海風に吹かれ震えるお犬マン(575)海風に吹かれ震えるお犬マンの後ろ姿は、とても哀愁に満ちていた。
「……」
僕はしばらく無言でその姿を見つめていたが、やがて意を決して声をかけた。
「あのー……お犬さん?」
「はい? なんですか?」
「いや、その、寒いのかなぁって思って」
僕がそう言うと、お犬マンは急に立ち上がって僕の方へ向き直った。
「ああ! ご心配には及びませんよ!」
そして彼はいつものように白い歯を見せて爽やかな笑顔を浮かべた。
「実は私、寒さに強い犬種なんです」
「あ……そうなんだ」
どう見ても寒そうだから聞いたんだけどね……。
まあいいか。本犬が大丈夫だと言うなら問題ないんだろう。
「でもそんな格好じゃ風邪ひくかもしれないし、よかったらこれ着ますか?」
僕は自分の肩にかけてあったジャケットをお犬マンの方に差し出した。
このジャケットには僕の体臭が染み付いているはずなので、きっと嫌がられるだろうと思ったのだが、
意外にもお犬マンは嬉々としてそれを受け取った。
「ありがとうございます! では遠慮なく頂戴しますね」
「えっ!?︎……あっはいどうぞ」
さすがに予想外だった。
てっきり断られるかと思っていたけど、まさかこうも素直に受け取るとは思わなかったのだ。
……というかこいつ本当に何者なんだろ? なんか普通じゃない気がするんだよなぁ。
う〜ん、謎の多い奴だぜ……。