死神キースとキョンシージュニア「あー……面倒だな……」
開口一番にこんなことを言っているこの男……キースは死神である。
死神といっても色々あるが基本彷徨う魂を狩るのが仕事だ。
この辺りには人の形をした異形が多いとの口煩い同期からの報告を受けて仕方なく来てみればすぐにそういうやつに遭遇してしまった。
「おいお前」
月が大きく出ている夜の墓地の隅のほうでうずくまっている人影。人影に声をかけるとこちらを振り返る。
ギターを背負った普通の人間そうに見える、この地域には珍しい金髪が混ざった少年だが額にはみっちり何かが書かれた札。キョンシーで間違いないだろう。
「……?」
「あー、言葉通じないんだったか?」
良く見たら双方の目の色が違う。珍しいな、と思いつつ仕事はちゃんとしなければと思い出し
「まあ悪いが札で生き返ろうと死んだ魂を狩るのは俺の仕事なんでね」
浮かせた死神の鎌を向ける。
「さくっと送ってやってやるから安心しな」
「……」
キョンシーというものは通常目があまり見えないとされているけれど目の前のコイツは双方違う色の瞳であまりにもまっすぐこちらを視た、気がしたので。
「……まあ経過観察ってやつだよな、うんうん」
「??」
「いーや、なんでもねえよ」
あの後なんとか同期に説得してしばらく様子見という名目で連れているのだけど随分懐かれたな、と思う。
そもそもキョンシーは意思疎通ができるような会話はできない、はずだがなぜか通じているし。
「とりあえずこんなもんかね。はあ……」
「早く、帰ろ、ぜ!」
「はいはい……ほら運んでやるから下手に動くなよ」
「だ、大丈夫、だ!」
人より目が見えておらず喋りの方もやや片言なだけでそれ以外ほぼ普通の人間と何も変わらないコイツも今ではすっかり慣れたものだ。
「行くぞ〜」
「キース!!」