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    icedragon_2

    かきかけの(完成させたい)やつと短文の一時保管場所。

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    icedragon_2

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    ユキヒョウのロのロゾ(じゃない)
    前置きだけで普段の短文くらいの長さになっちゃった どうしようね

    ##ローゾロ

     いくら他より立派な船長室といったって、五人も六人も集まればぎゅうぎゅうだ。
     一人は椅子に座り、一人は机に、おれはベッドに腰かけて横たわるもふもふを抱えていた。長い毛におおわれた体は触り心地が良く、やさしく撫でればぐう、と力の抜けた鳴き声が上がる。
    「えーと。ベポとロロノアは、……それがキャプテンだって?」
    「うん。そうとしか考えられなくて」

     頭の上にちょこんと乗る耳に、手足の裏には肉球。しっぽは他の部位と比べてもやたらとふわふわで長い。淡い灰色に散らばる黒いまだら模様は、どこかで見た誰かさんの服装を思わせる。なにより、白く色の抜けた胸から腹にかけて、動物にしては明らかに異質なハートのタトゥーが鎮座していた。ぴこぴこ動く両耳にも金のピアスが輝いている。
    「ネコだろこれ? なんつーか、かわいくなっちまったな」
    「……ネコ?」
    「そうね。ずいぶんとかわいらしいわ」
     チョッパーがお気に入りなロビンもやはりにこにこと微笑んでいる。
     しかし、ペンギン頭とシャチ帽子は首をかしげていた。海産物の格好をしてるやつらだから、もふもふはあまりお気に召さないのかもしれねェな。

     なおも撫で続ければぐい~~~っとその体が伸びる。野生を失ったその挙動はどう見たってリラックスしたネコでしかない。
     ただ、ちょいとばかしでけェ気はするが。
     伸びたネコ男により、今やベッドの八割がたは占拠されている。元々おれよりも縦に長いトラ男が悠々と寝られるベッドにもかかわらず、しっぽは収まりきらずに床に零れ落ちていた。
    「いや、それ明らかにヒョウ的なやつ!」
     狭い部屋に、頭を抱えるシャチの叫び声が響いた。


     話は十数分前にさかのぼる。
    「キャプテーン、どうしたの? 言ってた資料、持ってきたよ!」
     居候中の潜水艦のぐねぐねとややこしい艦内を歩いていたところ、船長室らしい部屋の前でシロクマがなにやら困っていた。
     ん? 船長室? 朝のトレーニングを終えて、そろそろ朝飯にと向かったはずだったが、また部屋の位置を変えたのか。代わり映えのない海中生活に辟易しないとは言い切れず、模様替えに励みたくなる気持ちも否定はしない。否定はしないが、毎度毎度のこと面倒な船だ。
     それよりも、目下の問題は同盟先の船長とシロクマである。航海士らしいクマは片手に本や紙の束を抱え、もう片手で扉をトントンとノックしては、その向こうへ呼びかけている。
    「どうした」
    「あ、ロロノア。キャプテンが返事くれなくてさ」
    「それっくらい、寝てるだけだろ」
     トラ男はサニーやロメ男の船じゃ眠りが浅く、たいそう神経を張り詰めた様子だった。それが我が家に帰って緩んだんならなによりだろう、緩みすぎるのは困るが。そう思ったのだが、「キャプテンの目の下のクマ見たことあるでしょ!」と否定されてしまった。どうやら自分の居城だろうとあの眠りの浅さが平常運転らしい。
    「いつも、ちょっとの物音で起きちゃうんだよ」

     しかし不在というわけでもなさそうだった。中にはやっぱり居る気配があるし、鬼哭もいつもどおりメソメソ泣くだけの静けさだ。ドレスローザでおれを呼びつけたときの、ギャンギャンうるさくわめいていたのとは程遠い。だから、トラ男は間違いなくここにいて、大事も起きていないんだろう。
     となると返事のひとつも返ってこないこの状況はどうしたものだ。喉をやられて声が出ないとかなら顔を出せばいい話だし、拗ねて口のひとつもききたくないって話だろうか。
     これがルフィならばコトの解決は早いのだろう。伝わるかは別としてなにかしらを身振り手振りで伝えてくるし、その原因と結果には単純に結びつくことばかりだ。
     比べるとトラ男は複雑というか、入り組んでいるというか、……言ってしまえば七面倒くさい。口からは素直な言葉は出てこないし、だんまりを選ぶことも多い。表情だってよく取り繕って察しにくいことこのうえない。まったく手のかかるやつだ。そういうところがかわいげがある、という話かもしれねェが。

     ともかく、見て確かめるのが一番早い。そう思って、おれは声をかける。
    「トラ男! クルーに心配かけてやんなよ」
    海水の侵入を阻む金属にしっかり包まれたそれは音がよく響く。シロクマに倣ってノックをすれば、ガン、ゴン、と音が廊下を突き抜けた。
    「わっ、加減して! 凹んじゃう!」
    「入られたくなけりゃ返事しろ!」やはり返答はない。だがしかし、言質は取ったようなもんだ。「おう、入るぞ」
    ドアノブを回せば特に抵抗なく扉は開く。後ろで「キャプテンはぷらいばしーにうるさいんだよお」と右往左往しているやつを置いて、おれは中へと侵入した。
     代わり映えのない船長室。ぐるりと一周見渡せば、一対の光る目とかち合った。ぱち、ぱち。互いにまばたきだけを繰り返す。向こうはどうか知らねェが、こちらは呆けるばかり。いや、だってそうだろ!?
     見つめ返してくるそいつの瞳は、いつもと同じ薄暗い黄色をしている。ただ、その姿かたちだけがどう見たって人間じゃあなかった。
     ベッドの上に散らばる服の上、困ったように座る毛むくじゃらのそいつがしっぽをぱたぱたと動かしている。
    「トラ男……お前、ネコだったのか」
     トラなんていかつい名前をしておいて、そのかわいさは一体どうしたことだ。
     そのでかいネコをなんとか抱えれば、その毛並みの良さにチョッパー不足のおれとしては抱きかかえて今すぐ昼寝にはげみたい。しかし、剣士たるものとそんな欲望は律して斬り捨てた。
     廊下で待つハートの古参らしいクマと対面させりゃあそいつも飛び上がっていたから、こりゃあ一応イレギュラーだったらしい。
     新世界、何でもありか。そして鬼哭はもう少し騒げ。
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