しい——そういう言われ方をしてきた。
     そういう確認はいちいち取るくせに——
    「好きとか、付き合ってるとか、そういう話をしたことがないから……」
     こんなことを言っても詮ないとは分かってても、思わず王城はそう呟いていた。
     嫌か、駄目かと聞かれたら、そういうわけではないと答えてしまう。だって本当に、嫌ではなかったから。
    「それ言っちゃう?」
     高谷は呆れたように笑って見せた。頭の後ろで手を組み、懐かしそうに目を細める。
    「まあ確かにあのひと不器用だけど、今までの熱い言動、全部告白みたいなもんじゃないすか。俺が知ってるときからずーっとさ」
    「そ、そうかな」
    「そりゃそうでしょ。分かってないの、王城さんくらいだよ」
     わからないふりしてるだけかもしれないけど——と高谷は悪戯を思いついた子供のような、意地の悪い笑みを浮かべる。
    「まぁでも王城さんにその気がないなら、俺が六弦さんもらっちゃおうかな——」
    「それはダメ」
     おそらく高谷よりも、言った本人の方が驚いただろう。王城は目をまん丸にして高谷を見つめた。彼も全く同じような顔をしていた。
     そのまま、数秒が経ち——
    「それそれ!」
     弾けたように高谷が笑い出して、王城は机に突っ伏して——しばらく顔を上げることができなかった。
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