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    906

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    906

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    伽羅ちゃんが年長さんくらいの謎時空ネタ2作目。
    何でも許せる方向けの遅刻クリスマス話。

    かっこいい長谷部が好きな方には向かない傾向があります。

    サンタクロースとからちゃんそれは師走のある日のことーーーー


    「伽羅ちゃん?」
    光忠は縁側で思いつめた顔で絵本を見つめる大倶利伽羅を見つけた。
    手に持っている絵本は、図書館から借りてきたのだろうか。確か今日の午前中は短刀たちと図書館へ行っていたはずだ。
    「光忠。」
    手元の絵本から視線を上げると、ちいさな大倶利伽羅は、眉間にきゅっと皺を寄せて尋ねた。
    「本丸にえんとつはあるだろうか。」


    「サンタクロース?」
    本丸内でも特に賑やかな伊達組の部屋であるが、今日はとびきり騒がしかった。
    ちいさな大倶利伽羅を囲む面々は、聞きなれないその言葉に一様に首をかしげた。
    「クリスマスに、プレゼントをくれるんだ。」
    「栗をすます?ってのはなんなんだ??光坊。」
    「クリスマスだぜ、鶴さん。確か切支丹のお祭りだよな、みっちゃん!」
    「ん-。確かそうだね。僕もあまり詳しくはないんだけど…」
    「欧羅巴から来る、そりに乗ったおじいさんがいい子に贈り物をしてくれる日じゃなかったかな。」
    「さすがみっちゃん!よく知ってるな!」
    光忠の説明で、鶴丸は年中行事や祭りの類だと理解できたようだ。
    「やぁ、そんな遠くからわざわざやってくるなんて、世の中にはまだまだ驚きがあるもんだなぁ。」
    鶴丸は楽しそうに笑い出し、大倶利伽羅に尋ねた。
    「で、伽羅坊はそのサンタをどうしたいんだ?」
    問われた大倶利伽羅は、決意の籠った瞳で鶴丸を見上げて言った。
    「サンタをおびき寄せて、プレゼントをもらう。」
    「「「おびき寄せる???」」」
    光忠も貞宗も大倶利伽羅の一言に驚き、鶴丸と声が重なる。
    大倶利伽羅は真剣だ。
    「サンタはけむりが好きらしい。モクモクしてると入ってくるんだそうだ。」
    「こりゃ驚き、というより呆れるな。どの辺がいい子なんだ、それ。」
    「しっ!鶴さん黙ってて。伽羅ちゃんが傷つくでしょ!」
    大倶利伽羅の言葉に呆れている鶴丸の態度を、光忠はたしなめる。
    「光坊は24時間伽羅坊ファーストだなぁ。」
    ふぅ。とため息をつく鶴丸に尚も言い募ろうとする光忠を横目に、今度は貞宗が大倶利伽羅に尋ねた。
    「つまりはサンタさんからプレゼントをもらいたいってことだな!でもよぉ、伽羅。サンタさんに何をお願いするんだ?」
    「すまほろとむだ。」
    キリっとした視線を貞宗に投げ、大倶利伽羅は即答した。
    が、初めて聞く単語に、またもや大人たちは揃って首をかしげる。
    「スマホ?あの潜入作戦の時とかに使ったやつか?」
    「ちがう!すまほろとむだ!すごいんだぞ、でぃあるがを捕まえるんだ。ラプラスもいるんだ。あとな、リザードンも捕まえられるんだ。」
    「うん、伽羅ちゃん龍ばっかりだね。」
    「ちがう。ラプラスは龍じゃない。」
    「え、そうなの?ごめんね。」
    「みっちゃん、大切なのはそこじゃないぜ!」
    貞宗が光忠の見当違いな物言いに思わず突っ込む。
    「それってポケモンてやつだろ?ポケモンを捕まえる、あー、おもちゃ?なのか。」
    貞宗の的確な質問に、大倶利伽羅はこくん、と頷いた。

    「ポケモン、おれも捕まえたい…」 

    その一言で十分だった。大倶利伽羅の背に合わせ、屈んで話を聞いてた3人が立ち上がる。

    その時、大倶利伽羅を取り囲む面々が頭浮かんだことはただ一つ。

    なんとしてもスマホロトムを手に入れる!

