お犬マン4話 強襲!きの子さん---お犬マン視点
「うーん、どうすればセンさんは私との結婚を承諾してくれるんでしょうか……」
私は近所の公園にあるベンチに腰掛けながら、頭を悩ませていました。
「やはり私の気持ちを伝えるしかないんでしょうか……」
とはいえ、私の気持ちは伝えても意味がないですからねぇ……。
「……困りました……。他に何かいい方法はないものか……」
しばらく考え込んだ後、ふとあることを思いつきました。
「そうだ、プレゼントだ!手紙と一緒に渡せばいいんだ!」
名案です。早速森に行って何か探してきましょう。私は意気揚々と立ち上がりました。
その瞬間、「うわあああああ!!」という男性の叫び声が聞こえてきて、思わず足を止めてしまいました。
「あれは……センさんの声!?」
一体、何をやっているのでしょう?
気になった私はこっそりと様子を見に行くことにしました。
するとそこには、地面にへたり込んでいるセンさんの姿がありました。
「大丈夫ですか、センさん!?」
慌てて駆け寄ると、彼はゆっくりとこちらを見上げてきた。
「あっ、お犬マンか……」
「いったいどうしたんですか!?」
「それがさぁ……急に足元から変なものが出てきて、驚いた拍子に転んでしまったんだよ」
「変なものとは?」
私が訊ねると、センさんは渋々といった様子で口を開きました。
「よく分かんないけど、なんかきのこみたいな奴だよ。歌の練習をしていたらいきなり現れて、僕の歌が気に入ったとかなんとか言って、とにかく不気味な奴だった…」
「それってまさか……『おきのこ様』ではないですか!?」
「なんだそれは?」
「人の心を奪う恐ろしい存在ですよ」
「なんでそんなものがこんな所にいるんだ?」
「恐らくですが、センさんの歌に惹かれてしまったのかもしれません」
「マジか……迷惑すぎるぞ……」
「しかし、おきのこ様に気に入られてしまうなんて……これはもはや運命なのでは……」
「おい、どういうことだ? 勝手に納得するな」
「いえ、だっておきのこ様に好かれるということは、すなわち神様に愛されているということですよ? これほど幸せなことはないじゃないですか」
「なんだ、その頭のおかしい理論は。僕はそんなものに好かれても全然嬉しくはないんだけど?」
「でも事実、おきのこ様に好かれているわけですし……」
「だから嫌だと言っているだろうが!」
「……そういえば、おきのこ様には求婚されたんですよね? それで、結婚はしないことにしたのですか?」
「当たり前だろう!第一、僕は今おきのこの奴から逃げてるんだぞ…!」
……そうでした。センさんは今も絶賛、逃亡中なのを忘れてました。
「とにかく早く逃げた方がいいと思いますよ」
「言われなくても分かってるよ!!」
センさんはそう叫ぶと、再び走り出していきました。
「あ、ちょっと待ってください、センさん!! おきのこ様なら私に任せてください!!」
私はセンさんの後ろ姿に向かって、大声で呼びかけました。
「お前がどうにかできるのか?」
「はい!お任せ下さい!」
「……分かった。じゃあお前に任せた」
「ありがとうございます!では行ってまいりますね!!」
私は笑顔を浮かべると、おきのこ様の元へと向かいました。
「……なるほど……確かに見た目はキノコですね……」
目の前には傘の部分から柄まで紅に染まったこのきのこが生えていました。
「どうしたものでしょうか……」
とりあえず、話しかけてみましょう。
「もしもし、おきのこ様ですよね?」すると、突然、おきのこ様(?)の動きが激しくなりました。
「えっ!? なにごとですか!?」
驚いていると、おきのこ様がカサをこちらに向けてきたかと思うと、そこから胞子のようなものを放ってきました。
「うわっと!!」
私は咄嵯に避けようとしましたが、間に合わず、少し浴びてしまいました。
「うぅ……いったい何だったんでしょうか……」
顔を上げると、いつの間にかさっきのおきのこがいなくなっていました。
「あれぇ?」
辺りを見回してみましたが、どこにも見当たりません。
「まぁいいでしょう。いなくなったみたいですし……」
ほっとした次の瞬間、背後からカサコソという音が聞こえてきました。
「ん?」
振り返ると、そこには先程より一回り大きくなったおきのこ様が立っておりました。
「ふぉおお!?」
あまりの大きさに驚愕しているうちに、おきのこ様は再び胞子を撒き散らしながら、私の方へと向かって来ていました。
「うわああああああああ!!」
私は慌ててその場から離れましたが、どうやら追いかけてきているようです。
「なんで!? どうして!?」
必死に逃げていると、今度は前方からも何かが迫ってくる気配を感じました。
「え!? ちょ、またですか!?」
そちらを見ると、更に大きく成長したおきのこ様が、こちらに迫ってきていたのです。
「ひぃいい!?」
私は恐怖に駆られ、無我夢中で森の中を走り抜けていきました。
どれくらい走ったか分かりませんが、やがて開けた場所に出ることができました。
「はぁ……はぁ……」息を整えながら周りを見渡すと、そこはどうやら山菜採りの時に使う広場のようでした。
「……ここにいれば大丈夫でしょう」
ホッとしていると、どこからか声が聞こえてきました。
「誰か助けてくれー!」
その声を聞いた途端、私は弾かれたように立ち上がりました。
「今のは……センさんの声!?」
間違いありません。あの切羽詰まったような叫び方は間違いなくセンさんのものです。
「センさんが危ない!」
私は急いでセンさんを探し始めました。
----センさん視点
「はぁ……はぁ……くそっ、なんでこんな目に遭わないとならないんだ……」
僕は今、死に物狂いで走っていた、おきのこが僕を追ってきていたからだ。
「もう足が痛くて仕方がないぞ……」
ずっと全力疾走を続けているせいか、脚がパンパンになって悲鳴を上げ始めている。
「っていうかお犬マンの奴はどこに行ったんだよ……」
さっきから姿が見えないので、どこかに隠れているのだろうか……
しかし、一体どうやって隠れたのか皆目検討もつかない。
(こうなったら……)僕はある方法を使うことにした。
それは『歌』だ。
歌の力を使えば、大抵のことはなんとかなるはず。
僕は呼吸を整えると、歌い始めた。
絶え間なく注ぐ味の素ー♪
栄養と呼ぶ事ができたならー♪
と、歌っていると、拍手のような音が聞こえたような気がした、振向くとそこには
おきのこがいた、真っ赤なカサで、軸の方にはニヤニヤ笑った顔のような模様がある不気味なきのこだ。
「うふっ、やっと歌を聞かせてくれたのね、今日も歌を聞かせてもらおうと思ったのにあなた、逃げちゃうんだもの」とおきのこは喋った
「ギャアアアアアアアアシャベッタアアアアアアアアアアア!!!」
おばけ、おばけだ…おばけ…こわいよぉおおおおおおおお!!
