目を開けた。ぼんやりと見えたのは自室の天井。
はて、先程まで任務に出かける白鷹さんと青斗を見送る為に(と言うかなかなか白鷹さんが起きなくて)忙しなく動いていたはず。どうして自室に?ひとまず眼鏡を……と起き上がろうとすると隣に人影。
「あ、起きた。俺が誰だかわかる?」
「………………何言ってるんですか、黄島さん」
「あーよかった、流石に意識ない成人男性担いで運ぶのキツかったんだからね?」
大変だったんだよー?と困り顔で言うものだから知らない間にここまで運んでもらった……のだろうが全く記憶がない。
「私は……えっと」
「覚えてない?リビングで倒れてたんだよ、多分頭は打ってないと思うけど」
「そう……ですか……」
「どうせ光牙と青斗が出かけるまではって無意識のうちに無理してたんでしょ、樹の事だから」
2人を見送ったところまでは覚えているので倒れたとなるとその後になる。確かに今日は起きてから体が重いような視界があまり良くないような状態だったな……と振り返れば体調不良以外の何者でもなくて。
「倒れるまで無茶しないでよ、ほんとに。リビングで倒れてるなんて見つけるこっちの心臓に悪いんだからさ」
「…………すみません」
返す言葉が見つからなくて謝るしかない。
「はぁ……まぁひとまず今日は他にやることはないしあの2人が帰ってくるまで寝てなよ。さっきよりはマシな顔してるけどしんどいでしょ?」
「だ、大丈夫です、倒れていた時間は寝ていたということなので睡眠は充分」
「だーめ、これはリーダー命令だよ」
はいはい、さっさと寝る!と言われあっという間に電気を消されドアを閉められてしまったので渋々布団を被り直す。せいぜい出来ることは出かけた2人がなるべく遅く帰ってくる事を祈りつつ寝る事しかなかった。
「どうだった?グリーンの様子は」
「うわっロイいつの間にいたの……」
樹の部屋を出て一息ため息をつく。知らない間にロイが近くに立っていたからびっくりしたが慌てて小声にする。
「割と前からいたぞ?中に入るか様子見をしていたところだ」
「あっそう……樹は大丈夫って言い張るからリーダー命令って寝かせたよ」
心配かけたくないとか言いそうだから本人には言わなかったけどきっと残りの2人も気づいているはずだ。
「そうか。ブルーが心配して連絡して来たが……」
「そうなんだ?なんて?」
「様子がいつもと違ったから気にかけて欲しいと。ブルーは本当によく周りを見ているな」
そういえば今は青斗のことが気に入ってるんだっけ、と独特の笑い方をしているロイを見る。相変わらずちょっとこいつの事分からないなぁ、なんて思う。
「それにしても……大事に思われているのに気づいていないのは本人ばかり、なのかもしれないな」
「まぁ気づいていないって言うより自分の限界は計算外ってのが正しいかもしれないけどね……」
「ふむ。グリーンは頭脳派を謳ってはいるがそういうところは違うようだな」
「あはは……もうちょい自分を大事にすればいいのにね。ここで立ち話もあれだし戻ろうか」
寝てるかもしれないし、と扉を見遣る。
「そうだな。そう言えば先程ブルーから連絡があった続きだが、あえて少し時間がかかるそうだ」
「あぁ、ならよかったね。少しは休めるでしょ」
チラリと振り返る。
「おやすみ、樹」