春色湯上り攻防戦「こりゃあ……。また風流だな」
桜の花びらがくるりくるりと舞い落ちて、池を淡く色づけている。花の都を象徴する大きな桜の一部が、中庭までにょっきり入り込んでいるらしい。
ほのかな甘い香りをはらんだ風が、湯で温まった肌を撫でる。縁側のつるりと冷たい木の感触が、素足で歩くとくすぐったい。
ほう。ゾロは感心しましたとばかりに大きく息を吐いて、しかし、
「酒が飲みてェ」
全く正直な感想を述べた。
「そればっかしだなァゾロは」
ルフィが呆れたように言う。言葉だけなら至極真っ当に、しかしその姿は米俵がごとくゾロに担がれ、顔は頬をカッカと赤くした満面の笑み。桜よりもずっと色濃く赤く染まっている。
「へえへえ。良いから頭冷やすぞ」
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