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    Hyiot_kbuch

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    11.1 犬の日なのでポメガバ門南。
    書き終わって気付いたけど犬の出番めっちゃ少ないです。

    #門南
    menan

    初めての自宅訪問 もはや習慣ともなった週に一度の門倉との約束の日。そんな日に南方は初めて門倉の家に邪魔することとなった。

     南方恭次はポメガである。
     ポメガとはなにか。極限まで疲労が溜まるとポメラニアンになってしまう人類のことだ。人口の一割程度かポメガだと言われるこの世界。その一割に属するのが南方である。
     そんな南方が形式的に飼われてやってるのが門倉である。正確には飼われるという名目の元、ポメラニアンとなったりなりそうな際に人へ戻る手助けをしてもらうような関係だ。
     その日もいつものように限界を迎える前に南方の家で会う約束をしていたのだが、当日の朝になって急に門倉から断りの連絡が来た。聞けば迷宮での古傷のせいで体調が悪いとのことらしい。
     気まぐれを起こした南方は門倉へとメッセージを送る。
     ”見舞いにでも行ってやろうか”
     すると門倉からさほど時間をおかず返事が返ってきた。
     ”食いもん買ってこい”
     まさか承諾されるとは思わなかった。そう南方が驚いているうちにご丁寧に門倉の家の住所が送られてきた。

    「あいつもええとこ住んどるなぁ……」
     降り立った駅直結のスーパーで色々と食料を買い込んだ袋を両手に、門倉の送った住所の建物の前に立つ。そこは俗にタワマンと呼ばれるようなもので広いエントランスにはコンシェルジュが常駐しているようなところだ。
     そんな所の高層階に住んでいるというのだから体調を崩している今、さぞかし買い物に行くのが面倒なことだろう。弱っている所を見せたがらないタイプだと思っていたが、通りで素直に呼ばれるわけだと南方は一人納得する。
     それでも頼られたことの嬉しさから思わず緩みかけた口元を戻し、エントランスへと入る。早速コンシェルジュへと声をかけ門倉の家へ行きたい旨を話すと、確認のためと少し待たされたあと門倉本人から問題ないという返事を貰ったのかエレベーターへ乗るためのカードキーが手渡された。
     なかなか来なかったエレベーターに乗り込み、カードキーをかざして門倉の住むフロアのみが点灯したエレベーターのボタンを押す。目的階に到着するのを待つ間、携帯を確認すれば門倉からのメッセージが届いていた。
     ”玄関の鍵開いてるから勝手に入ってこい”
     出迎えもする気が無い程度には弱っているのか気を許されてるのか。そんなことを考えているうちにエレベーターが到着したため南方は荷物を抱え直すとフロアに降り立つ。
     いくつかある扉のうち、門倉の家のものへ手をかけた。中へ入ると存外整頓された玄関だ。
    「門倉ー、邪魔すんぞ」
     南方がそう声をかければ寝室と思しき場所から返事ともとれるような呻き声が聞こえる。とりあえず門倉の様子を見るかと声のした部屋のドアを軽くノックした。
    「入ってええか?」
    「……んー」
     肯定か否定かわからない返事に苦笑しながらも、都合のいい方に受け取った南方はそっとドアを開ける。そこにはクイーンサイズのベッドの中心で長い手足を折りたたんで布団にくるまった門倉がいた。南方が部屋に入ってくると布団の中からもぞもぞと顔を出す。
    「調子はどうじゃ」
    「あー……まだちと頭痛い」
     南方が問いかければ起きてからろくに飲み食いしてないのか、少し掠れた声で答えが返ってきた。袋から適当に経口補水液のペットボトルを取り出すとキャップを緩めて門倉へと手渡す。ゆっくりと上体を起こした門倉は一口飲むと南方へ突き返した。
    「……まずい」
     とりあえず脱水症状などは起こしてはなさそうだ。突き返されたペットボトルをベッドサイドに置く。
    「なんか食うか?」
    「食う」
     それなりに腹は減っていたらしい。何を買ってきたんだと視線で訴える門倉に南方は手軽に食べれそうなものをいくつか並べてみせる。
    「ゼリーじゃろ、ヨーグルトじゃろ、あとアイスじゃな」
    「……甘いのしかないんか」
    「他にも買うてきとるけどすぐ食えそうなんはこんくらいかの」
     並んだ甘く冷たいものばかりの選択肢に門倉は眉を寄せる。嫌いという程ではないが普段は好きこのんで食べないラインナップのようで、少し悩んだあと十秒でチャージできると謳うゼリー飲料を手に取っていた。開けろと渡してくるのでキャップを外して門倉へと返す。
     南方は門倉が手に取らなかったものを袋に戻しながら門倉へと尋ねた。
    「冷蔵庫かりてもええ?」
    「ええよ」
     アイスが選択肢にあった時点で察してはいたのだろう。すぐに承諾の言葉が返ってきた。先程の経口補水液以外にもいくつかの飲料を残すと、全て袋に戻し終えた南方は袋を両手に持ち、立ち上がった。部屋を出る前にもう一つだけ質問を投げる。
    「昼は雑炊とうどん、どっちがええ?」
    「……うどん」
    「わかった。ほいじゃあ台所使わせてもらうけぇの。なんかあったら電話して」
     南方はそれだけ言うと門倉の寝室を後にしてキッチンへと向かった。

