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    桜道明寺

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    桜道明寺

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    OOC! OOC!
    それでも良ければ

    雅婷 きっと母は私に、美しく嫋やかな女性になって欲しかったんだと思う。そうでなければ、こんな名前など付けるはずがない。それでも、人間だった頃は、それなりに努力はしていた。女らしく生きて、いずれ年頃になったら、どこか良いところに嫁げば幸せになれると、そう言い聞かされてきたから。——いま考えれば、本当に愚かだ。結局、母の言う「女の幸せ」など、私の人生の何処にもなかった。ひとひらの雪、雨の一粒さえも。明王には、本当に感謝をしている。私を蘇らせてくれて、新しい生き方をくれて——力をつけて、強くなることが生きる目標になるだなどと、最初のうちは考えもしなかったけれど、いまではそれも悪くないと思っている。死ぬ前に漠然と夢見ていた「女の幸せ」とはまるで違ってしまったけれど、いざこうなってみると、結局私には、その生き方は向いてなかったと分かる。目を閉じて、再び開いた時、私は既に普通の女ではなく、異界に属する身となっていた。そして自ら望んで命を狩る者となった。それは新たな喜びだった。血に濡れた手で、汚らしい男どもの魂を喉に押し込む時、私はこの上なく幸福になれる。それは、心の底まで死霊に成り果ててしまったと言う証左なのかも知れないが、一向に構うものか。命を狩って、喰って、糧にする。人が家畜を殺して食うのと、一体何が違う? 自らが生き長らえるために他者を喰らう。今度は、そこに意義が加わった。他者に仇なす魂を狩ると言う意義が。私が獲物の前に立つ時、奴らは必ず命乞いをした。聞く耳? 持つはずがない。逆に、お前たちはその命乞いを聞いたことがあるのか? と尋ねたくさえある。因果応報を受け入れられない愚かな男ども。そうではなかったからこそ、私が現れたと言うのに。私が最初に狩った男もそうだった。私の顔を一目見て怯え、許しを請うて地に頭を擦り付けた。私はそれを冷ややかな気持ちで見下ろしていた。こんな男に私は殺されたのか。こんな矮小で、保身ばかり考えている浅慮な男に。躊躇いなく心臓を一突きし、引き千切るようにして魂をえぐり出しても、心はそよとも動かなかった。復讐を果たしたというのに、感動も、充足も、なかった。ただ、枯野にひとり、立っているような清々しさがあった。あの瞬間、たしかに私は、私の魂を自らの手で救ったのだ。
     生き方は決まった。私は死神の化身となってこの地に在る。精進を重ね、ただ強く、しなやかに——狂風に折れない柳のように。

     雅婷。それが私の名。
     嵐に翻弄されて散る花には、もう、ならない。
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