「大したことはありません」「ただいま〜……」
「ただいま戻りました」
青斗の怪我に配慮して少しゆっくり帰ったところでアジトには普通に出迎えてくれる人がいる。
「2人ともおかえり〜ってあれ?」
「青斗怪我してんじゃん!大丈夫か?」
目敏く白鷹さんが青斗の側に寄ってくる。こういう時は鋭いんだなと感心する。
「ああ、樹に手当して貰ったんで大丈夫ですよ」
「あのですね、私が青斗の手当もしないまま帰ってくるとでも?」
「グリーンなら多少無理やりでも手当しただろうな」
「当然です。……と言っても応急処置レベルですので後でしっかり手当してくださいね」
そう言いながら青斗を見ると先程言った言葉をどう受け取ってくれたのかわからないけれど素直にわかったと頷いてくれた。
「ならば私が手当してやろう!」
「えっロイが?」
「はいはい、んじゃ任せたよ〜」
「行くぞブルー!」
謎の擬音をたてながら現れたロイにあれよあれよという間に連れ去られていく青斗を見送る。
「だ、大丈夫ですよね……?」
「怪我人相手には流石に大丈夫だろ。ま、大した怪我じゃなきゃ安心だな〜〜ふぁ〜……俺そろそろ寝るわ」
「おー、おやすみ〜」
さらに盛大な欠伸をしながら白鷹さんが自室へと帰っていったので賑やかだったリビングが閑散とする。
「では私も……」
「おっと、樹はちょっと待ちな」
自室に戻ろうとすると呼び止められる。
「なんですか、首領への任務報告書を作成したいんですが」
「えー、この時間から?明日にしなよ……だって痛めてるでしょ、」
動きちょっと違うよと口元だけへらりと笑いながら聞かれる。普段はそんな素振りは見せないのに彼がリーダーだとこういう時に思い知らされる。
「……わかったんですか」
「まぁね〜、隠したかったのかわからなかったけど一応気付いちゃったから話は聞くよ。今日の任務何かあった?」
気づかれたのは意外だったけれど青斗が怪我をしていればどちらにせよ聞かれるだろうと思ったので自室に戻るのは諦める。
「……データ自体はすぐ入手できたんですが警備システムを消しきれなかったようで少し戦闘になって、そこで。怪我は大したことはありませんよ」
「ふーん?」
「あぁ、青斗は別ルートだったので合流したらあの状態で……」
確かに大した事はなかったけれど合流したら見た目そこそこの怪我をしていたので驚いてしまったところはあって。そこまで話すと盛大なため息をつかれる。
「あのさぁ……青斗もそういうところあるけど樹だって同じだよ?やめろとは言わないけど無理を隠すのはよくないよ」
「別に無理はしてませんが…………」
「あーもう、とにかく今日は休みなよ。これはリーダー指示だから」
なら聞くよね?と釘を刺される。そこまで黄島さんに言われるのは少し珍しい気がして先程青斗にあれだけ言っておいて自分も一緒だったのだなと反省する。
「わかりました、今日は大人しく休みますね」
「なら良し。痛み止めとかはちゃんとしなよ?」
「はい、おやすみなさい。……あの黄島さん、」
「ん?」
「心配をおかけしました……青斗の事も私の事も」
「うん。無事だからいいよ、何かあったら心配する奴らばっかりだからね、ここは」
首領への任務報告書は翌日すっかり元気になった青斗と2人で書き上げた。