30日CPチャレンジの19日目『正装』「あのさぁ、」
談話室で、ナツミはハジメが座っていた椅子の肘掛に腰を下ろした。ハジメは数占い学の宿題に集中しようとした。下のクズリュウが求めてくるのは、良い兆候とは言えない。
「クリスマス・ダンスパーティでお兄ちゃんと一緒になるつもり?」
「チアキと行くんだ」と、ぼんやりと答えた。
「そんなこと聞いてないよ」
ナツミは呆れた表情をしてため息をついた。
「ダンスパーティが開催されてる間、お兄ちゃんの周りにいるのかって聞いてんの」
ハジメは戸惑って、眉をひそめた。
「いや…たぶん?友達なんだから、そうだろうな。でもなんで、そんなに重要なのか?」
ハジメはちらりとナツミを見上げた。
「お前は行かないんだろう?」
ナツミは顔をしかめた。自分が先輩のお連れになるよう魅せることができなかったことを思い出せられ、苛立った。
「も、もう1週間もあるでしょう!?と・に・か・く、いい?マスコミがたくさん来るんだよ!あのクソグリフィンドール優等生たちの3人がトライウィザード・トーナメントのないクリスマス・ダンスパーティを開催するよう請願したんだから…」
彼女は一瞬、不機嫌に口ごもったが、次の一瞬でハジメを鋭い眼差しで睨みつけた。
「本当に言いたいのは!もしアンタがお兄ちゃんと一緒に映ってる可能性があったら、ダサくて馬鹿げた格好はごめんよ!クズリュウ家全員に恥をかかせることになるのよ!ドレスローブの『概念さえも』、ペコとイクサバに説明するよう頼んでるのも聞いたよ!」
ハジメは顔を赤くした。ハロウィンの頃にクリスマス・ダンスパーティの招待状が配られたとき、その難問を解決するために、とりわけ最も辛辣のない寮生を求めたんだ。
「それがどうした」と彼は呟いた。
「ダンスパーティに着ていく服装を見せて」
ナツミはそうはっきりと言った。
「ちゃんとした格好ができるか、確認しなきゃね」
ハジメは間を置いて、彼女の申し出を考えた。見せてもあるのが恥ずかしいとかそんなわけでもないのだが…。
「どうにかしてダンスパーティに関わりたいっていうわけ?」
今度はナツミが顔を赤らめ、いつも薔薇色の頬をさらに赤くした。
「そ、そんなことないでしょ!さっきも言ったよ!?身なり悪いマグル生まれが同じようにバカなお兄ちゃんと一緒にいることを見られたら困るんだ!いい!?」
ハジメは考え込むように口ずさんだ。
「もしかして、フユヒコもドレスローブについての意見を断ったんだろう?」
ナツミの赤面が深まった。
「あのな、ハ・ジ・メ。手伝ってあげるって言ってるの!」
ハジメは数占い学の教科書をパタンと閉じた。
「別に構わないよ。学校が貸し出してるローブの中から適当に選んだだけだから、どうせなら、なんとなく華やかにしたいかなぁと思ってたんだ。エノシマに頼むのはちょっと嫌だったんだな…」
「ちょっと、自分のドレスローブも着ないの?」
ナツミはうんざりしたように鼻にしわを寄せた。
「できるか。親に頼んでるなんて無理に決まってる」
ナツミはため息をつき、金髪をさっと払った。
「なら私が手伝うことにしてよかったね。さっ、何を持ってるか見てみよう」
―――――
「ふーん…」
まるで見えないハンガーからぶら下がっているような、空中に浮かぶ松葉色のローブの周りを、ナツミは歩き回った。服装を上下に眺め、時折手を伸ばして生地に触れ、杖の先で何重も持ち上げてあらゆる角度から見てみた。
「意外と悪くない。ちょっと地味だけど、似合ってる色だね」
ハジメは自分でも気づかないうちに止まっていた息を吐いた。ナツミに言わせれば、高い評価だ。
「じゃあ、そのローブでダンスパーティに行っても問題ないわけ?」
「そんなこと言ってない」
ナツミはウエストコートを摘まみながらそう嗤った。
「地味だって言ったでしょ?せめてこの辺に刺繍をまじなって、あとはベルトかな。最もいい色は…金?いや、銀かも…」
「金色で頼む」と、ハジメがすかさず切り出した。この数年、自分の寮に対して少しは好意的になったかもしれないが、クリスマス・ダンスパーティにサラザール・スリザリンみたいな格好で出席するのはあまり乗り気はないんだ。
ナツミは眉をひそめてから、ローブに目を戻した。
「金色、ね?」
「あ、うん。いい色だよ」
「ふーん」
ナツミはローブの袖を取り、二本の指で感触を確かめた。
「お兄ちゃんは金色のローブで参加するらしいよ」
ハジメは顔を紅潮させた。なんでそこでフユヒコの話を出すのか?
「ああ…。そうなのか?」
「うん。アンタたち、いいコンビになりそうね」
「ダンスパーティはチアキと行くって言っただろう」
「そしてフユヒコはペコと行くんだ」
いたずらっぽく目を輝かせながら、彼を見上げた。
「あのね、なんでお兄ちゃんを相手だと言ってると思い込んでるの?」
ハジメの心臓は喉に飛び込んできた。
「そんな…思い込んだわけが…」
「それなのにチアキチアキって主張しっぱなしなんだね。あんたの相手なんてどうでもいいじゃん」
一歩下がったナツミは、大げさに震えながら自分の体に腕を巻いた。
「げっ、アンタとお兄ちゃんのことそんな風に思ってるだけでキモすぎるよ。ちょっと貸してあげるものを持ってくるから、その間にしっかりしろ!」
彼女は杖を振り、ローブを宙に畳ませてから談話室のソファに置き、女子寮への廊下へ向かった。
ハジメは顔をしかめながら、彼女が去っていくのを見送った。しっかりしろってなんだろう。フユヒコはただの親友で、ナツミの方が早合点していたんだ。
彼はローブの横でソファにへたり込み、裾に指をかけ、そんな金色の刺繍が一番似合うかイメージしてみた。
金色…
ソファに頭を預けて、静かにうめき声をあげた。仕方なく想像してしまうんだ。自分の目の色のローブを着るフユヒコの姿を。
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グリフィンドール優等生たちの3人=英語版でも曖昧ですが、74期生を示す(ホグワーツの7年生)