君に贈るさよならプロローグ
聖なる夜の前日。
日付が変わった瞬間に、見ていたテレビが速報を伝えた。
流れたニュース速報はあるお笑いコンビが解散し、その上、一人のメンバーは芸能界を引退するというもの。
それを眺めていると同時にソファに座る隣の彼が、何の気なく呟いた。
「僕達、別れよっか?」
突然の言葉に、私は目を丸くし彼を見上げる。
いつになく彼は真剣な顔で、真剣な碧眼で私を見つめていた。
その表情に、彼の言葉が得意の悪ふざけではないことを知る。
こみ上げる喜びに私は思わず笑顔を零す。
「……本気なのね?」
彼もまた口角をあげて、微笑む。
「うん、本気。テロップも出しちゃったしね。もう、後戻りはできないよ」
彼が言い終わるか否か、私は思わず彼を思いっきり抱きしめた。
「……嬉しい……、ようやくこの日が来たのね」
涙混じりに言えば、彼は私の体に腕をまわしながら、ごめん、と小さく呟く。
「まだ、半年くらいは待たせちゃうけど」
彼の言葉に私は首を横に振る。
「もう、10年待ったんだもの。あと半年くらい、平気」
「……そっか、もう、10年……」
「うん、でも、あっという間だったわ」
私はそう言うと、彼との出会いに想いを馳せる。
あれは10年前———。