    常に連携のよい伊達の男士たちだが、こと、ちいさな大倶利伽羅に関する事では、彼らの連携能力はさらに磨きがかかるのだった。

    クリスマスまであと3日。伊達組の3人による極秘任務、『サンタのプレゼントを大倶利伽羅に!』大作戦が始動したのであった。

    そんな動きをどこから察知したのか、へし切長谷部が伊達組の部屋を訪ねてきた。
    光忠が応対し用向きを尋ねる中、サンタクロースの絵本を熱心に読んでいた大倶利伽羅は、長谷部の来訪にしばらく気づかなかった。
    「大倶利伽羅。」
    長谷部は大倶利伽羅を呼ぶと、可愛らしい絵本と、分厚い辞書のような本を取り出した。
    「大倶利伽羅。そもそもクリスマスというのは、プレゼントをもらえるなんて、そんなものではなくてな、」
    長谷部は困惑するちいさな大倶利伽羅に絵本を渡すと、自らは分厚い本を開き、鬼気迫る眼差しでクリスマスの起源について、語り始めようとしていた。
    「誰だよ、長谷部にクリスマスのこと言いつけたやつ。」
    貞宗がむぅ、と不服そうに顔をしかめる。
    光忠は、大倶利伽羅が困った様子でいるのを見て言い放った。
    「長谷部くんがいるとややこしくなるから、ごめん貞ちゃん、ちょっと返してきて。」
    「OK、OK!貞ちゃんにお任せだぜ!」
    常にない笑顔で光忠が言葉を発するやいなや、どこにそんな力があるのか、貞宗はひょいっと長谷部を抱え上げ、
    「長谷部!なんだか知らねえが、もっとクリスマスを楽しもうぜ!」
    と言いながら部屋から出て行った。

    「伽羅ちゃん。」
    光忠が長谷部の愚行をフォローしようと声をかけると、大倶利伽羅はしょんぼりとした顔でうつむいていた。
    「光忠。おれはわるい子だろうか。」
    思ってもいなかった言葉に、光忠は慌てて言葉を探す。
    「なんで?伽羅ちゃんはお手伝いもできるし、字も書けるし、とってもいい子だよ?」
    「今日の公園でがサンタさんが昨日来たと言っていた子がいた。おれはいい子じゃないから来ないのだろうか。」
    そういって膝を抱えてしまった。
    今日は25日だ。家庭によっては24日の夜にプレゼントが届けられる場合もあるらしい。光忠は付け焼刃で得た知識で、大倶利伽羅の言う状況を推測した。
    「伽羅ちゃん、それはきっとあわてんぼうのサンタクロースだね。」
    「あわてんぼう?」
    睫毛をしばたたかせながら、大倶利伽羅小首をかしげる。
    「クリスマスは25日でしょ。きっと今夜、サンタさんは来てくれるよ。」


    どこも品切れです。と断られ続け、一縷の望みをかけて向かったショッピングモールで、鶴丸は最後のひとつだったスマホロトムをなんとか確保して戻ってきた。
    だが、綺麗にラッピングされたプレゼントを眺め、伊達男たちは悩んでいた。

    どうやってサンタさんからのプレゼントを渡すのだろうか。

    おもむろに光忠が言葉を発した。
    「…サンタは鶴さんがやるんでしょ?」
    鶴丸は飄々とした態度を崩すことなく、光忠に返す。
    「こいつは驚きだ。なんで俺がご指名なんだ?」
    「え?だって白いし。」
    光忠が当然だろうという表情で言葉を放つ。
    「うん。爺だしなぁ。」
    光忠に同意する貞宗の言葉が鶴丸の心を抉った。
    「ちょっと前から思ってたんだが、坊たちなかなか鶴さんに優しくないよな。」
    「「いやいや、愛してるよ(ぜ)鶴さん。だからサンタ役、頼むよ(ぜ)!!」」
    普段の二人からは直接示される機会のない愛情表現に、鶴丸の心が揺れる。
    ちょっといいところを見せたい、そんな爺心をくすぐるのがなんて上手いんだ、きみたち!
    「いや、駄目だ!坊たち、考えてもみろ。伽羅坊は誰よりも賢い子だ。俺や坊たちが変装したくらいじゃ、すぐに正体を見破るだろう。」
    鶴丸は何とか誘惑を振り切った。
    「それではあまりにも驚きに欠ける。」
    「確かにそうだね。伽羅ちゃんは賢いから、見破っちゃうよね。」
    「だな!」
    「そうだろう?そこで、だ。」
    鶴丸は己の作戦について、光忠と貞宗に打ち明ける。

    夕食で集まる際、大倶利伽羅が食事部屋に入ったのを確認して、廊下にプレゼントを置いておく。
    食事を終えた大倶利伽羅を先頭に部屋を出れば、襖を開けた大倶利伽羅がプレゼントを発見する、という筋書きだ。

    「ちょっと単純すぎじゃねぇの?しかも地味…」
    「いや。シンプルイズベスト、ってやつだ。」
    「でも誰宛のプレゼントかわからなくて、他の子たちが開けちゃったりしないかなぁ。」
    「そこは安心だぜ、光坊。本丸中の刀剣男士たちに伽羅坊のクリスマスについて伝令を回してあるからな。」
    「どうりで長谷部くんが知ってるわけだね。」昼の出来事を思い出し、光忠はげんなりとした。
    「長谷部はちゃぁんと、引き渡してきたぜ!」
    貞宗が胸を張る。
    「とにかく、失敗は許されん。大舞台の始まりだ!伽羅坊に驚きの結果をもたらそう。」

    クリスマスという祝い事の日だと知ったからか、本丸内の男士たちもどこか浮足立っているような雰囲気で食事部屋は賑わっていた。

    作戦通り、大倶利伽羅を連れて食事部屋に到着した伊達組一行は、こっそりと廊下にプレゼントを置くことに成功し、特別メニューだという今夜の食事を楽しんでいた。

    食事もほぼ終え、片付けてそろそろ部屋を出ようとしたその時だった。

    ガタン!

