タイトルなし濡れた癖毛はクリクリと丸まっていて子どものような幼さがそこにある。水分を含み、ボリュームが落ち着いた可愛い癖毛は、乾いたそれよりも色濃く見え、いつもより艶やかだ。
身体も髪の毛も石鹸ひとつで洗い上げてしまう男らしいやり方には笑ってしまったが、良く言えば潔いとも言える。そんな彼の無頓着さが好きだと思ったが、逆にいえば一切意識されていないとも取れるので、この部分については自分の中で保留にしてある。もし彼が、何か彼自身の容姿や小綺麗さを誰かに対して意識した時、私はどうにかなってしまいそうで怖くもある。どこまでも無粋な彼のままでいて欲しいと願う。
だから、きっと、こうやってどこまでも甘やかしてしまうのだな、とようやく私自身の欲深さに気付いた。生活力そのものを奪い去り、何も出来なくなってしまっても大丈夫だよと、心の中で密やかに囁きかけながら奉仕する。私がいなければ何も出来ない君であればいい。
可愛いな、なんて言葉をかけると嫌がられるので何も言わずにタオルで拭いてやる。
同じシャンプーを使っていても、身体の匂いが違うからか、乾かしたばかりの髪はもう既に彼の匂いだ。