シャイアンにて目の前にある芸術品のように美しい料理。美味しそうに見えるのに、食べられる気が全くしない。それどころかぎゅうと胃が収縮し、吐き気が込み上げる。喉を締めて耐えたのにも関わらず、三度目の波でとうとう嘔吐してしまった。
テーブルにそのまま吐くわけにいかないと横を向いたおかげで、汚れは真っ白なテーブルクロスの端に少しだけつくにとどまった。その代わりに口元を押さえた自身の手指、白いシャツの袖口、ナフキンを置いた膝と太ももが吐瀉物にまみれた。
口元を押さえたまま、羞恥心と罪悪感でボロボロと涙が溢れる。せっかく用意してもらった綺麗なテーブルセット、真っ白なクロス、綺麗な洋服。そして食べることの出来なかった美しく盛られた生き物の肉。
すぐに人がきて片付けをはじめ、アムロは別室へと連れられた。シャワーを済ませると用意されていた服を着た。
綺麗なものはたくさんあって、物質的にこれほどまでに豊かなことは今までなかった。にも関わらず、空虚だけがそこにあった。
食べられないのに毎食用意される豪華な食事。
ごめんなさい。せっかく用意してくださったのに。
何度言ったか分からない言葉は擦り切れてしまっている。