    廊下で大きな物音が聞こえた。
    伊達組の3人が瞬時に目で会話をする。

    ーおうおう、どうしたんだよ!
    ーこんな驚きの演出なんて俺はしてないぜ。頼んだのは光坊か?
    ー違うよ!この時間はみんなここに集まるから、外には誰もいないはずだよ。って、プレゼントは無事かな。

    一瞬でそこまで会話した3人の視界に、弾かれたように外廊下に通じる襖に走る大倶利伽羅の姿が見えた。
    「伽羅ちゃん!」
    光忠は大倶利伽羅を止めようとしたが、起動力は大倶利伽羅の方が上だ。
    そのまま襖へ辿り着いた大倶利伽羅は、たん!と襖を勢いよく開け放った。
    そこにはー


    「光忠。」
    しばしの沈黙のあと、大倶利伽羅は小さく光忠を呼んだ。
    「なあに?伽羅ちゃん。」
    うっすらと桜が舞う小さな背中に、光忠は優しく声をかける。
    「プレゼント、だ。」
    プレゼントの上に桜を降らしながら、大倶利伽羅はその前に跪いた。
    「あ!ほんとだね。伽羅ちゃんいい子にしてたから、サンタさん来てくれたんだね。」
    光忠の声を背に受けながら、大倶利伽羅はじっとプレゼントを眺めていた。
    おもむろにプレゼントを持ち上げると、ゆっくりと箱を抱きしめている。そして何かを発見したように顔を上げ、
    「サンタさんの匂いがする。」
    そう言ってふんわりと笑った。

    喜びでほっぺたまでぱんぱんに膨らんだ大倶利伽羅の姿に、食事部屋には大層身悶える可愛いもの好きの男士たちの姿が多数あったとかなかったとか。
    あまりに可愛らしいこのエピソードは、ちいさな大倶利伽羅が成長した後も、度々伊達組の酒の肴となり、大倶利伽羅を辟易とさせることになる。


    一方、食事部屋に続く廊下に謎の人影を発見したのは日本号だった。
    「おい、長谷部。」
    「お、俺は長谷部ではない…」
    長谷部は、日本号の一言に動揺を隠せない様子で返答した。
    「坊主が泣くから、それで登場するのは辞めろ。」
    こどもの夢を壊しかけたことを貞宗に諭されたことを、長谷部は重く受け止めていた。何か詫びを、と大倶利伽羅が欲しがっていたと聞いたおもちゃを手に、一世一代の仮装でプレゼントを手渡そうとしていた。
    サンタクロースを模して、ひげを付けた真っ赤な羽織袴姿で。
    「普通にプレゼント渡してやりゃ喜ぶだろ。」
    「だが…」
    「あとそれ、坊主が言ってたやつとは違う玩具だけどなぁ。」
    「なんだと…!……なんという体たらく。論外だな。」
    肩を落とし、自らの不甲斐なさに憤る長谷部に、日本号はちょっとだけ気の毒な気持ちになる。こいつはホント、不器用で報われない。
    「反省会か?いいぜ、付き合ってやるよ」
    「お前が飲みたいだけだろう。」
    こうして、大倶利伽羅のトラウマになりかねない衝撃的なサンタクロースの登場は回避されたのであった。

    後日、詫びとともに手渡したそのプレゼントは、「サンタさんからのプレゼントと一緒に遊べるやつだ」とたいそう大倶利伽羅に喜ばれ、長谷部は伊達組からのお叱りを免れることとなった。




    おしまい。
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    906

    DONEちゅきこさんの【Dom/Subユニバース】『COLORS』シリーズ設定の獅子王×加州SSです。本編メインカプは🍯🌰ですが、こちらは🌰の高校の先輩獅子王くんと🍯さんの同僚加州くんの話。
    チラチラ本編のネタばれアリ。また、D/S初心者の勝手な解釈がてんこ盛りの何でも許せる方向けの極みですので、自衛お願いたします。

    ちゅきこさん、いつもありがとうございます✨
    カサナル、ココロ「痛っ・・・!」
    思わす体がこわばったのは、恋人にも伝わっただろう。
    幾度目になるかわからぬお泊りの夜。
    獅子王は今夜こそは、と内心期待をかけて、加州清光の家へ足を踏み入れた。

    一目惚れから始まった交際はそろそろ半年になる。
    お互い、いい大人だ。もう一段階踏み込んだ関係になっても何も問題はない。そう思っていた。

    何の予定もない週末を控えた金曜日。獅子王は意気揚々と加州のマンションに現れた。手土産にデパ地下のデリでつまみを買ってきた。加州が好きだと言っていたブラッスリーのバゲットは、獅子王の会社からここまでの道のりにあるので、毎週立ち寄ってしまう。
    出迎えた加州が用意した、青江にもらったというチーズをバゲットに合わせ、加州が最近気に入っているという蜂蜜ワインを相伴に預かる。こっくりとした味わいもいいが、やっぱビールが一番だ!と宣うと、呆れたような、それでいて優しさのにじみ出る笑みを浮かべる加州。いつもと変わらない夜だった。
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