通過儀礼 後編*歌姫(28)
新幹線に乗り込む。
昨晩からの異常事態で感覚がフワフワする。
脳も身体も酷使して疲労困憊だ。
朝方、朝食をとった後、五条は任務があるからといって部屋を後にした。
「ついでだから捨てとくね」と言って、破壊された赤いワンピースをパンが入ってたビニール袋に詰めて持ち帰っていった。
自分もトラウマ級の呪具と成り果てたそれの処分に困っていたので、何も言わなかった。
指定席である北側窓辺の席に座る。
いつもは「ラッキー!富士山見えるかも♪」と、結局酔っ払って見れないものを期待するのだが、今回はそんな気が全く起きない。
だからといって自分の好きなことを考えるのも、それ自体が穢されていく気がして嫌だった。
素直にアイツのことを考えよう。
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