     キッチンへ到着すると早速許可を貰ったのだからと冷蔵庫を開ける。自炊はほとんどしないのか酒といくつかの調味料があるだけのスカスカな冷蔵庫につい笑ってしまう。自分も似たようなもののため人のことをとやかく言えないのは棚に上げておく。
     手早く冷蔵庫と冷凍庫に食品をしまえば、ちらりと時計を確認する。時刻は10時過ぎ、昼食を用意するにはだいぶ早い時間だ。
     朝から買い物してきたのだし少しくらい休んでもいいだろうと買ってきたアイスをひとつ手に取り、勝手にリビングのソファーに座る。これから食べようかというタイミングで門倉からの電話が鳴った。
    「もしもし、どうした?」
    『冷蔵庫に物入れんのにどんだけ時間かかっとんじゃ』
     開口一番の文句から始まる門倉の言葉を要約すれば、まだ昼飯には早いから部屋に戻ってきて相手をしろとのことだった。仕方なくまだ手をつけてなかったアイスを冷凍庫に戻すと門倉の寝室へと戻る。
    「……遅い」
    「すまんすまん」
     寝るのであれば邪魔になるかと思ってと言い訳する南方の言葉を無視し門倉は拗ねたままだ。
    「……すまん思うとるなら犬になって添い寝しぃ」
     それでもしばらく機嫌をとるよう話しかければ、門倉がそんな横暴なことを言ってくる。しかし南方にとってこれはありがたい申し出だ。隠してはいたものの疲れがそれなりに溜まっていた南方は、門倉の言葉に甘えてその身をポメラニアンへと変えたのだった。

    「きゅうん……?」
     着ていた服の中から這い出すと、これでいいかとばかりにベッドへと飛び乗る。近くに来いとばかりに門倉が伸ばしてきた手に、南方は隣に寝転ぶと好きに触らせてやることにした。本調子ではないとはいえ、いつも通りの甘やかす手つきについつい目を細めてしっぽを揺らす。その手つきから門倉が限界が近い南方を気遣って、犬の姿での添い寝を言い出したであろうことがなんとなく伝わってきた。なんやかんや言いながらも面倒見は良い奴なのだ。
     しばらく撫でられていると、門倉の方も動物特有の温かさが心地いいのかとうとうととしてくる。門倉の体調不良も疲労が原因のものなのかもしれない。ポメラニアンのこの姿は南方にとっては煩わしいものでもあるが、門倉が癒されてくれるのであれば存外悪くはない。
     そうして門倉が南方を撫でる手の動きが徐々にゆっくりとなり最後には止まった。耳をぴんと立てると聞こえてくる寝息に、己のふわふわの腹の上に置かれた暖かい手。その心地良さに南方も気づけばそのまま門倉の隣で眠ってしまったのであった。

     この後、昼過ぎに空腹で起きた門倉がいつの間に人の姿へと戻っていた南方に驚き、寝起き早々ベッドから蹴り落としたり、案外美味い南方の手料理にまた作って欲しいと強請ったり、なんやかんや平和な休日を堪能したのだった。
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