Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    ゆりお

    @yurio800

    毎日文章を書くぞ @yurio800

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 61

    ゆりお

    ☆quiet follow

    お題「伊達真司」

    ##灼カ

    伊達と水澄/灼カバ キッチンからは油が跳ねる音と、香ばしい匂いが届いている。湯気のせいで部屋はますます蒸し暑く、クーラーをフル回転させても汗が止まらなかった。
    「もうすぐできるぞ」
    「オッケー」
     伊達の声にこたえると、水澄はテーブルの上のものを端に寄せ、表面を軽くティッシュで拭いた。目についたリモコンを手に取ると、何気なくテレビをつける。
     瞬間、軽やかなブラスバンドと歓声が響いた。晴れ渡った青空、眩しいほどに照らされた芝生。一瞬、何かわからず水澄はぽかんとテレビを見つめた。画面が切り替わって、グラウンドの土を削るようにランナーが一塁に滑り込む。
     水澄は慌ててチャンネルを回すボタンを連打した。画面がチカチカと入れ替わり、最終的にお昼のニュースが流れる。
     それと同時に、伊達が皿に山盛りになったチャーハンを運んできた。
    「……気を使わなくていいんだぞ」
    「いや別に、そういうんじゃねえし」
     水澄は不自然なほど口早に答えた。伊達はチャーハンをテーブルの上に置き、水澄の横に胡坐をかく。
    「俺はニュースが見たかったんだよ」
    「お前が?」
     面白がるように笑われ、水澄は苦虫を噛み潰したような顔で口を閉ざした。
    「……で、何が見たかったんだ?」
    「て、天気とか」
     伊達は白々しく窓の外を見る。雲ひとつない、真っ青な空が広がっている。
    「いい天気だな」
    「うるせーな!」
     水澄は顔を真っ赤にして怒鳴った。伊達はリモコンを取ると、チャンネルのボタンを押した。再び、聞き覚えのあるブラスバンドの曲調。バッターボックスに入った打者が映る。真剣な顔で、投手を見つめているであろう横顔には、まだどこか幼さが残っている。自分たちと同じ高校生だった。
    「お、おい」
    「いいんだ。俺が見たい」
     伊達は気にした様子もなくそう言って、チャーハンを食べ出した。次に、マウンドの投手がアップになる。彼は大きく振りかぶり、一球目を投げた。少し外れ、ボールになる。
    「速い球だ」
    「ふうーん……」
     なんとなく気まずくて、水澄はちらちらとテレビに視線をやりつつスプーンを手に取った。次の球はストレートに飛び、バットに当たる。大きく外れて客席に飛び、ストライクのライトが灯った。
    「今打ったのに、ストライクになんの?」
    「お前、野球やったことないのか?」
     伊達は友人に呆れた視線を向けた。
    「昔体育でやったかもしんねーけど、野球ってややこしくね?」
    「そうだな。水澄には難しいかもしれん」
    「どういう意味だよ!」
     水澄は怒ったが、伊達は朗らかに笑った。
    「投手もな、ストレートだけじゃ勝てないんだ」
    「へえ」
    「野球をやめてからよくわかった」
    「……どういうこと?」
     意図が分からず、水澄は伊達を見つめた。
    「お前みたいな変化球がいてよかったって話だ」
     水澄はますます眉間に皺を寄せる。
    「お前の話はよくわかんねえ」
     その時、軽快な金属音が響き渡った。慌てて振り返ると、白球が青空に大きく弧を描いて飛んで行く。ホームランなら分かるぞ、と水澄が無邪気に騒ぐ。
     それが嬉しいとでもいうように、伊達も満足そうに笑っていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    mocha

    PASTドラケンが暇つぶしに作ったキュウリ製のバイクを持ち帰ったイヌピーが赤音のことを思い出してモヤモヤする話。同棲しているココイヌ。未来捏造、両片思いのすれ違いネタ。ココはイヌピーと付き合ってるつもりで、イヌピーはココに赤音の身代わりにされているつもりでいます。
    ココイヌ版ワンドロ・ワンライのお題「お盆」で書いたものです。
    天国からの乗り物 この時期にはキュウリを使って馬を作るものらしい。
     どこからかそんな話を聞いてきたらしい龍宮寺堅が、乾青宗に渡してきたのは馬ではなくバイクだった。キュウリを使って作ったバイクは、馬よりも早く死者に戻ってきてほしいという意味らしい。
     何をバカなことをと思ったが、キュウリのバイクを2台作りながら彼が思い浮かべている死者が誰なのかは察しがついたので、青宗は何も言わずにおいた。別れるはずもないタイミングで別れてしまったひとに、少しでも早く戻ってきてほしい、会いたいという気持ちは青宗にも理解ができる。
     だが理解はできるものの、複雑だった。姉には会いたいけれども会いたくない。今、九井一は青宗と同棲しているが、それはあくまで青宗が姉のような顔立ちのままで大人になったからだ。
    2952

    somakusanao

    DONEココのすきなおにぎりを考えていたら、いつのまにか書いてました。
    ドラケンとイヌピーの話。
    おにぎりは作らないことになったので、タイトル詐欺です。
    そうだ、おにぎりをつくろう「ドラケン、おにぎりの具はなにが好きだ?」
    「うーん。鮭かな」
    「鮭か……。作るの面倒くせぇな」
    「待て待て。オマエがオレに作るのか?」 

     言葉が圧倒的に足りていない同僚をソファーに座らせて説明を求めてみたところ、「ココが忙しそうだから、おにぎりでも作ってやろうと思って」と言う。それはいい。全然いい。九井はきっと喜ぶだろう。

    「なんでオレに聞くんだよ……」

     乾は九井にサプライズをして喜ばせたいんだろう。それは安易に想像できる。
     だがしかし、イヌピー同担拒否過激派九井が面倒くさい。きっと今もこの会話をどこかで聞いているはずだ。最初の頃は盗聴器盗撮器の類を躍起になって探していた龍宮寺だったが、ある時期に諦めた。ようするに九井は乾の声が聞こえて、乾の姿が見られればいいのだ。盗聴器と盗撮器の場所を固定にしてもらった。盗聴盗撮される側が指定するっていうのもなんだかなと思いながらも、あらかじめ場所を知ったことで龍宮寺の心の安定は保たれる。ちなみに乾は中学時代から九井につねに居場所を知られている生活をしているので、慣れ切っている。
    2132