バッドガールズ・ゴー・エブリウェア 柴柚葉は、母に絵本を読んでもらった思い出を、今でも大切にしていた。
子どものときの柚葉は、毎日放課後になると、まっすぐに母の病院に向かい、母と一緒に過ごしていた。母がいる場所が柚葉の帰りたいところだった。だから柚葉は夜、母の病室から出て家に戻らなければならないときが嫌いだった。母もそれを分かっていたようだった。
小学校の学年が上がり、柚葉が漢字を沢山読めるようになっても、母は柚葉に「絵本を読んであげようか」と言ってくれた。そういうとき、母はベットで上半身を起こし、自分の膝に柚葉を招いて小さな背中を抱きしめるようにしながら、絵本を読んでくれた。
背中に母の体温を感じながら絵本を見つめると、頭の上から母の柔らかな声が降ってくる。
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