賭けの試し「なぁ、懐かしいん買ったけぇちょっと遊ばん?」
そういって南方の家で酒を飲んでいた門倉が見せてきたのは誰もが一度は遊んだことのあるボードゲームであった。盤面を白に黒にと変えるそのゲームはリバーシだとかオセロだとか言われるもので、当の南方も小学生の頃に親や兄弟と遊んだ記憶がある。大人になってからは久しくやっていないこともあって懐かしい。
「ええけど、どうしたん?」
「んー、今度の賭けに使えんか思うて」
都合のいい実験台かなどと苦笑しながらもテーブルの上の酒を脇に避け、ボードや石を広げる場所を確保した。そこに門倉が乱雑にボードを置くと石の入ったケースを一つ南方の方へ寄越す。
南方はそこから石を取り出すと白の面を上にして斜めに二つ置いた。示し合わせたように門倉が黒の面を上にして石を置く。この色の違いが表の仕事の対立関係のようでどこか面白い。
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