1残ってしまった右肩の傷痕には気づいている。が、触れたことはまだない。
肉を貫いた剣の先が折れる感覚が右腕にこびりついている。はっきり自覚していた殺意の上での敗北がどうしても拭えないのだ。
汗の滲む素肌。筋肉や骨の動きで傷痕は表情が変わるものの、それ自体は既に硬く閉じている。
歯を、立てた。傷跡を抉るように突き立て、閉じてしまった傷痕を丸ごと噛みちぎるべく犬歯にも力を込めた。
ひどい呻き声が遠くで聞こえた、と同時に彼の身体の力が抜けた。
果ててしまった息も絶え絶えの背中に
「君はマゾヒストなのか」
と聞くも、返事はなかった。
血の滲んだ生きた傷痕にキスをする。
「殺しておけば良かったとでも?」
アムロ・レイだ。
類稀な才能を持ったニュータイプ。
取り繕う言葉など見透かされてしまう。
広い宇宙のどこかへ消えていってしまわないように、沢山の傷痕をつけた。