「ねぇ、きの子、あなたのこと気に入っちゃたの、だから一緒に暮らしましょう?」
「嫌だよ!そんなもん!ってかなんで僕のことを気に入ったりしたんだ!」
「だって、あなた歌が素敵なんですもの、それになんだか可愛いし…うふふ」
「可愛くなんかないし、そもそも男だし!!」
「あら、そうなの?でも、きの子達には性別は関係ないわよ」
「うるさい、とにかくお前とは暮らせないからな」
そう言うと、きの子と名乗るおきのこは少し考えたあと、
「じゃあ、お友達ならいいわよね、また歌を聞かせて貰いに行くからね♡」と言い残して去っていった。
「なんだったんだ、あいつは……本当に……」
僕の貞操の危機?はなんとか去ってくれたらしい
…帰ろう…帰って寝よう……そして忘れよう。
疲れ果てた僕は重い体を引きずりながら、家路についた。
数日後、おきのこ様に気に入られてしまったという噂が広まってしまい、
しばらくの間、女の子扱いされる羽目になったのは、別の話である。
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クリーチャー図鑑その2
きの子
種族:おきのこ
特徴:傘が紅に染まっており、軸の部分にも笑っているような顔がついている
性格:基本的に人懐っこく、寂しがり屋だが、気に入った相手を見つけると執拗に追いかける習性を持つ
好きな物:歌を歌う人間、湿気
苦手なもの:乾燥
地元の伝承によると、おきのこ様は、女の子を気に入ることが多いとされている
キャラクター紹介です。
大和路センさんについて。センさんの名前の由来は特にないです。適当に付けました。
歳は25歳です。身長170cm、体重63kg
誕生日は11月23日、趣味はゲーム、読書、カラオケ(採点機能付き)など。
好きな食べ物は甘いものと辛いもので、嫌いな食べ物は苦いものや酸っぱい物。
一人称は「僕」
基本的には穏やかな性格で、面倒見の良い兄貴肌。
昔は病弱だったが、今は健康体そのもの。
そのため、多少のことでは動じなくなっている。
元々、植物や動物が好きだったため、それらの世話をしていると落ち着く。
最近ハマっていることは、家庭菜園を作ること。
子供の頃からの趣味であり、今でも続けている。
ちなみに野菜よりも果物の方が好き。
よく食べるものはみかん、りんご、ぶどうなどの皮ごと食べられるフルーツ。
好きな色は緑系統。
服装は基本的にラフな和装。
仕事着は作務衣。
眼鏡をかけており、かけている時は真面目に見える。
普段の言動のせいであまり信用されていないが、本人は気にしていない。
猫より犬派。
実は意外とモテたりする。本人は自覚無し。
たまに、女難や超常現象に見舞われることがある。
最近の悩みは、おきのこやお犬マンに目をつけられていること。
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お次は、お犬マンのプロフィールを紹介します。
名前は『黒路ムイ』と言います。由来は特にありません、雑種犬の妖怪?です。
年齢不詳の男の子。
体長は約120センチ。体重は不明
誕生日は3月10日。
好きな物は魚類全般、特に生魚が好きで、自分で魚を捕まえてはそのまま食べてしまう。
苦手なものは アリ、毛玉、夏の暑さ。
好物はドッグフード、魚の骨、サバ、カツオなど。
一人称は「私」基本的には冷静沈着な性格で、温厚な面もあるが、怒らせるとかなり怖い。
見た目とは裏腹に怪力の持ち主。
運動神経も抜群。
走るのは得意中の得意。
普段は散歩中にいぬへび、センさんを見つけた時しか走らないが、本気で走れば時速60kmは出せる。
ただし、長距離は無理。
趣味は散歩、日向ぼっこ、昼寝、魚を捕まえる事。
特技は嗅覚と聴覚を駆使した追跡、索敵、盗み聞き、センさんの家の覗き。
好きな音楽は演歌、洋楽問わずなんでも聞く。
最近のお気に入りは『秋田音頭』と『津軽海峡冬景色』
基本的に裸族なので服は着ないが、センさんに貰ったジャケットはセンさんの匂いがするため愛用している。
かなりの甘えん坊でもあり、構ってほしいときは尻尾をブンブン振ったりする。
センさん以外の人間にはあまり近寄ろうとしない。
きの子とは相性が悪いのか、会えば喧嘩ばかりしている。
仲が良いとは言えないが、お互いの強さを認め合っているため、敵対意識はない。
センさんとの結婚はまだ諦めてはいない。