日常 前に一度、勤務中の彼を見たことがある。この辺りには珍しく大雪が降った日で、私はバスを待っているところだった。歩くのさえ難儀するような雪道、車など以ての外で、対向車線には案の定、事故の車が止まっていた。それを見るともなく見ていると、ほどなくして臨場したパトカーから彼が降りてきたのだ。
揃いである紺色の制服を着て、没個性であるにもかかわらず、すぐにそれと分かったのは、ひとえに付き合いの長さゆえである。それでも、車から降りてきた時の表情は、私の知る普段の彼とは違い、別人のように引き締まっていた。肩にある無線機に向かって現着を告げる様子などは実にさまになっていて、私は妙に感心しながら、彼の動きを見ていた。幸い、事故自体はそう大きなものではなく、怪我人も居ないようだったから、そんな呑気な気分で見ていられたのだろう。
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